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「新青年」一九二六年二月

国枝史郎




 啓蒙的描写論、そういう物だって必要である。一作についての解剖的批評。そういう物だって必要ではある。しかし小酒井不木氏とか松本泰氏、江戸川乱歩氏、横溝正史氏、アーサー、リーヴ、チェスタトン、ビーストン、ウェルシーニンというような、代表的作家の人物批評は、是又これまた大いに必要である。以上挙げた日本の作者等は(勿論その他にも著名な人はあるが)人物評論をされてもい程、探偵小説界では働いている。どうだろう誰か此方面に、鍬を打ち込む者は無いか。作品を通して作者を見る――作者を通して作品を見る。これは両々ともなうきものだ。それにもかかわらず今日まで、よい作者論が出ていない。いささか不満の点である。





底本:「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」作品社
   2005(平成17)年9月15日第1刷発行
底本の親本:「新青年」
   1926(大正15)年2月
初出:「新青年」
   1926(大正15)年2月
入力:門田裕志
校正:Juki
2014年4月10日作成
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