映画を見て、映画に振り回される。
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カテゴリー:映画 | 投稿者:uematsu | 投稿日:2012年03月22日 |

僕の友人に映画が大好きな人物がいる。僕も映画は好きだが、彼ほどではない。実際に映画を撮り続けている映画作家でも、彼ほど映画を愛している人物はいないのではないかと思うほどである。

それほど映画を愛しているのだが、「映画の方はもしかしたらオレを愛してはいないのではないかと思うんだ」と彼が僕に言ったことがある。映画を見すぎて、おつむにきたのか?と思ったが、そうではないならしい。どうやら、二三日に一度は、映画にいじめられているという印象をもつことがあるという。

例えば、青空。空が真っ青に晴れ渡り、そこに真っ白な雲が浮かんでいる。そんな時、彼は必ず「ジョン・フォードの青空だ」とつぶやく。が、真っ青に晴れ渡り、真っ白な雲が浮かんでいても、ジョン・フォードの青空にならないこともある。そんな時、彼は思うのだそうだ。「あと、雲の数が1割ほど少なければ、ジョン・フォードの青空になるのに!」と。

同じように、風でカーテンが揺れているのを見て、「ああ、もう少し風が弱ければ、ヴィスコンティの『山猫』と同じ感じなんだけどなあ」と思い、地元兵庫県芦屋の海を眺めては「『気狂いピエロ』の地中海の色にはほど遠い」と思ってしまうのだそうだ。

最近、とみにこの感覚が鋭くなってしまい、メシを食っていても、女の子と飲んでいても、映画と少し違うことばかりが目についてしまって、毎日が苦痛だと言い出したのである。

さて、どうしたものか。どうすればいいのか。と彼は僕に悩ましい顔をするのだが、考えていても妙案は浮かばず、「とりあえず」と声を発すると、「今日で終わってしまう映画があるから、見てくるよ」と力なく笑いながら立ち上がるのだった。


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