はしがき

竹久夢二




 少年達のため挿絵をかきながら、物語の方も自分でかいて見ようと思立おもいたって、そのころまだ私の手許てもとから小学校へ通っていた子供をめやすにかいたのが巻頭の数篇です。中学へ通うようになった時、「だれがいつどこで何をした?」をかいて見せました。これはフィリップがお手本になったのですが、「都の」の留吉とめきちにしても「たどんの與太よたさん」の與太郎にしても、みんな私自身の少年の姿です。「日輪草ひまわりそう」のくまさんも私の姿に違いありません。
 あとの方のお話は、雑誌の挿絵にそえたもので、少年の頃見たり聞いたりした話を思出おもいだしてかいたのです。
 姉妹篇「たこ」に対して「春」という一字をえらんだのです。「春」という字は音がほがらかで字画が好もしいため、本の名にしたわけです。
(千九百二十六年十月)





底本:「童話集 春」小学館文庫、小学館
   2004(平成16)年8月1日初版第1刷発行
底本の親本:「童話 春」研究社
   1926(大正15)年12月
入力:noir
校正:noriko saito
2006年7月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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