十万石の怪談

佐々木味津三




         一

 りんの火だ!
 さながらに青白く燃えている燐の火を思わすような月光である。――書院の障子いちめんにその月光が青白くさんさんとふりそそいで、ぞおっと襟首えりくび立つような夜だった。
 そよとの風もない……。
 ことりとの音もない。
 二本松城十万石が、不気味にえたその月の光りの中に、け込んでしまったような静けさである。――城主丹羽にわ長国は、置物のようにじっと脇息きょうそく両肱りょうひじをもたせかけて、わざとあかりを消させた奥書院のほの白いやみの中に、もう半刻はんとき近くも端座しながら、身じろぎもせずに黙然もくねんとふりそそいでいるその月光をきいったままだった。見入みいっているのではない。まさしくそれは心に聴き入っていると言った方が適切である。万一の場合を気遣って、御警固旁々かたがた座に控えていた者はたった四人。――いずれも御気に入りの近侍きんじの林四門七と、永井大三郎と、石川六四郎と、そうして多々羅たたら半兵衛の四人だった。
 声はない……。
 言葉もない……。
 主従五つの影は、身動きもせず人形のように黙座したままで、いたずらに只さんさんと月光がふりそそいでいるばかりである。――と思われた刹那せつな
「ハハハハハ……」
 突然長国が、引きつったような笑い声をあげた。
「ハハハハ……。ハハハハハ」
 だが、四人の近侍達は驚きの色も現わさないで、ビーンビーンとこだまし乍ら、洞窟さながらのような城内深くの闇と静寂の中へ不気味なその笑い声の吸われて行くのをじっときき流したままだった。殿の御胸中は分りすぎる程よく分っていたからである。屹度きっとおうるさいに違いないのだ。殿御自身はとうに会津中将へ御味方の御決断も御覚悟もついているのに、重臣共がやれ藩名のやれ朝敵のといって何かと言えば薩長ばらの機嫌ばかりを取結ぽうと、毎日毎夜らちもない藩議を重ねているのがわずらわしくなったに違いないのだ。――果然かぜん長国が吐き出すように言った。
「いっそもう野武士になりたい位じゃ。十万石がうるそうなったわ。なまじ城持ちじゃ、国持ちじゃと手枷首枷てかせくびかせがあればこそ思い通りに振舞うことも出来ぬのじゃ。それにつけても肥後守ひごのかみは、――会津中将は、あおい御一門切っての天晴あっぱれな公達きんだちのう! 御三家ですらもが薩長の鼻息うかごうて、江戸追討軍の御先棒となるきのう今日じゃ。さるを三十になるやならずの若いおん身で若松城が石一つになるまでも戦い抜こうと言う御心意気は、思うだに颯爽さっそうとして胸がすくわ。のう! 林田! そち達はどう思うぞ」
「只々もう御勇ましさ、水際立みずきわだって御見事というよりほかに言いようがござりませぬ。山の頂きからまろび落ちる大岩を身一つで支えようとするようなもので厶ります。手を添えて突き落すは三つ児でも出発るわざで厶りまするが、これを支え、喰い止めようとするは大丈夫の御覚悟持ったお方でのうてはなかなかに真似まねも出来ませぬ。壮烈と申しますか、悲壮と申しますか、いっそ御覚悟の程が涙ぐましい位で厶ります」
「そうぞ。そうぞ。この長国もそれを言うのじゃ。勤王じゃ、大義じゃ、尊王じゃと美名にかくれての天下泥棒ならば誰でもするわ。――それが憎い! 憎ければこそ容保候へせめてもの餞別はなむけしようと、会津への援兵申し付けたのにどこが悪いぞ。のう永井! 石川! 年はとりたくないものよな」
御意ぎょいに厶ります。手前共は言うまでもないこと、家中の者でも若侍達はひとり残らず、今日かあすかと会津への援兵待ちこがれておりますのに御老人達はよくよく気の永い事で厶ります」
「そうよ。ああでもない。こうでもないと、うじうじこねくり廻しておるのが分別じゃと言うわ。――そのまに会津が落城致せば何とするぞ! たわけ者達めがっ。恭順の意とやらを表したとてもいずれは薩長共にわたくしされるこの十万石じゃ。ほしゅうないわっ。いいや、意気地が立てたい! 長国は只武士もののふの意気地を貫きたいのじゃ! ――中将程の天晴れ武将を何とて見殺しなるものかっ。――たわけ者達めがっ。のう! 如何どうぞ。老人という奴はよくよくじれったい奴等よのう!」
 ののしるようにつぶやながら長国は、いくたびか脇息の上で身をよじらせた。実際またじれったかったに違いない。ほかのことならともかく、こればかりは殿、御一存での御裁決まかりなりませぬ。三河乍らの御家名は申すに及ばず、一つ間違わば末代までも朝敵の汚名着ねばならぬ瀬戸際で厶りますゆえ、藩議が相定まりますまで御遠慮下さりませ。そう言って重臣達が主候の長国をしりぞけ、会津への援兵、是か非かに就いて論議をし始めてからもうまる三日になるのである。――会津中将松平容保が薩長の執拗しつような江戸追討を憤って、単身あくまでもその暴虐横暴に拮抗きっこうすべく、孤城若松に立て籠ってから丁度ちょうど六日目のことだった。勿論もちろん、その討伐軍は大垣、筑紫の両藩十万人を先鋒にして、錦旗にこの世の春を誇り乍ら、すでにもう江戸を進発しているのだ。右するも左するも事は急なのである。
 月が青い……。
 慶応四年の春の夜ふけの遅い月が、陸奥むつ二本松の十万石をそのひと色に塗りこめて陰火のように青白かった。
「アハハハハ……」
 じいっと魅入みいられたもののごとく、障子に散りしいているその月光を見眺みながめていた長国が、突然、引きつったように笑って言った。
「馬鹿者共めがっ。アハハハハ……。みい! みい! あの色をみい! まるで鬼火じゃ。二本松のこの城を地獄へつれて行く鬼火のようじゃわ、ハハハハハハ……」
 吸い込まれるように声が消えて、城内はやがてまたしいんと静まりかえった。
 と思われたとき、――不意にキイキイと、書院のお廊下の鶯張うぐいすばりが怪しく鳴いた。
「門七!」
大三だいざ!」
「石川!」
「多々羅!」
 顔から顔へ名を呼ぶように目交めまぜが飛ぶと、近侍達は一斉にかたわらの脇差をにぎりしめた。――恭順か、会津援兵か、その去就を内偵すべく官軍の密偵達が、たいら棚倉たなくら、福島、仙台、米沢から遠く秋田南部のお城下までも入りこんでいるのは隠れない事実なのである。
 四本の脇差の鯉口こいくちは、握り取られると同時にプツリプツリと素早く切って放たれた。
 だが、不思議である。お抱え番匠万平が、これならばいか程忍びの術にけた者であっても、決して無事には渡り切れませぬと折紙つけたその鶯張りなのだ。だのに音はそれっきりきこえなかった。
 と思われたとき、――キイキイとまた鳴いた。
 同時に影だ!
 ふりそそいでいる月光の中から障子のおもてが、突然ふわりと黒い人の影が浮び上った。ふた筋三筋びんのほつれ毛がほっそりとしたその顔に散りかかって、力なくしょんぼりとうなだれ乍らまるで足のない人のごとく青白い光りの中にたたずんでいるのである。
「た、誰じゃ!」
「何者じゃ!」
 叫び乍ら門七と大三郎が走りよって、さっと左右から障子を押し開いた刹那、――ぺたぺたと崩れ伏すように影が膝を折ると消え入るような声で言った。
「おそなわりまして厶ります……」

         二

「……!」
「……!」
 一斉に目が不審の色に燃え乍ら、影と声の主を見守った。
 だが、二瞬とたたない凝視ぎょうしだった。城主長国の声がおどろきとよろこびに打ちふるえ乍ら、月光の中の影に飛んでいった。
「おう! そちか! ――波野よな! 千之介じゃな!」
「はっ……。おそなわりまして厶ります……」
「小気味のよい奴じゃ。丹羽長国のきもを冷やさせおったわ。わっはは。井戸の中からでも迷うて出おったかと思ったぞ。来い。来い。待っておった。早うここへ来い」
「はっ……。参りまする……。只今それへ参りまするで厶ります……」
 どうしたことか、這入はいって来た時の影のように力なく打ち沈んだ声で答え乍ら、おどおどとして主侯の近くへ進んでいったのは、同じお気に入りの近侍波野千之介である。しかし座を占めると同時だった。不思議なことにその千之介が君前くんぜんはばかりもなく、突然、声をこらえ乍らかすかに忍び泣いた。
「なに! 泣いているな! どうしたぞ。せぬ奴じゃ。何が悲しいぞ!」
「…………」
「のう! 言うてみい! 何を泣いておるのじゃ!」
「いえあの、な、泣いたのではござりませぬ。不調法御免下さりませ。風気ふうきの気味が厶りますので、つい鼻が、鼻がつまったので厶ります……」
「嘘をつけい!」
 見えすいたそんな言いわけを信ずる長国ではないのである。――ぐいと脇息の前に乗り出して来た顔から、追及の声がうなだれている千之介のところへ迫っていった。
「言うてみい! 言うてみい! のう! 遠慮は要らぬぞ。悲しいことがあらば残らずに言うてみい!」
「…………」
「気味のわるい奴よのう。なぜ言わぬぞ。そう言えば来た時の容子ようすに落ちかぬるところがあったようじゃ。林田達みなの者と一緒にそちのところへも火急出仕の使いが参った筈なのに、その方ひとりだけ、このように遅参したのも不審の種じゃ。のう! 何ぞ仔細があろう。かくさずに言うてみい!」
「いえ、あの、殿!」
 ついと横からそれを千之介ならで林田門七が奪い乍らさえ切ると、すべてのその秘密を知りつくしているがためにか、君前をそうとするかのように言った。
「この男のことならばおすておき下さりませ。千之介の泣き虫はこの頃の癖で厶ります。それよりもうおあかりをおつけ遊ばしたらいかがで厶ります?」
「なに? 灯り? そう喃。――いや、まてまて。暗ければこそ心気も冴えて、老人共の長評定ながひょうじょうも我慢出来ると申すものじゃ。すておけ、すておけ。それより千之介の事がやはり気にかかる。のう! 波野! どうしたぞ? 早う言うてみい!」
「いえ、あの、殿――」
 再び門七があわてて遮切さえぎると、千之介をかばうように言った。
「何でも厶りませぬ。仔細は厶りませぬ。気鬱症きうつしょうにでもとりかれましたか、月を見ると――、そうで厶ります。馬鹿な奴めが、月を見るといつもこの通りめそめそするのがこの男のこの頃の病で厶りますゆえ御見のがし下さりませ。それよりあの――」
「アハハハ……」
 突然というよりもむしろ不気味な変り方だった。ふいと笑い声をあげ乍ら、そうしてふいと切ってすてでもしたように笑いをやめると、遠いくうを見つめ乍ら何ごとかまさぐり思案していた長国が呟くように言った。
「月か……。月にかこつけてしもうたか。いやよいよい。乱世じゃ。乱世ともならば月を見て泣く若侍もひとりやふたり出て参ろうわ。アハハハ……。そう言えば月の奴めもいちだんと気味わるう光り出して参った。――のう! そち達!」
 不意だった。むくりと脇息から身を起すと、えりを正すようにして突然言った。
「怪談をするか! のう! 気を張りつめていたいのじゃ。今から怪談を始めようぞ」
「……?」
「……!」
「ハハハ……。いずれも首をひねっておるな。長国、急に気が立って参ったのじゃ。いまだに何の使者も大広間から来ぬところを見ると、相変らず老人達が小田原評定の最中と見ゆる。気の永い奴等めがっ。じれじれするわ。のう! どうじゃ。一つ二つぞっとするような怪談聞こうぞ」
「……!」
「……?」
「まだ不審そうに首をひねっておるな。長国の胸中分らぬか! 考えてもみい。今宵こうしているまも、山一つ超えた会津では、武道の最後を飾るために、いずれも必死となって籠城の準備の最中であろうわ。いや、中将様も定めし御本懐遂げるために、寝もやらず片ときの御油断もなく御奔走中であろうゆえ、蔭乍ら御胸中拝察すると、長国、じっとしておれぬ。せめて怪談なときいて、心をはりつめ、気を引きしめていたいのじゃ。誰ぞ一つ二つ、気味のわるい話持ち合せておるであろう。遠慮のう語ってみい」
「なるほどよいお思いつきで厶ります。いかさま怪談ならば、気が引締るどころか、身のうちも寒くなるに相違厶りませぬ。なら、手前が一つ――」
 ようや主候とのの心中を察することが出来たと見えて、膝のり出したのは石川六四郎だった。
「あり来たりと言えばあり来たりの話で厶りまするが、手前に一つ、家重代取って置きの怪談が厶りますゆえ、御披露致しまするで厶ります」
「ほほう、家重代とは勿体もったいつけおったな。きこうぞ。きこうぞ。急に何やらいんにこもって参って、きかぬうちから襟首が寒うなった。離れていては気がのらぬ。来い、来い。みな、もそっとちこう参って、ぐるりと丸うなれ」
 ほの暗い書院の中を黒い影が静かに動いて、近侍達は膝のままにじり寄った。濃い謎を包んでいる千之介も、みんなのあとからおどおどとし乍ら膝をすすめた。しかし依然としてしょんぼりとうなだれたままだった。――うなだれつつ、必死とまた声をころしてかすかにすすり泣いた。
「やめろと申すに!」
 言うように林田が慌ててツンと強くその袖を引いていましめた。
 ――たしかに門七は千之介のその秘密を知りつくしているのである。
「ではきこうぞ」
「はっ……」
 しいんと一斉に固唾かたずを呑んだ黒い影をそよがせて、真青まっさおな月光に染まっている障子の表をさっとひとで冷たい夜風が撫でていった。
 そうして黒い六つのその影の中から、しめやかに沈んだ話の声がささやくよう伝わった。
「――先年亡くなりました父からきいた話で厶ります。御存じのように父は少しばかり居合斬りをたしなみまして厶りまするが、話というのはその居合斬りを習い覚えました師匠にまつわる怪談で厶ります。師匠というのは仙台藩の赤堀伝斎、――父が教を乞いました頃は勿論赤堀先生のお若い時分の事で厶りまするが怪談のあったというのはずっとのちの事で厶ります。なにしろ居合斬りにかけては江戸から北にたったひとりと言われた程のお方で厶りましたゆえ、御自身も大分それが御自慢だったそうに厶りまするが、しとしとといやな雨が降っていた真夜中だったそうに厶ります。どうしたことか左の肩が痛い……。いや、夜中に急に痛くなり出しまして、どうにも我慢がならなくなったと言うので厶ります。右が痛くなったのであったら、武芸者の事でも厶りますから、別に不思議はないが、奇怪なことに左が痛みますゆえ、不審じゃ、不思議じゃと思うておりましたとこへ、ピイ……、ピイ……と、このように悲しげに笛を鳴らし乍ら按摩あんまが通りかかったと言うので厶ります。折も折で厶りますゆえ、これ幸いとなに心なく呼び入れて見ましたところ、その按摩がどうもおかしいと言うので厶りまするよ。目がない! いや、按摩で厶りますゆえ、目のつぶれているのは当り前で厶りまするが、まるで玉子のようにのっぺりと白い顔をしている上に、まだ年のゆかぬ十二三位の子供だったそうに厶ります。それゆえ赤堀先生もあやぶみましてな、お前のような子供にこの肩がみほぐせるか、と申しましたところ、子供が真白い顔へにったりと薄ら笑いをうかべまして、この位ならどうで厶りますと言い乍ら、ちょいと指先を触れますると、それがどうで厶りましょう。ズキリと刺すように痛いと言うので厶りまするよ。その上に揉み方も少しおかしい。左が痛いと言うのに機を狙うようにしてはチクリ、チクリと右肩を揉むと言うので厶ります。それゆえ、流石さすがは武芸者で厶りまするな。チクリチクリと狙っては揉み通すその右肩は居合斬りに限らず、武芸鍛練の者にとっては大事な急所で厶ります。用もないのに、その急所を狙うとはこやつ、――と思いましてな、なに気なくひょいと子供を見ますると、どうで厶りましょう! のっぺりとした子供のその白い顔の上に今一つ気味のわるい大人の顔が重なって見えたと言うので厶りまするよ。しかも重なっていたその顔が、――ひょいと見て思い出したと言うので厶ります。十年程前、旅先で、自慢の居合斬りを試して見たくなり、通りがかりにスパリと斬ってすてた、どこの何者とも分らない男の顔そのままで厶りましたのでな、さては来たか! そこ動くなっとばかり、抜く斬る、――実に見事な早業はやわざだったそうに厶ります。ところが不思議なことにもその子供が、たしかに手ごたえがあったはずなのに、お台所を目がけ乍らつつうと逃げ出しましたのでな、すかさずに追いかけましたところ、それからあとがいかにも気味がわるいので厶ります。いている筈のない裏口の戸が一枚開いておって、掻き消すようにそこから雨の中へ逃げ出していったきり、どこにも姿が見えませなんだゆえ、不審に思いましてあちらこちら探しておりますると、突然、流し元の水甕みずがめでポチャリと水の跳ねた音がありましたのでな、何気なにげなくひょいとのぞいて見ましたところ、クルクルとひとりでに水が渦を巻いていたと言うので厶りまするよ。そればかりか渦の中からぬっと子按摩の父の顔が、――そうで厶ります。旅先で斬りすてたどこの何者とも分らないあの男の顔が、それも死顔で厶ります。目をとじてにっと白い歯をむいたその死顔が渦の中からさしのぞいていたと言うので厶ります。いや、覗いたかと思うと、ふいっと消えまして、それと一緒にバタリと表の雨の中で何やら倒れた音が厶りましたゆえ、さすが気丈の赤堀先生もぎょっとなりまして怕々こわごわすかして見ましたところ、子按摩はやはりいたので厶りました。見事な居合斬りに逆袈裟ぎゃくげさの一刀をうけ、息もたえだえに倒れておったと言うので厶ります」
「ふうむ。なるほどな」
 うなるようにほっと息を吐き乍ら面をあげると、長国がしみじみ言った。
「気味のわるい話じゃ。やはり子按摩は親の讐討かたきうちに来たのじゃな」
「はっ、そうで厶ります。魂魄こんぱく、――まさしく魂魄に相違厶りませぬ。親の魂魄の手引きうけて、仇討あだうちに来は来ましたが、赤堀先生は名うての腕達者、到底尋常の手段では討てまいと、習い覚えた按摩の術で先ず右腕の急所を揉み殺し、しかるのちに討ち果そうと致しましたところを早くも看破されて、むごたらしい返り討ちになったのじゃそうに厶ります」
「いかさまな、味のある話じゃ。それから赤堀はどうなったぞ」
「奇怪で厶ります。それから先、水甕を覗くたびごとに、いつもいつも父親の死顔がぽっかりと泛びますゆえ、とうとうそれがもとで狂い死したそうで厶ります」
「さもあろう。いや、だんだんと話に気が乗って参った。今度は誰じゃ。誰ぞ持合せがあるであろう。語ってみい!」
「…………」
「返事がないな。多々羅はどうじゃ」
「折角乍ら――」
「ないと申すか。永井! そちは如何どうじゃ?」
「手前も一向に――」
「不調法者達よ喃。では林田! そちにはあるであろう。どうじゃ。ないか」
「いえ、あの――」
「あるか!」
「はっ。厶りますことは厶りまするが……」
 ためらいもよいつつ林田が言いかけたのを、
「言うなっ。門七!」
 実に奇怪だった。それまで点々としてしょんぼりうなだれていた千之介が、突如おもてをあげると、何ごとか恐れるように声をふるわせながらけわしく遮切さえぎった。
「話してはならぬ! やめろっ。やめろっ。あれを喋舌しゃべってはならぬ! 言うのはやめろっ」

         三

「なに! なことを申したな。何じゃ! 何じゃ!」
 きいて当然のごとくに長国が不審を強め乍ら言いじった。
「やめろとは何としたのじゃ! あの話とはどんな話ぞ? 千之介がまたなぜ止めるのじゃ」
「…………」
「のう林田。仔細ありげじゃ。聞かねばおかぬぞ。何が一体どうしたというのじゃ」
「いえ、実は、あの――」
「言うなと申すに! なぜ言うかっ」
 別人のように千之介がけわしく制したのを、
「控えい! 波野!」
 長国がきびしく叱って言った。
「気味の悪い奴よのう! その方は今宵いぶかしいことばかり致しおる。尋ねているのはそちでない。門七じゃ。林田! しゅの命じゃ! 言うてみい!」
「はっ。主命との御諚ごじょうござりますれば致し方厶りませぬ。千之介がけわしく叱ったのも無理からぬこと、実は波野と二人してこの怪談を先達せんだつてある者から聞いたので厶ります。その折、語り手が申しますのに、これから先うっかりとこの怪談を人に語らば、話し手にわざわいがかかるか、聞き手の身に禍いが起るか、いずれにしても必ずともに何ぞ怪しいたたりがあるゆえ気をつけいと、気味のわるい念を押しましたゆえ。千之がそれをおそれてやめろと申したので厶ります」
「わははは。何を言うぞ。そち達両名は二本松十万石でも名うての血気者達じゃ。そのような根も葉もないことこわがって何とするか、語ったは誰か知らぬが、その者はどうしたぞ?語ったために何ぞ崇りがあったか」
「いえ厶りませぬ」
「それみい! 話し手も息災、きいたそち達も今まで斯様かように無事と致さば何のおそれることがあるものか! 長国、十万石を賭けても是非に聞きとうなった。いや主命を以て申し付くる! その怪談話してみい!」
「はっ。君命とありますれば申しまするで厶ります。話と言うは――」
「よさぬか! 門七! 知らぬぞ! 知らぬぞ! 崇りがあっても俺は知らぬぞ」
「構わぬ! 崇りがあらば俺が引きうけるわ。何やら急に話して見とうなった。ハハハ……。殿! 物凄い話で厶りまするぞ。とくと、おきき遊ばしませ」
 ものかれでもしたかのごとくふるえ声で叫んだ千之介の制止を、同じ物の怪に憑かれでもしたように林田が跳ね返し乍らつづけていった。
「話と言うはこうで厶ります。ついこの冬の末にそれもこの二本松のお城下にあった話じゃそうに厶りまするが、怪談にうたは旅の憎じゃとか申すことで厶りました。多分修行なかばの雲水うんすいででも厶りましたろう。雪の深い夕暮どきだったそうで厶ります。松川の宿に泊ればよいものを夜旅も修業の一つと心得ましたものか、とぼとぼと雪に降られてこの二本松目ざし乍らやって参りますると、お城下へもうひと息という阿武隈あぶくま川の岸近くで左右二つに道のわかれるところが厶りまするな、あの崖際がけぎわへさしかかって何心なく道を曲ろうと致しましたところ、ちらりと目の前を走り通っていった若い女があったそうに厶ります。ぎょっと致しましたが、そこはやはり旅馴れた出家で厶りますゆえ、雪あかりにすかしてよくよく女を見直すと、これがどうで厶りましょう。パラリと垂れたおどろ髪の下から、ゲタゲタと笑いましてな、履物はきものも履きませず、はぎもあらわに崖ぷちへたたずみ乍ら、じいっと谷底を覗いていたかと思うと止めるひまも声を掛けるひまもないうちに、ひらりと飛込んで了ったと言うので厶りまするよ。それからが大変、なにしろ身は出家で厶りまするからな。人ひとり救うことが出来ぬようではと、お城下で宿を取ってからもそのことばかり気に病んでおりましたところ、急に何やら町内の者がそわそわと宿の内外で騒ぎ出しましたゆえ、それとなく探ってみると、因縁いんねんで厶ります。泊り合わせたその宿の若い内儀が夕方近くからにわかに行方知ゆきかたしれずになったとやらで、それがよくよく人相など聞いて見ますると、崖ぶちから身を投げたあの女にそっくりそのままで厶りましたのでな、それならばしかじか斯々かくかくじゃと言う出家の話から騒ぎが大きくなってすぐに人が飛ぶ、谷底から死骸むくろが運ばれて来る。しらべて見るとやはり宿の内儀だったので厶ります。それゆえせめても救うことの出来なかった詫び心にあとの菩提ぼだいでもとむらいましょうと、身投げした仔細をたずねましたところ、亭主が申すには何一つ思い当る事がないと言うのじゃそうで厶ります。ない筈はあるまい。何ぞあるであろうと根掘り葉掘りきき尋ねましたところ、やはり変なことがあったので厶りまする。身投げした十日程前に古着屋から縮緬ちりめんの夜具を一組買ったそうで厶りましてな、それを着て寝るようになってから、どうしたことか毎夜毎夜内儀が気味わるくうなされるばかりか、時折狂気したようにいろいろとわけのわからぬことを口走っては騒ぎ出すようになったと言うので厶ります。――それじゃ。屹度きっとそれじゃ、その古着の夜具に何ぞいわくがあろうと思い当りましたゆえさすがは出家、さそくに運び出させて仔細に見しらべましたところ――、別に怪しいことはない。ないのに魘されたり、狂い出したり、あげ句の果てに身投げなぞする筈があるまいと一枚々々、夜具の皮をがしていってよくよくしらべますると、ぞっといたします。申しあげる手前までがぞっと致します。古着の敷布団の、その一枚の丁度枕の下になるあたりの綿の中から、歯が出て来たと言うので厶りまする。人が歯が、何も物言わぬ人の歯がそれも二枚出て来たと言うので厶ります」
「なにっ。歯が二枚とな! 歯とのう! 人の歯とのう! ……」
 ぎょっと水でもあぴたように長国の声がふるえて疳走かんばしった。
 鬼火のように青あおと燃えていた月光がふっと暗くかげった。――同時である。何ぞ火急のしらせでもあると見えて、キイキイと書院の廊下の鶯張りを鳴らせ乍ら一足ひとあしが近づいて来ると、はばかり顔に声がのぞいて言った。
「茶坊主世外せがいめに厶ります。御老臣ばん様が、殿に言上ごんじょうせいとのことで厶りました。もう三日もこちら一睡も致さず論議ばかり致しておりましたせいか、人心地ひとごこち失いまして、よい智慧も浮びませぬゆえ、まことに我まま申上げてはばかり多いことで厶りまするが、ひと刻程ねむりをらせて頂きましてから、今度こそ必ずともに藩議いずれかに相まとめてお目にかけまするゆえ、今暫く御猶予願わしゅう存じまするとのことで厶ります」
「何を言うぞ! 返す返すも人を喰った老人共じゃ。武士もののふの本懐存じておらば、三日も寝ずに論議せずとも分る事じゃ! たわけ者達めがっ。勝手にせいと申し伝えい!」
 疳高くりんとした声だった。っとしとねを蹴って立ち上ると苛立いらだたしげに言った。
「予も眠る! 城主なぞに生れたことがくやしいわっ。予も寝るぞ! ――今宵の宿居とのいは誰々じゃ。早う参れっ」
 足取りも荒々しく消えていったあとから、宿居に当っていた近侍きんじ永井大三郎と石川六四郎がお護り申しあげるように追っていった。
 平伏しつつ、濃い謎を包みつつ、見送っていた千之介が、ほっとなったように面をあげると、なぜか明るい微笑すらも泛べて、急に元気に立ち上った。無論もうお長屋に帰って、ゆるゆる一夜を明かすことが出来るのである。多々羅も林田も、やはりもう用のない身体だった。――やがて黙々と肩を並べ乍ら三つの影が城内の広場に現われた。
 同時のように観音山かんのんざんの頂から天守をかすめて、さっとまた月光が三つの影の上にそそぎかかった。
 光りはほり水面みずもにまでも散りこぼれて、二本松十万石の霞ヶ城は、いち面に只ひと色の青だった。
 三つの影はその青の間をい乍ら、二ノ濠わきのお長屋目ざして、黙々と歩いていった。
「では――」
「おう、また――」
 お長屋の離れている多々羅は右へ、隣り合っている門七と千之介は左へ、覗き松のところから分れて行くのが道順なのである。
 分れて二つの影になった千之介と門七は、三歩ばかり黙々と歩いていった。しかし、その四歩目を踏み出そうとしたとき、突然門七があざけるように千之介に言った。
「馬鹿め!」
「なにっ」
「怒ったか」
「誰とても不意に馬鹿呼ばりされたら怒ろうわ。俺がどうして馬鹿なのじゃ」
女々めめしいからよ。君前くんぜんであのざまは何のことかい。なぜ泣いたか殿はお気付き遊ばしておられるぞ。あの時も意味ありげに仰有おっしゃった筈じゃ。乱世ともならば月を眺めて泣く若侍もひとりや二人は出て参ろうわとおおせあった謎のようなあの御言葉だけでも分る筈じゃ。たしかにもう御気付きなされたぞ」
「馬鹿を申せ! 誰にも明かさぬこの胸のうちが、やすやすお分り遊ばしてなるものか!第一そう言うおぬしさえも知らぬ筈じゃわ」
「ところが明皎々めいこうこう――」
「知っておると申すか!」
「さながらに鏡のごとしじや。ちゃんと存じておるわ。さればこそ、さき程もあのように願ってやったのじゃ。疑うならば聞かしてやろうか」
「聞こう! 言うてみい! まこと存じておるか聞いてやるわ! 言うてみい!」
「言わいでか。当てられて耻掻はじかくな。おぬしが女々しゅうなったそもそもはみな奥方にある筈じゃ。契ったばかりの若くて美しいあの恋女房が涙の種であろうがな! どうじゃ。違うか!」
「……!」
 ぎょっと図星を指されでもしたかのように口をつぐんだ千之介の影へ門七が、押しかぶせるように嘲笑をあびせかけ乍ら言った。
「みい! アハハ……。見事的中した筈じゃ。俺はわらうぞ! わはは。嗤ってやるぞ! 未練者めがっ。会津御援兵と事決まらば、今宵にも出陣せねばならぬゆえ、残して行くが辛さにめそめそ泣いたであろうがな! どうじゃ! 一本参ったか!」
「…………」
「参ったと見えるな。未練者めがっ。たかが女じゃ。婦女子の愛にうしろ髪かれて、武士もののふの本懐忘れるとは何のことか! 情けのうて愛想がつきるわ」
「いやまてっ」
「何じゃ」
「たかが女とはきき棄てならぬ。いかにもおぬしの図星通りじゃ。出陣と事決まったらどうしようと思うて泣いたも確かじゃが、俺のあれは、いいや俺とあれとの仲は人と違うわ」
「言うたか。今にそう言うであろうと待っていたのじゃ。ならば迷いの夢をましてやるために嗅がしてやるものがある。吃驚びっくりするなよ」
 まさしくそれは声の上に出さぬ凄艶せいえんな笑いだった。深く心に期して待ちうけてでもいたかのように突然門七がにっと笑うと、千之介の鼻先に突き出したものはその左片袖である。
「嗅いでみい! 想い想われて契った恋女房ですらも、やはり女は魔物じゃと言う匂いがこの袖にしみついている筈じゃ。よう嗅いでみい!」
「……?」
「のう! どうじゃ! 合点がてんがいったか!」
「よっ。まさしくこの匂いは!――」
「そうよ! お身が恋女房と自慢したあの女の髪の油の匂いじゃわ。ウフフ。迷いの夢がさめたか」
「ど、どう、どうしたのじゃ! この匂いがおぬしの袖についているとは、何としたのじゃ! ど、どうどうしたと言うのじゃ」
「どうでもない。忘れもせぬ夕暮どきじゃ。殿より火急のお召しがあったゆえ、おぬしを誘いに参ったところ、どこへいっていたのかるすなのじゃ。それゆえすぐに引返そうと出て参ったところ、もしあのお袖が、――と恥しそうに呼びとめたゆえ、ひょいと見るとなる程綻ほころびておったのじゃ。やさしいお手で縫うて貰うているうちに、どちらが先にどうなったやら、――それからあとは言わぬが花よ。この通り片袖に髪の油がしみついたと言えば大凡おおよそ察しがつこうわ。どうじゃ! 千之! 未練の夢がさめたか!」
「なにっ。うぬと、あれが! あれと、うぬが! ……」
 ふるえて声がつづかなかった。目である。目である。血走った目が青白い月光の中を一散に只飛んでいった。

         四

 勿論もちろん千之介の駈け込んでいったのはそのお長屋だった。
「いるか!」
「…………」
「どこじゃ!」
「…………」
「どこにおるか!」
 叫んだつもりだったが、声になって出なかった。五体をふるわし、唇をわななかせ乍ら躍り込んでいった千之介の、血走っているその目にはっきり映ったのは、ほの暗い短檠たんけいの灯りをあび乍ら、こちらに背を見せて坐っていた妻の姿である。
 髪が乱れているのだ!
 針箱も側にあるのだ!
「不、不義者めがっ」
 叫ぶのと抜いたのと同時だった。――シュッと血しぶきを噴きあげ飛ばして、若く美しかったその妻は一言の言葉を交わし放つひまもなく、どったりと前のめりにうっ伏した。
 その血刀ちがたなひっさげたまま千之介は、隣りつづきの林田門七のお長屋目ざしつつ駈け出すと、物をも言わず躍り入りざま、そこに今別れたばかりの門七が立て膝し乍ら、灯りに油をさしていたのを見かけてあびせかけた。
「不、不義者めがっ」
 ののしったのと斬ったのと同時だった。スパリ、冴えた一刀があの憎らしくも悩ましい片袖もろ共左腕をそのつけ根から斬って放った。――だが刹那である。林田門七もさる者だった。左腕を斬って放たれ乍らも右手めて一つで咄嗟とっさに抜き払ったその一刀が、ぐさりと千之介の腰車こしぐるまに喰い入った。
 そうして言った。おどろいたように言った。
「おう! 千之か! 誰かと思うたのにおぬしだったか!」
「お、おぬしだったかがあるものか! 妻を盗んだ不埒者ふらちものめがっ。千之が遺恨のやいば、思い知ったか」
「そ、そうか! では、では、お身、今の話をまことと信じたか!」
「なにっ。う、嘘か! 嘘じゃと申すか」
「嘘も嘘も真赤な嘘じゃわ! あの貞女が何しにそんないたずらしようぞ! 袖の破れを縫うて貰うたは本当のことじゃが、あとのことは、みなつくり事じゃわ!」
「油のしみはどうしたのじゃ! その片袖の油の匂いはどうしたと言うのじゃ!」
「縫うて貰うているすきに知りつつ細工したのじゃわ。それもこれもみなおぬしに、武道の最期、飾らせたいと思うたからじゃ。女ゆえに見苦しい振舞でもあってはと――そち程の男に、女ゆえ見苦しい振舞いがあってはと、未練をすてさせるために構えていた嘘であったわ」
「そうか! そうであったか! はやまったな! 斬るとは逸まったことをしたな……」
「俺もじゃ。この門七も計りすぎたわ。その上、おぬしと知らずに斬ったは、俺も逸まったことをしたわ……」
 嘆き合っているとき、突如、夜陰の空にこだまして、ピョウピョウと法螺ほらがひびき伝わった。
 あとから、鼕々とうとうと軍鼓の音が揚った。――同時に城内くまなくひびけとばかりに、叫んだ声が流れ伝わった。
「出陣じゃ! 出陣じゃ!」
にわかに藩議がまとまりましたぞう!」
「会津へ援兵と事決まりましたぞう!」
「出陣じゃ! 出陣じゃ!」
 きくや、手負いの二人は期せずして目を見合せ乍ら言った。
「千之!」
「門七!」
「無念じゃな……」
「残念じゃな……」
「ここで果つる位ならば、本懐遂げて死にたかったわ」
「そうよ、華々しゅう斬り死にしたかったな」
「許せ。許せ」
「俺もじゃ。せめて見送ろう!」
「よし行こう!」
 左右からい寄ると、血に濡れ、あけに染みた二人はひしと力を合せて抱き合いつつ、よろめきまろぶようにし乍ら、ようやく表の庭先まで出ていった。
 同時に二人の目の向うの、月光散りしく城内はるかの広場の中を騎馬の一隊に先陣させた藩兵達の大部隊が軍鼓を鳴らし、法螺ほらを空高く吹き鳴らし乍ら、二りゅうの白旗を高々と押し立ててザクザクと長蛇のごとく勇ましげに進んでいった。
 それをお物見櫓ものみやぐらの上から見おろし乍ら、よろこばしげに君侯の呼ばわり励ます声が、冴えざえと青白く冴えまさっている月の光の中を流れて伝わった。
「行けい!」
「行けい!」
「丹羽長国の名を恥かしめるでないぞ!」
「行けい!」
「行けい!」
「二本松藩士の名をけがすでないぞ!」
「行けい!」
「行けい!」
 ききつつ二人が言った。
「御本懐そうよのう」
「御うれしげじゃのう」
 言い乍ら、ふいと門七が思い当ったとみえて、ぞっとなったように身ぶるいさせ乍ら言った。
「あれじゃ! 千之! 崇ったぞ! あの怪談話したゆえの崇りに相違ないぞ!」
「のう! ……」
 ガックリと首を垂れて、断末魔の迫って来た二人の目に、青白い月光の下を静かに流れ動いて行く二旒の白旗が大きな二本の歯のように映った……。





底本:「小笠原壱岐守」大衆文学館文庫、講談社
   1997(平成9)年2月20日第1刷発行
底本の親本:「佐々木味津三全集10」平凡社
   1934(昭和9)年発行
初出:「中央公論 二月号」
   1931(昭和6)年発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:大野晋
校正:noriko saito
2004年11月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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●表記について