マイクロフォン
「新青年」一九二六年二月
国枝史郎
啓蒙的描写論、そういう物だって必要である。一作に就ての解剖的批評。そういう物だって必要ではある。しかし小酒井不木氏とか松本泰氏、江戸川乱歩氏、横溝正史氏、アーサー、リーヴ、チェスタトン、ビーストン、ウェルシーニンというような、代表的作家の人物批評は、是又大いに必要である。以上挙げた日本の作者等は(勿論その他にも著名な人はあるが)人物評論をされても可い程、探偵小説界では働いている。どうだろう誰か此方面に、鍬を打ち込む者は無いか。作品を通して作者を見る――作者を通して作品を見る。これは両々ともなう可きものだ。それにもかかわらず今日迄、よい作者論が出ていない。いささか不満の点である。
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