一
古い伝統の床板を踏み抜いて、落ち込んだやっぱり中古の伝統長屋。今度の借家は少し安普請で、家具は仕入れ。ボールの机にブリキの時計、時計はいつでも三十度くらい傾いて、そして二十五時のところで止っている。いつまでも止っている。今度の大地震の来る日までは。
二
大掃除の午後の路地の交互点、こわれたおもちゃに
三
黄は
四
脚は一八〇プロセントくらいに、眼と眼はうんとくっつけるか、思い切り開いて、さてこの腕をどうやろう。寛永寺の
五
地獄変相図の世界国ノアの洪水、ソファの下から
六
大家は大家で小家は小家、そして中家は中家で世紀はめぐる。鯛の頭に
同じ人間が同じ会の展覧会批評を毎年つづけて書けば、結局同じような事を繰返すことになりそうですから、少し趣向を変えてと思ったのが丁度その時の気分でこんなものになってしまいました。しかしとにかくこのために一日わざわざ見に行ったのでしたが、その日はまた特別に蒸暑い日だったので頭がぼんやりして、そして気分が悪くなって帰って来て、すぐに机に向っていたら自然にこんな「詩」が生れました。自分でも何の事だか分らないが、しかしその日のその時刻の私のある感じだけは出ているようだから、ともかくも御目にかけます。御取捨御自由に願います。
(昭和三年十一月『霊山美術』)