一度

中原中也




結果から結果を作る
飜訳の悲哀――
尊崇はたゞ
道中にありました

再び巡る道は
「過去」と「現在」との沈黙の対坐です

一度別れた恋人と
またあたらしく恋を始めたが
思ひ出と未来での思ひ出が
ヲリと享楽との乱舞となりました

一度といふことの
嬉しさよ





底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩※(ローマ数字2、1-13-22)」角川書店
   2001(平成13)年4月30日初版発行
※底本のテキストは、著者自筆稿によります。
入力:村松洋一
校正:鳩
2017年10月25日作成
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