昭和四年に発表せる創作・評論に就て
「山彦の街」に就いて
牧野信一
「山彦の街」を、前編だけで、完了し忘れたのを遺憾に思つてゐます。あれは僕の脳裡を不断に去来してゐる共和国の一片です。某君が、何に材料を得たか? と問うたが、材料は空想です。空想ではありますが、日常の見聞が幾分姿を変へてゐる部分もあります。あれには主に酒場の場面ばかりを、書きましたが、夫々独立したものとして(何うでも関はないが)次の機会には「競技場」「図書館」「議場」そして「浴場」などの光景を書きたく思つてゐます。
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