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――だんだんと回数を重ねまして、名人の
ところで、その快男児ですが、変人変物という点においては、およそ天下にこんな珍しい一対はあるまいと思われる右門と伝六のところへわざわざ仲間入りするんですから、この新しいわき役なる者がまた尋常一様の男ではないので。前回の指切り騒動がかたづきましてから日にしてちょうど十六日めの夕景でした。朝のしたくはいうまでもないこと、夕げの用意、床のあげおろし、およそ右門の身まわりに関する女房役は、いっさいがっさい伝六が男手一つで切り盛りするならわしでしたから、もうそろそろやって来なければならない刻限でしたが、陽気のかげんで、はずみがつきすぎましたものか、いっこうにあいきょう者が姿を見せませんので、しかし、根がそういうことにいたって大まかな名人のことでしたから、あかりをつけるのもめんどうとばかり、そこの座敷のまんなかにごろりと大きく寝そべりながら、もぞりもぞりと、くらやみであごのまばらひげをまさぐりつづけていると、まさにそのとたんでした。裏木戸のあたりとおぼしき方角にあたって、不意にことりと、だれかうかがい寄りでもしたようなけはいがありました。伝六ならばいつやって参りますときでも、ガラガラとがらがらへびのようにからだじゅうを鳴らしながらやって来るのが普通でしたから、はてなと思いましてきき耳を立てていると、ところがどうしたことか、それがやっぱりあいきょう者なので、しかもほかになんびとか連れでもがあるらしく、やにわに奇態なことを促しました。
「さ! 遠慮はいらねえから、早いところおめえの隠し芸をお目にかけて、ちょっくらだんなの肝を冷やしてやんねえよ」
と――ほとんど同時です。伝六に促されて黒い影がごそごそと庭先へはいってきたらしい様子でしたが、いかにも奇怪至極なことばで、とつぜん右門に呼びかけました。
「だんな、お無精をなさっていらっしゃるとみえまして、おさかやきが少しお伸びのようでござんすね」
これにはさすがの捕物名人もおもわずぎょッとなりましたので。表にこそはいくらか宵星のうっすらとしたほのあかりがありましたが、屋のうちはあんどん一つともっていないまっくらがりでしたのに、それなる不意の
「お腰の物の下げ緒がゆるんでおいでのようですぜ」
じっさいまた下げ緒がゆるんでおりましたので、奇態な男のかさねがさねな奇態なことばに、いささか名人もあっけにとられていると、伝六のやつめがげらげらと笑いながら駆け上がってきて、そそくさあかりをつけていたようでしたが、得意そうにいいました。
「いかなだんなでも、今の隠し芸にゃ、ちょっと舌をお巻きなすったようでしたね。あの男がその本人なんだから、とっくりご覧なせえましよ」
庭先を指さしましたものでしたから、よくよく見ると、これがじつにどうもいいようのない男です。身のたけは抜群――といいたいが、反対にごくごくの抜小で、ものさしを当ててみたらせいぜいまず四尺八寸か九寸ぐらい。それだのに、これがひねこびれてでもいるかと思うと案外にのっぺりとなまっちろくて、物にたとえていったならば、ご禁裏仕えの高貴なお
「人間てがらを重ねておくと、こういう堀り出し者が、ひとりでに向こうから集まってくるんだから、ありがたいこっちゃござんせんか。実は今、こちらに晩のおしたくにやって来ようとすると、ひょっくりこの珍客があまくだってめえりましてね、きょうから右門のだんなの手下になることに話が決まったから、だんなに引き合わせろとこう申しましたんで、さっそくお目見えにつれてまいりましたが、すばらしい珍品じゃござんせんか。どうです! 御意に召しませんか」
「不意に妙なことをいうが、いったいだれが手下にしてやると申した」
御意に召そうにも召さないにも、まるでいうことが右門には初耳でしたから、あっけにとられて聞きとがめると、ところが、いたって伝六がおちついていいました。
「だから、あまくだったといってるんじゃござんせんか。ここに松平のお殿さまからのりっぱなご添書がごぜえますから、ご覧なせえましよ」
うやうやしく伝六が奉書包みをさし出しましたものでしたから、さっそく右門も
「こは余が領国武州忍 に育ちし者に候 も、希代なるわざ二つあり、下人に捨ておくは惜しきものと存じ、そのほう配下に差し送り候条、よしなにお差配しかるべく、右推挙候者なり」
これが余人の推薦ならば、容易に食指を動かす右門ではありませんでしたが、天下第一の名宰相、知恵の権化の松平伊豆守が、これならばといわぬばかりに、太鼓のような判を押して、わざわざ送りつけてくださいましたものでしたから、右門もようやく事の「では、ともかく人となりを承ろう。当年何歳じゃ」
「二十三でございます」
「ひどく小さいようじゃが、まさか日陰で育ったわけではあるまいな」
「いいえ、それが実あ日陰ばかりで育ったんだから、うそはいえないものでございますが、親代々家の
「なるほどさようか、いかにも珍しい話じゃが、名はなんと申すか」
「善光寺
「なに、善光寺辰? いぶかしい名まえじゃが、親がつけたか」
「いいえ、親のつけた名まえは辰九郎というんですが、あんまりあっしが小粒なんで、善光寺さまのご尊体が一寸八分しきゃないとかいうあれをもじって、みんながいつのまにかそんなあだ名をつけたんでございますよ」
「いかさまな、物は考えようじゃな。では、あとの一つの希代なわざじゃが、それはどんな隠し芸じゃ」
――と、みずから善光寺辰と名のったそれなる小男が、なにやらごそごそと腰のまわりを探っていたようでしたが、やがて取り出したひと品は一筋の麻なわでしたから、そんなものを何にするだろうといぶかしんでいると、じつにこれが名技ともなんともいいようのない早わざなので、さながら一本の棒かなんぞのように、するすると手先から繰り出されたかと見えるや、ひらり輪先をそこの庭の
「ほほう、投げなわをよくいたすとみえるな。余のかたのご推挙ならばもちっと吟味せねばならぬが、ほかならぬ伊豆守様からのおくだされものじゃから、いかにも配下といたしてしんぜよう。では、あすにでもご奉行職に願いあげて、その旨上申してつかわすゆえ、当分のうち牛は牛づれに、伝六と同居いたせ」
伊豆守様折り紙つきという一条がものをいって、思いのほかたやすく採用と決定いたしましたものでしたから、喜んだのは本人の善光寺辰と、牛づれのできた伝六でしたが、しかし、物事はそうそうおあつらえ向きばかりにはいかないものとみえまして、せっかく捕物三人
「ちくしょうめッ、石川
しきりに五右衛門を
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正確に申しますとちょうど八日の日でしたが、この日は改まって申すまでもなく、釈尊がインド
と――三人が久しぶりでの遠出にぐったりとなって、そこの座敷へすわるかすわらないかに、
「よッ。人を食ったまねをしやがったなッ」
相手もあろうに、まさしく右門を目ざしての手裏剣でしたから、ちょっとけしきばんで立ち上がろうとすると、間をおかないで二本めが、あやうく左をかすめながら、プツリ、またうしろのふすまに突きささりました。といっしょに、三本めの短いドスがかわすあとからおそいかかって、間一髪のところを上にそれつつ、プツリとまたふすまに突きささりましたものでしたから、うろたえたのは伝六で、なにはともかく正体を見届けなくてはとばかり、あわてて
「兄貴! いらねえよ! いらねえよ! ここにりっぱなちょうちんがあるじゃねえか!」
新参の配下善光寺辰が、いまぞ初てがらといいたげに急いで止めて、希代な目ぢょうちんを光らしながら、じっと庭の向こうを見かすめていた様子でしたが、おどろいたもののごとく叫びました。
「だんな、だんな! くせ者は十五、六ぐれえの小僧っ子ですぜ!」
「えッ、少年かッ。なんぞ子細があろう! 捕えろッ、捕えろッ」
いう間も五本七本と、矢つぎばやに
「まて、小僧ッ。逃げようたッて、逃がしゃしねえぞッ」
しりからげになって追おうとすると、呼び止めておどり出したのは善光寺辰でした。
「兄貴! 忘れるなよ! 忘れるなよ! おれにこういう芸当があるじゃねえか!」
叫びざまに、こぢんまりとしたからだをちょこちょこと走らせて、逃げゆく影を追跡していった様子でしたが、いかさま
「死んでやらあ! 死んでやらあ! もうこうなりゃ、おれもいっしょに死んでやるから、さ、殺せッ。さ、殺せッ」
きりきりと歯を食いしばって、こめかみのところにみみずばれのような太い
「こりゃだんな、どうもキ印のようでござんすぜ」
そろそろとお株を始めた様子でしたが、しかし右門は黙ってまずそれなる少年の人相風体を一見いたしました。見ると、これがどうもいよいよ奇態で、年のころはいかさま十五、六のようでしたが、いぶかしいのはその風体でした。顔から首が一帯の濃いおしろいで、着付けはけばけばしい大模様の振りそでの上に、うがっているはかまなるものがまた、どうしたことかまっかです。
「ほほうのう、ちっとこりゃ変わり種かもしれねえな」
つぶやきながら、じろじろと見ながめていた様子でしたが、やがてずばりと名人の断定するがごときことばが放たれました。
「そなた、どこぞの小屋掛けしばいに出ている役者だな」
ところが、少年は何をそんなに憤慨しているのか、わけもなく
「めくら役人めが、なにょぬかしゃがるかい! 役者だろうとなんだろうと、大きなお世話だ。こうなりゃもうじたばたしねえから、さ、殺せ! さ、殺しゃがれッ」
いう少年も少年でしたが、聞いていった右門もまた右門でした。
「そうか、じゃ、望みどおり殺してやるが、おれの殺し方は、ちっと冷たいぜ」
変なことをいいながら、うそうそと笑いわらいかたわらを顧みると、伝六に不意と命じました。
「辰にもてつだわせて、手おけに水を二、三杯持ってきなよ」
「え

「またお株を始めやがったな。なにもいちいち聞き返さなくっていいじゃねえか。持ってこいってたら持ってきなよ」
「いいえね、あっしゃもう一年のうえもだんなのそばにくっついているんだから、どんなとんちんかんなことをおっしゃろうと、まただんなのおはこが出たなと思うだけで、べつに驚きゃしませんが、善光寺辰あ、まだほやほやなんだからね、さぞかしめんくらうだろうと思って、ちょっと兄貴風を吹かしてみただけなんですよ」
変なところへ吹かしばえのしない兄貴風を吹かしながら、それでも先にたって井戸ばたのほうへやっていったようでしたが、まもなくふたりして、よちよちと、手おけに三杯掘り井戸の冷たいところを運んでまいりましたので、何をするかと思われたのに、いつもながらそういうところが、じつに右門流でした。
「さ、望みどおり殺してやるから、ちょっとこっちに首を出しなよ」
いいつつえり髪を捕えて、そこの縁側へひきずっていくやいなや、やにわにじゃあじゃあとくみたての冷やっこいところを、少年の首から頭へ浴びせかけましたものでしたから、まことに春先ののぼせ引き下げにはこれこそ天下一品の適薬です。一杯一杯と浴びるごとに、しだいしだいと心が静まったとみえて、ややしばし少年がきょとんとしていましたが、いよいよいでていよいよ奇怪千万でした。にわかにがらりとうって変わって、神妙に右門の前へ両手をつくと、とつぜん変なことをいいだしました。
「あんまり腹がたちましたゆえ、ついカッとなりまして、前後も知らずにだいそれたまねをいたしましたが、もうお手向かいはいたしませぬゆえ、どうぞだんなさまも、わたしの姉をお返しくださりませ。お願いでござります。お願いでござります。はようお返しなされてくださりませ」
「なに


まったくの不意打ちでしたから、いたく右門もめんくらいましたが、しかし少年はおしかぶせるようにいいつづけました。
「おとぼけなさりますな! 先ほどだんなさまお自身がお引っ立てなさったはずではござりませぬか」
「まてまて。やぶからぼうに、妙なことばかり申すが、いったいわしがそなたの姉とやらをどうしたというのじゃ」
「どうしたもこうしたも、ちゃんとだんなさまご自身がよくご存じのはずではござりませぬか」
「ますます奇態なことを申しおるな。まさか、人違いしているのではあるまいな」
「ござりませぬ! ござりませぬ! たしかに、むっつり右門のだんなさまと承知して、すぐさまかように押しかけてまいったのでござります。わたくしの姉にかぎってそんなだいそれたことをいたすわけはござりませぬのに、親方を殺した下手人じゃとおっしゃいまして、つい今のさっきお引っ立てなさいましたとききましたゆえ、返していただきに上がったのでござります」
「なにッ、親方殺しの下手人とな

不意からいでて、ますます不意なことばでしたから、右門がしたたかにめんくらっていると、少年がへへいというように、ややしばしまじまじと名人の面を見つめていた様子でしたが、けげんそうにいいました。
「では、あの、だんなさまは少しもご存じないのでござりまするか」
「知らぬ、知らぬ。まったくの初耳なればこそ、かくおどろいているしだいじゃが、いったいいかがしたのじゃ」
「いかがも何もござりませぬ。まことご存じよりがござりませねば、詳しゅう申し上げいではなりませぬが、実はこうでござります。わたくしめは、いかにもだんなさまが先ほど仰せられましたように、この月初めから奥山の娘かるわざ師一座に仲間して、つたない手裏剣打ちをお目にかけておりまする芸人でござりまするが、つい
「ほほうのう。では、その引っ立ててまいった者が、このわしじゃと申すのじゃな」
「はい。座方の皆さまがたもさように申しましたが、ご本人もそのときおっしゃったげにござります。実は、いま観音さまへ
事実としたら、親方殺しの下手人が、それなる少年の姉であるか否かは二の次として、はしなくもここにむっつり右門がふたり生じたわけでしたから、いかさまこれは奇態といわねばなりませんでしたが、しかし、逐一を聞くや同時に捕物名人の面にまず上がったものは、ほんのりとした微笑です。それから、例の
「バカ者めがッ。かたる者に人をかいて、このむっつり右門に化けるとはなにごとだッ――さ、伝六ッ。辰ッ。ちっとまた忙しくなったようだから、久方ぶりに右門流の虫干しでも始めようぜ」
いいつつ、珍しや
「ちッ、ありがてえッ。こうおいでなさりゃ、伝六様もおしゃべりのあごにたっぷりゴマの油がひけるというもんだ。辰公もよく覚えておきなよ。おいらがだんなの口に、今のような啖呵が出たなとなりゃ、すぐにあとは
しかし、駕籠は駕籠でしたが、ちょっと今宵は趣が違っていますので――、
「一丁でいいぜ」
「えッ?」
「おれの分が一丁でいいんだよ」
「急に勘定高いことをおっしゃりだしましたが、じゃ、あっしらふたりはどうするんですかい」
「きまってらな。入費のかからねえ二本の足で走っておいでよ」
「ちぇッ。どうせご番所のお手当金をいただくんだもの、足代ぐらいはしみったれなくたっていいじゃござんせんか」
「だから、おめえなんざいつまでたっても出世しねえんだ。ご番所のご公金だからこそ、足代だとてむだにしちゃならねえじゃねえか。辰あきのうきょうの新参者だ。しかるにもかかわらず、新参者が初手から駕籠なんざあぜいたくすぎらあ。年季が積むまで修業しなきゃならねえから、かわいい弟分の兄弟つきあいだと思って、いっしょに苦労を分けてやんなよ」
ここらが右門の右門たるゆえんですが、とんだところへ兄弟分の修業つきあいを仰せつかったものでしたから、伝六のしょげ返ったこと、しょげ返ったこと――
「ちぇッ。ありがたすぎて涙が流れらあ。みろい、辰ッ。いっしょに苦労を分けてやるからにゃ、あしたから、おめえが一日交替でおまんまをたけよ」
いいつつも、四尺八寸のお
3
時刻はもう四ツそこそこの刻限でしたから、むろんのことに見せ物小屋ははねたあとで、どこもかしこもひっそりと死んだように静かでしたが、しかし、問題の娘かるわざ一座ばかりは、さすがに事件直後のこととて、座員の者はいずれも楽屋裏につどいながら、血の色も失いつつ、うろうろとたち騒いでいるさいちゅうでしたので、右門は顔を見知られてはならじというもののごとくに紫覆面のまま、それなる手裏剣打ちの少年を案内に、ゆうぜんと犯行現場へやって参りました。
と――
見ると、いかさま女親方は、ちょうど乳のあたりをぐさりと一突きやられて、胸から腰から畳の上にまでべとべと血をしたたらしながら、しかもその口の中には、少年の陳述したとおり、はでやかな娘物の衣装の片そでを必死にガブリとかんで食いちぎったまま、断末魔の形相もものすごくのけぞっていたものでしたから、あまりな
と――注いでいったその足もとの畳の上に、はからずも発見されたものは、白い粉の浮いた足跡――あるかないかくらいにうっすらと、何かの白い粉が浮いた足跡です。それも、よくよく見ると、いくつか入り乱れながらしるされている粉のその足跡に、紛れもなく大小二つがあるので、一つは八文七分くらい、一つは九文三分くらい、まことに右門ならでは発見のできないくらいにかすかなかすかな大小の足跡でしたが、かくあきらかに八文七分くらいと九文三分くらいの大小二いろがあるところから判断すると、かたかたずつ大きさのちんばな足を所有している珍人間でもがあらば格別、そうでないかぎりは、足の裏に白い粉のついているふたりの人間がまさしくこのへやに
「そちらはこの座で何をいたしおる者じゃ」
「へえい、番頭代わりかたがた楽屋番をいたしおるおやじめでござります」
「では、このできごとの前後のもようなども存じおるであろうが、これなる親方があやめられたときは、どんな様子じゃった」
「倒れて消えましたものか、わざと吹き消しましたものか、へやのあかりが消えますといっしょに、どたばたとけたたましい物音がござりまして、まもなくキャッという悲鳴がござりましたゆえ、みんなしてこわごわやって参り、ここの入り口からあかりをさし入れまして、そっとのぞきましたら、親方さまがかようなお姿となられまして、そばにその手裏剣打ちの姉めがそでを食いちぎられて、がたがたと震えていたのでござります」
「そのおり、だれぞこのへやの中まではいりおったか」
「いいえ、だれもはいった者はござりませぬ。なにしろ、こわい一方で、みんなここのところから、震えふるえのぞいたばかりでござります」
「その後もずっと、このへやへ座方の者ではいった者はなかったか」
「へえい。なにしろ、娘子どもの多い一座でございますゆえ、みんなもう血のけを失って、いまだにだれもそばへ寄りつく者がないくらい、こわがってでござりましたゆえ、せめてあかりなとつけなくてはなおこわかろうと、てまえがそのあんどんをともしに、はいったばかりでござります。それから、いまひとり、先ほど下手人めをお引き立てに参りました八丁堀のむっつり右門様とやらおっしゃるおかたが、おひとかたはいっただけでござります」
「ほほう、むっつり右門がたったひとりで参ったとな。あやつのそばには、おしゃべり屋のあいきょう者が今までしょっちゅうくっついていたはずじゃが、それを置き忘れてくるとは、むっつり右門も近ごろちっともうろくしたようじゃな。よしよし、もうたくさんじゃ。あまりそこからのぞかないほうがよろしいぞ」
微笑しいしい皮肉なことをいって、おやじを向こうへ去らしていたようでしたが、かたわらの手裏剣少年のほうへ振りかえると、さらに改まった質問が飛んでいきました。
「そなたの姉は、かるわざ一座で何をいたしおった」
「ついこのほどで始めたばかりでござりまするが、竹棒渡りをしてでござりました」
「なにッ、竹棒渡りとな! たしか、あのかるわざをやる者は、竹がすべらぬように、たびの裏へ石灰かみがき砂を塗っておくはずじゃが、この一座では何をつかいおるか」
「石灰でござりました」
「ほほう、さようか。道理でのう。ならば、そなたの姉のほかに、まだこの一座では、察するところ、たしかにほかにも竹棒渡りをする者があるはずじゃが、どうじゃ。いるか、いないか」
「はっ、ござりますござります! 梅丸様とおっしゃるかたと、竹丸様とおっしゃるかたと、おふたりほかに竹棒渡りがござります」
「なにッ、ふたりとな! いずれも娘どもか」
「はい。おふたりさまにわたしの姉を加えて三人が、実はこの娘かるわざ師一座の看板でござります」
「なるほどのう。では、少し立ち入ったことをあい尋ぬるが、きょうだいならば気のつかぬはずもあるまい。そなたの姉は、何文ぐらいのたびをおはきじゃったか存ぜぬか」
「存じてござります、よく存じてござります。わたしと同じ八文七分でござりましたゆえ、どうかすると、ふたりして一つたびをかわるがわるはき合うたことさえもござりました」
その一語をきくと、すでにもうそれだけで名人にはいっさいの見込みがついたもののごとく、
「なんでえ。おれがピカピカッと二、三べん目を光らすと、じきにもうネタが上がっちまうんだからな。われながらちっとあっけなさすぎるくれえだよ。ではひとつ、おめえらに目の保養をさせてやるかな」
いいつつ振り返って、大きく呼び招いたのはさっきの楽屋番でした。
「こりゃ、おやじ」
「へえい」
「わしは先ほどここへ下手人を召し取りに参ったむっつり右門のお師匠――というと少し口はばったいが、まま、それに近い者じゃがな、なにか右門めが見落としたところはないかと、せっかくこうして調べに参ったが、うち見たところ、やはり先ほどのあれなる娘が下手人と決まったのでな、引き揚げるついでに、と申さば腹がたつかも存ぜぬが、見らるるとおりわれわれは平生ぶこつなご番所勤めをいたす悲しさに、めったなことではあでやかな娘かるわざ師の曲芸なぞは拝見できぬ身じゃでな、せっかくここまで参ったついでの目の保養に、どうじゃろうな、梅丸竹丸ご両人のあでやかな竹棒渡りを一見させてはくれまいかな」
「へえい、そりゃもう、ぜひに見せろとおっしゃいますれば見せもいたしまするが、なにしろこの騒ぎのあとではござりまするし、それにもう夜ふけでござりますのでな、本人どもがなんと申しますか」
「そこをひとつ無理して頼むのじゃがな。べつに役人風を吹かすわけではないが、このとおり
「よろしゅうござります。そう事を割ってのおことばならば、いかにもてまえが申し聞かせましょう」
楽屋のほうへ行き去って、娘どもにその旨を伝えていたようでしたが、番頭としての職がらがものをいったものか、それとも奉行所の者が事を割って頼んだ目の保養という右門流の巧みな誘い出しがきいたものか、すぐさまにしたく万端の用意に取りかかった様子でしたから、名人はなにごとか深い計画ででもあるかのごとく、うそうそと覆面のうちに微笑しながら、舞台わきのうずら席の
と見て、もちろんお株を始めたのはいつものとおり伝六で、だが、相手は右門でなく善光寺辰でした。
「な、辰ッ、さっきだんながいっしょに苦労を分けろとおっしゃったから、兄がいに半分おめえにも分けてやるが、こういうのがだんなのおはこなんで、これまで、どのくれえおらあこの手で苦労させられているかわからねえんだから、うっかりしていておめえも化かされるなよ。いつだっても、このとおり、何をやぶからぼうにいいだすかわからねえのが、たった一つだんなの悪い病なんだからな、おめえもそのつもりでいるがいいぜ……だが、それにしてもまあ、ほんとうに、ちぇッ、ていいたくなるね。だんなのあのやにさがり方をよく見ろよ。平生は腹がたつくれえお堅いが、奇態とこういうふうないか者の娘っ子となるてえと、じきにだんなの風向きが変わるんだからな。どんなべっぴんどもだか知らねえが、たかの知れた奥山のやせ芸人じゃねえかよ。こんなのんきなまねをする暇があったら、はええことネタをあげちまえばいいものを、ほんとうにじれじれするじゃねえか。おめえまで誘い込まれて、ぽかんと口なんぞあけて見とれていたら、根こそぎ鼻毛を抜かれちまうぜ」
しきりとあいきょう者が一日の長を誇って、いやに兄分風を吹かしているのを、右門はくすくすと笑いわらい聞き流しながら、黙念としてしたくの整うのを待ちました。
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やがてのことに、まず舞台にはあかあかと何本かの
「へへえい。な、辰。こりゃどうもわりかたとおつな玉だぜ」
たかが奥山の芸人ふぜいと、今のさっきけいべつしきったそのあいきょう者が、まだ舌の根のかわかぬうちに自分から先にたって、ぽかんと見とれだしたのも笑止千万ですが、そのまに下座のおはやし連がひとわき高くジャカジャカと景気をつけて、いかにも奥山の芸人らしく歌いだしました。

なんの五千石主と寝よ。
けれども、わが捕物名人ばかりは、およそこういうところが品のできの違うところです。ふたりの手下がぽかんと妖花の芸に見とれているのをそこにほっておきながら、やにわにすいと立ち上がると、ずかずかと舞台の上にやっていって、
ところが、どうもこれがじつに意外中の意外なので、右門の足は九文七分であったのをさいわい、それを標準のものさしにして両名の白い粉の足跡を計ってみると、偶然なことに、梅丸竹丸いずれもが同じように九文三分くらいの大きさでしたから、こりゃいけねえ、というように、すっかりあてのはずれた面持ちでした。また、これは、いかな名人であっても、ことごとくあぐねきってしまうのが当然なので、少なくも事件の重大なかぎとなるべき、あの女親方のへやにうっすらと乱れ散っていた大きなほうの粉足跡は、梅丸竹丸両名のうちのどちらかが残したものであろうとにらみがついたればこそ、こうやって見たくもない竹棒渡りまでも演ぜしめたのに、しかるをいま両名の足跡を検分したところによれば、なんとも腹のたつ偶然なことには、両々等しく九文三分ぐらいの大きさを示していたものでしたから、せっかくの手がかりとなすべき努力も
「な、伝六ッ」
「えッ」
「めったなことはいうもんじゃねえよ。むっつり右門ももうろくしたなと、さっきひとごとのようにひやかしていたが、おれともあろうものが、こんなでかいネタを見のがすんだからな。うっかりしたせりふはきけねえものさ。その女親方の口にかみ切られている振りそでをよく見ねえな」
「何か、るすの間にそでの様子でも変わったんですかい」
「いいや、変わりゃしねえがね。見りゃ、桜の花が染めぬいてあるから、さっき見た竹丸の竹模様、梅丸の梅模様だったところから推しはかって、おそらくその振りそで衣装をつけていたかるわざ娘は桜丸とでもいう名だろうが、でけえネタを見のがしたというな、その片そでの一枚下だよ」
「下に何か手品のしかけでもありますかい」
「あるんだから奇態じゃねえか。ちょっと上のをまくってみなよ」
「よよッ。なるほど、下にもう一枚模様の違った衣装のすそみてえなものを食いちぎっておりますね。しかもこりゃ、さっき梅丸が着ていやがったやつとおんなじ梅模様じゃござんせんか」
「だから、右門もとんだもうろくをしたものさ。いくら梅と桜と紛れやすい模様だからって、これに気がつかねえようじゃ、われながら皆さまに申しわけがねえよ。だが、もうこうなりゃおれの畑だッ。ふたりとも、さっき見とれたべっぴんをじきじきに拝ましてやるから、ついてきな!」
いいつつ、ずかずかと押し入ったところは、いうまでもなく梅丸の楽屋べやです。ちょうど舞台を下がって、今の放れわざに一汗かいたものか、あらわな
「まてッ。この衣装にゃ、ちっと用があるんだッ」
いいつつ見調べていたようでしたが、と、――果然、その内前すそが五寸四方ほど食いちぎられていることが発見されましたので、なんじょう名人の目のさえないでいらるべき――いとも皮肉にからんだ真綿責めのことばが、じっくりと飛んでいきました。
「舞台じゃはかまをはいていたので、このすその傷に気がつかなかったが、顔に似合わねえとんだ放れわざをやんなすったものだね。今、こっちの正体も拝ましてやるから、とっくりごらんなせえよ」
いうや、ぱらり紫ずきんをはねのけて、秀麗かぎりない
「ほんもののむっつり右門は、こんな顔をしているんだ。さ、気つけ薬になるか、虫干しになるか、よっくごらんなせえよ」
ぎょッとなったのはむろんのことに梅丸ですが、しかるに、こやつがあでやかさにも似合わず、どうも強情でした。肉襦袢一枚の五体をわなわなと震わしたきりで、さらに口を割ろうとしなかったものでしたから、伝六があけっぱなしに始めました。
「じれってえだんなじゃござんせんか。どういうホシをつけなすったかしらねえが、割らなきゃ口を割るように、早いところ締めあげておしまいなせえよ」
「だめだよ」
「ちぇっ、べっぴんだから、おじけが出たんですかい」
「うるせえな。拷問火責めでものをいわするおれさまだったら、だれも右門党になんぞなっちゃくださらねえや」
いいつつ、[#「、」は底本では「、、」]微笑しながら、じろじろとへやのうちを見ながめていましたが、ふとそのときわれらの捕物名人の目についたものは、そこの壁に張られてあった次のごとき張り紙です。
「、座員、堅く厳守すべき条々のこと。
一、間食い、ないしょ食いいたすまじきこと。
二、夜ふかしいたすべからざること。
三、男員いっさい女座員のへやに立ち入るまじきこと、ならびにまた女座員、いっさい男員べやを犯すまじきこと。
以上の条々忘るべからず――娘かるわざ一座座長」
――だのに、なんという皮肉なことでしたか、それともまぬけのまぬけわざというべきでしたか、ちょうどその第三条の男員いっさい女座員のへやへ立ち入るまじきことと書いてある文句の下の、「当一座には、男芸人が何人いるか」
「木戸番道具方をのぞきますと、芸人と名のつく男は、このわたくしのほかに、百面相を売り物といたしまする
「なにッ、百面相の芸人とな!」
「はい。じつによく顔をつくりかえますゆえ、なかなかの人気でござります」
「何歳ぐらいじゃ」
「もう五十いく歳とやら承りました」
「そんな年で、若い男にも化けおるか」
「はい、別して、若化けが得意芸のようにござります」
「どこにいるか」
「つい、いましがた、向こうの男べやにうろうろとしていましたゆえ、まだいるはずにござります」
聞くや、じつに唐突な右門流でした。
「じゃ、伝六ッ、辰ッ、もうあっさりとしっぽを巻いて引き揚げようや。百面相の鶴丈先生とやらに、こんどは牛若丸かなんかに化けられちゃ、とてもおれにだって
言い捨てると、ゆうぜんと両手をふところにしながら、すうと表のほうに出ていってしまいました。
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けれども、表へ出るは出ましたが、帰るかと思いのほかに、ひらりと身をひるがえしながら、そこの楽屋口をふさぐようにおい茂っていた暗い木立ちの中にすばやく身を潜め入れましたものでしたから、ことごとくお株を始めたのは伝六です。
「ちょっと、ちょっと、だんな、だんな! 何をとち狂っていらっしゃるんですかい。そんなほうにけえり道ゃござんせんぜ。こっちですよ! こっちですよ」
「バカッ、声を立てるなッ」
しかりつけながら、何者かを待ちうけてでもいるような様子でしたが、と――それを裏書きするかのごとくに、あたりをうかがいうかがい、そそくさと楽屋口へ姿を見せた者は、黒い二つの影です。ひとりは紛れもなく男。あとはまたまさしく女――
と見るやいなや、すいと名人のからだがつばめのように両名の前へ立ちふさがったと思われましたが、同時に両手でぱッぱッともうあの草香流にものをいわせつつねじあげておくと、ずばりしかりつけました。
「バカ者どもめがッ。おおかたこう来るだろうと思うて、わざと引き揚げるように見せかけたんだッ。さ! こっちの梅丸でもいい。またはそっちの百面相でもいい! ほんもののむっつり右門にかかっちゃ、おめえたちの
ふたりして高飛びしようとした現場を押えられましたものでしたから、ついに強情娘も口を割ってしまいました。
「――まことに恐れ入りました。おめがねどおり、親方を殺した下手人は、いかにも、この梅丸でござります。と申しあげただけではさぞかしご不審でござりましょうが、実のところを申しますると、それもこれもみんな女のあさましいねたみからでござりました。もともとを申しますれば、わたしのほうがずっとまえから、この娘一座では姉分でもござりましたし、いくらかよけい人気もいただいておりましたのに、あの桜丸様がわたくし同様、竹棒渡りをいたしますようになりましてから、日に日に人気負けがいたしましたゆえ、そのことを親方さまに申しあげて、あすから役替えしていただくようにお願い申しましたところ、いっこうお聞き入れくださりませなんだゆえ、ついいさかいしているうちに、逆上いたしまして、ちょうど目の前に親方さまの
「よし、わかった、わかった。それから先は、おれがいちいちずぼしをさしてやろうか。そのとき親方が、おめえの衣装のすそを苦しまぎれに食い切ったところへ、物音をきいて桜丸がやって来そうだったゆえ、おまえが
「はい、おっしゃるとおりでござります。それゆえ、わたしが――」
「いや、言わいでもわかっているよ、わかっているよ。それゆえ、おまえがどこかへやのすみにでもうずくまって隠れているところへ、桜丸が知らずに駆け込んだので、親方がおまえと思いつめて、断末魔の前に桜丸のそでを食いちぎったんじゃねえのかい」
「はい。ですから、これさいわいと存じまして、騒ぎに紛れこっそりとへやを抜け出しまして、鶴丈さんの百面相をまんまと使い、桜丸様を罪におとしいれようとしたのでござりましたが、やっぱり……」
「ほんもののむっつり右門ほどには、化けきれなかったというのかい。あたりめえだよ。また、やすやす化けられちゃ、こっちがたまらねえからな。ところで、気にかかるなあその桜丸だが、こりゃ百面相ッ、どこへしょっぴいていったんだッ」
「それはその……」
言いもよっていたとき、とつぜん伝六がけたたましく叫びました。
「ね。だんな、だんな! だれが何を急いでいるのか、御用ぢょうちんをつけた早駕籠が、こっちへ飛んでめえりましたぜ!」
いううちに、そこへ御用と染めぬいたあかり看板をふりかざしながら、あわただしい駕籠が一丁近づいてまいりましたから、右門が鋭くきき尋ねました。
「ご番所のかたでござるか。それとも、どこぞ自身番のかたでござるか」
「あッ。右門のだんなさまでござりましたか! てまえは
「よし、わかった、わかった。名を桜丸といやしねえか」
「へえい。よくご存じでござりまするが、でも、妙なことがござりまするぞ。娘が申したところによると、あなたさまがこの小屋からお連れ出しなさりまして、吾妻河岸からやにわと大川へ突き落としたと申してござりまするぞ」
「そうかい。右門は右門だが、むっつり右門じゃねえ、ここにいるこの化け右門だよ。でも、突き落とされたのによく助かったな、だれか船頭でも拾ってくれたのかい」
「へえい。なにしろ、高手小手にくくされたまま、おっぽり込まれたんで、危うくおぼれようとしたところを、うまいこと
いっているまに、恐るるもののごとく駕籠のたれを上げて、ぐっしょりと全身ぬれねずみのままそこに姿を見せた者は、これぞいうまでもなく行くえ不明中の桜丸でした。しかも、その容姿の
「おう! 姉さまかッ」
声も喜びにおろおろと震えながら、ひしときょうだい左右から抱き合いました。
その美しい肉身の美しすぎる情景を、右門もともどもうれしそうに見つめていましたが、かたわらの町役人をかえりみるといいました。
「ちょうどいいつごうだ。ここのとが人どもをふたり、ついでに伝馬町まで送ってくんな」
言いおくと、すっぽり紫ずきんをいただきながら、さっさと足を早めました。
しかし、道を歩きながらしきりと首をひねりつづけたのは伝六です。あちらへこちらへと、道を踏み違えるほどひねりつづけましたものでしたから、名人が笑いわらいいいました。
「兄分らしくもねえ、あんまりどじなかっこうすると、こちらのちっちゃなお
「だって、よくまあだんなにゃ、しょっぱなから化け右門があの一座にいるとおわかりでござんしたね。あっしゃまた、あばたの敬公かだれかご番所の者が名をかたりやがったと思ってたんですよ」
「どじだな。そんなことぐれえ、初めっから眼のつかねえようでどうするかい。大きな声じゃいわれねえが、他人の名まえの手がらまでも横取りしたい連中はうようよいても、自分のあげたてがらにひとの名まえを貸してやるような、ご了見の広い者は、半分だってもご番所になんぞいねえじゃねえか。それも、ほかの者の名まえならだが、このごろちっとてがらをあげすぎるために、内々そねまれているおれの名まえなんぞ、ご番所のだれがかたるもんかい。さっきの手裏剣少年じゃねえが、少し逆上しているようだから、冷やっこいところを二、三杯見舞ってやろうか」
「いいえ、けっこうです、けっこうです。そんなもなあお見舞いいただくには及びませんが、でも、なんだってまあ、あのひょっとこおやじの百面相が、命とかけがえに片棒かつぐ気になったんでしょうね」
「そこがいわくいいがたしだが、いずれは娘のたいせつなものでもちょうだいができる約束でもあったろうよ。だから、梅丸もそこは人気
それにしても、女は魔物だな、といわぬばかりに、ややしばしことばをとぎっていましたが、やがてつぶやくようにいったことでした。
「――考えてみりゃ、きょうはお