『文豪ストレイドッグス』×青空文庫 勝手に応援#8
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カテゴリー:,青空文庫 | 投稿者:OKUBO Yu | 投稿日:2013年7月7日 |

こんにちは今月と来月はワールドゲイズクリップスが休載ということでしょんぼりしておりますが相も変わらずマンガ雑誌「月刊ヤングエース」(角川書店刊)に連載中『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ/作画:春河35)にまつろいながら青空文庫の図書カードにリンクを貼り貼り参ろうかと存じます。

先月と今月とには、和服少女キャラとして泉鏡花さんがご登場。

もちろん現実の泉鏡花は女性ではございませんが、なるほど確かに尾崎紅葉門下の面々は読み方をひとつ変えたりすれば今風な女の子の名。師匠の尾崎紅葉をはじめ、小栗風葉瀬沼夏葉、山里水葉から田中夕風、中山白峰なる人もいるし、硯友社も入れるのなら大橋乙羽、弟子の弟子も入れるなら中村泣花も。それぞれ訓読みすれば〈くれは〉〈かぜは〉〈なつは〉に〈みずは〉、〈ゆうかぜ〉〈しらみね〉そのまま〈おとは〉で〈りっか〉、とすればかつての雅号なるものはキラキラネームに近しいのかもしれません。

さてキャラとしての鏡花さんは、好き嫌いを除けば、ご本人から作られたというよりは、どこか鏡花作品に出てくる人形のごとき女性の印象。その容姿が人形然とした描写である以上に、運命や世間・人様から人形よろしく弄ばれる造形は、今回のお話も相まって様々な作品を彷彿とさせます。その能力「夜叉白雪」の直接の材源と考えられる「夜叉ヶ池」の百合をはじめ、「薬草取」の娘のほか、「婦系図」などの芸者ものの女性もそういう雰囲気がございましょうか。

それでいて、彼女の異能は、これも同じく鏡花作品の特徴ともいえる妖しの女の魔力・魔術の類に近く、「夜叉ヶ池」の龍神白雪だけでなく「天守物語」の天守に棲まう姫や「高野聖」の山中の女なども思い出されます。

しかしここではっと気がつくのは、そういえば鏡花作品の女性には、もうひとつの役目があったこと。それは、ひたむきな少年や、世の敵とされた男を〈護る〉側面――それこそさきほど挙げた「薬草取」や「天守物語」に出てくるヒロインはそういう人物でしたし、何やら鏡花さんも今回のお話の終わりを見るからにこれからヒロインとして主人公たる中島敦くんを支えそうな気配さえございます(というか物理的には支えた)。

とはいえ、わたくし個人のなかの鏡花と言えば、何よりも蟹よりも、その律動的な文章で。

音の連なる美しさ、黙読しようと朗読しようと、流れては休み、走っては歩き、時には跳ねて踊り回る、時枝誠記が褒めたというのも肯ける、学校文法などからは遠く離れて躍動する語りの言葉。そういう一面もキャラとしての鏡花さんは見せてくれるのかしら、とほんの少しく期待しながら。


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