春の雪
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カテゴリー:青空文庫 | 投稿者:ten | 投稿日:2012年3月14日 |

 三月半ば、街の中心を流れる川の土手。大雪はすっかり天に帰ってしまった。帰り損ねたものは、まだまだ咲きそうにもない桜の根にこんもりと固まっている。人は、花の方を待つのだが、その油断への戒めか、雪が降り始めた。不ぞろいの雪は川の流れに取り込まれていく。しかし春の雪というものは、一心不乱に降ったかとおもうと、急に止むもの。だからほとんど積もることはない。その気まぐれに振り回され、人は、再びコートの襟を立て足早に歩く。

 とはいえ、淡い灰色の隙間からみえるのは青い空、土手のこげ茶色の温い道がまっすぐと伸びている。

 

青柳にふりけされけり春の雪
「寒山落木 第一」 正岡子規より


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