お背戸の 親なし
はね釣瓶
風が吹く
日が暮れた
鶏 さがしに
往かないか。
螢の提灯光つてる
ぴかん ぴかん光つてる
早くみんなで追つかけよう
螢の提灯考へた
ぴかん ぴかん考へた
早く提灯とつちまい
螢の提灯
つーん つーん消えちやつた
早く蝋燭見せてやれ。
雀が啼いた
足で 山椒踏んで
山椒の木で啼いた
豆も 小豆も
麦も 小麦も
みな たれさがる
山椒 山椒の木で
雀が啼いた
山椒 山椒踏んで
山椒の木で啼いた
わかれた
物言うて くだされ
日傘
お背戸に 風吹く
篠籔は
烏に 喰はれた
母さん わたしも
日傘
物言うて くだされ
日傘
九官鳥に
君が代唄はせよう
「千代に八千代」に
唄はせよう
君が代唄はせよう
「
唄はせよう
わたしも
君が代唄ひませう
「レ・ド・レ・ミ・
ソ・ミ・レ」と
唄ひませう。
お背戸の お背戸の
赤
狐の お
聞かせませう
織りました
親狐
信田の お背戸の
ふるさとで
子供に こがれた
親狐
お背戸の お背戸の
赤蜻蛉
来てとまれ。
あつちの町と
こつちの町と
太鼓橋かけた
赤い
みんなで渡らう
あの子も 渡れ
この子も 渡れ
仲よく渡れ
虹の橋 高いぞ
手手ひいて渡れ。
人形屋の
むすんで
髪結つてた
人形にも
いい髪
結つておやり
元結で
むすんで
結つておやり。
雨夜の
蛇の目傘
化け茶釜
お寺の釣瓶も
化け釣瓶
雨夜に
傘
さして来た。
燕の
洒落母さん
そろひの
買つてやろ
母さん燕は洒落母さん
雨降り雲は
なぜ来ない
トマト畑が
みな枯れる
トマト畑に
じりりじりりと
照らしてる
雨降り雲は
なぜ来ない
トマト畑が
みな枯れる
トマト畑の
百姓は
赤いトマトを
眺めてる。
石の地蔵さん
居ねむりしてた
にこりにこりと
居ねむりしてた
烏アときどき
団子見て啼いた
石の団子で
石の地蔵さん
駄目団子もつてた
にこりにこりと
駄目団子もつてた。
(茨城でうまれた文ちやんの唄)
ここの屋敷は
空屋敷
元の屋敷も
空屋敷
ここの畑は
桐畑
文ちやんうまれた 茨城の
背戸の畑も
桐畑
ここの
日和下駄
文ちやんうまれた 茨城の
お夏娘も
日和下駄
ここの柱は
木の柱
文ちやんうまれた 茨城の
元の
木の柱
こをとろことろ
雲雀の子とろ
畑の中に
菜種の花は
ならんで咲いた
ならんで咲いた
こをとろことろ
親父は留守だ
雲雀の子とろ。
赤牛 黒牛
モー モー
あつち向いちや
モー モー
こつち向いちや
モー モー
モー モー
角が生えてる
モー モー。
胡麻の木畑は
皆 はねた
十六
皆 はねた
雀が畑に
かくれてる
話して
ぴュ ぴュ 風が
山から
吹いた
畑 に
吹いた
畑の中の
葱坊主
寒いな。
鵞鳥に腹掛け
かけさせて
みんなで遊びに
つれてゆこ
駈けて通ろ
みんなで ならんで
駈けて通ろ
鵞鳥も一緒に
駈けるだろ
長い頸ふりふり
駈けるだらう。
大漁だ
おいらが 父さん
いつ帰る
聞かせて くれぬか
山椒の木。
片親 ない子は
背戸で泣く
雀は 門で啼く
背戸で啼く
狐は 野で啼く
山で啼く
門で泣け 門で泣け
山で啼く狐が
背戸へ来るぞ
背戸で泣け 背戸で泣け
明日の朝は
山で啼く狐が
門へ来るぞ。
烏の
チンバタ チンバタ
機織つてた
木綿の腹掛 機織つてた
泣く児に
腹掛買つてやれ
烏の小母さん 機織つてた
チンバタ チンバタ
機織つてた
泣く児に
綿入買つてやれ。
つめたからう
ぐんぶぐんぶ水飲んで
つめたからう
家鴨に赤いマント
買つて着せよう
赤いマント 可愛から
買つて着せよう
マント屋の 赤いマント
買つて着せよう。
一本榎
親鳩 子鳩
ならんで見てた
のつぽのつぽ榎
天までとどけ
母さん里へ
餅
小鳥屋の店は
チツチク チツチク店だ
小鳥屋のお
目くちやれお父さん
小鳥のお
朝寝ンぼお母さん
可愛い鳥だ
小鳥屋の店で
チツチク チツチク啼いてた。
森の中の 一本桜に
花が咲きました
朝晩 小鳥が来て
啼いてをりました
一羽の小鳥は
赤い足でした
一羽の小鳥は
青い羽根でした
どつちの小鳥も
いい声でした。
親
今夜は
闇夜だ
ぐつり わつり
和尚は
しぶしぶ提灯出かけたぞ
親貉 子貉
お月さんに
化けろ
親鳩 子鳩
ほんとの
畑の中で
啼いてた 堂鳩
お寺の背戸に
鉄砲
親鳩 子鳩
屋根から見てた。
ペンペン草は
どこまでのびる
港の雨は
パラパラ雨だ
汐がれ浜の
小笹にたまれ
小笹もゆれろ
港もゆれろ。
雉子が啼いた 雉子が啼いた
山で啼いた
茨に刺されて
雉子が啼いた
雉子が言ふた 雉子が言ふた
山で言ふた
足袋縫ふて はきませうと
雉子が言ふた。
ここの家は
引つ越して
雨戸が 締つてをりました
お庭の お庭の
真中に
ここの家は
引つ越して
雨戸が 締つてをりました
お庭の お庭の
木の上に
雀が遊んでをりました。
鈴虫 鈴虫
チンチロリン
鈴 どこから持つて来た
来るときに
鈴虫 鈴虫
チンチロリン
鈴 ちよつくら貸してみろ
貸したら返さぬ
あーかんべ
番頭に負はせてやつちやつた。
ちツ ちツ
啼いてる
畑に
赤牛
立つてたぞ
雨こんこ
パラパラ
降つて来た
ささせる
こつちへ
象に
うれしがろナ
赤い帽子 かぶせたら
うれしがろナ
象に靴はかせたら
あるきだそナ
象の足 太いから
重たかろナ
象の眼は
ねむたかろナ
象の鼻 長いから
日が暮れるナ。
一丁目の子供
駈け駈け 帰れ
二丁目の子供
泣き泣き 逃げた
四丁目の犬は
足長犬だ
三丁目の角に
こつち向いてゐたぞ
五兵衛さん娘が
柿 持つてた
おいらに見せ見せ
柿 持つてた
隣の ぼんちも
柿 持つてた
おいらに見せ見せ
柿 持つてた
柿 買つて食べたい
向ふの
銭 おくれ
おいらが
おいらにだまつて なぜ死んだ
柿 おくれ。
糸切虫に
どの糸切らせう
ほぐれた糸を
よりより切らせう
糸切虫は
赤い糸切つた
小さな口で
ぽきんと切つた。
隣の家は
昨日も るすだ
人橋かけろ
どんど橋
かけろ
姉上さまは
馬に乗つて
行つた。
ころころ ころころ

ころころ ころころ
鳴いてゐる
風呂場で 風呂炊く
風呂の火が
煙くて 煙くて
鳴いてゐる
ころころ ころころ

ころころ ころころ
鳴いてゐる
甕からこぼれた
甘酒を
飲ませておくれと
鳴いてゐる。
おら
畑さ 提灯 ぶらさげた
となりの 提灯
酸漿提灯
畑さ 提灯 ぷらさげた
畑の 提灯
酸漿提灯
夜昼 提灯 ぶらさげた
カツコカツコ帰れ
お山の烏
カツコカツコ帰れ
鳩ポツポ啼いた
ポツポポツポ啼いた
お山の烏
カツコカツコ帰れ。
山から
タツチクだ
海から
タツチクだ
タツチク タツチク タツチクだ
タツチク タツチク タツチクだ
青い青い海を
見てたが
いいか。
赤い帯しめた
赤い
どなたと行つた
一人で行つた
どこまで行つた
どなたも知らぬ
狐に聞いた。
鶏さん
鳥屋に買はれて
ゆきました
大寒 小寒で
寒いのに
雛と わかれて
ゆきました
雛に わかれた
鳥屋で さびしく
暮すでせう。
十五夜お月さん
御機嫌さん
婆やは お
十五夜お月さん
妹は
田舎へ
十五夜お月さん
も一度
わたしは逢ひたいな。
今夜は鼬の嫁入りだ
鼬に
長持貸してやれ
篠籔に
鼬が提灯つけてゐた
厭の うしろの 篠籔は
霜枯れ篠籔
おお 寒い
今夜は鼬の嫁入りだ
鼬に
駒下駄貸してやれ。
烏猫 烏猫
眼ばかり光る
烏猫
のろり のろり 歩いてる
ほんとに狡い
烏猫
尻尾の長い
烏猫
昼寝しろ
ぐうぐうぐう昼寝しろ
火箸が ぐんにやり曲るほど
たたいてやるから
昼寝しろ。
猫の
百
家建てろ
石で たたんだ
家建てろ
煉瓦で たたんだ
家建てろ
猫の小母さん
木兎さん
金貸した
百畳 畳が出来て来る
どんどん踏んでも踏みきれぬ
朝晩踏んでも
踏みきれぬ。
港の船は
カンカラ カンカラ カンカラだ
ざんぶ ざんぶ 波に
ゆられてゐたぞ
河原の石も
カンカラ カンカラ カンカラだ
どんか どんか 風に
吹かれてゐたぞ
カンカラ カンカラ カンカラだ
長い 長い 顔で
水飲んでゐたぞ。
兎の足は
耳 切つてつなご
縛つて切ろか
だまして切ろか
跛だ 跛だ 跛だナ
兎に話すと逃げだすぞ
耳
逃げだすぞ
誰にも黙つて番してろ
耳 見ながら
番してろ。
雨降りお月さん
死んだ
下駄くだされ
死んだ母さん 後母さん
親孝行するから
足袋くだされ
足が
死んだ母さん 後母さん
奉公にゆきたい
味噌くだされ
喉に
死んだ母さん 後母さん。
雀のお
どこでせう
雀に聞いても
かくしてる
子雀 だまして
聞きませう
学校のうしろの篠籔は
わたしのお家と
云ひました。
親
トツトトツト駆けろ
下駄買つてはかせう
親鶏 子鶏
トツトトツト駆けろ
ニヤアニヤア猫も
下駄 買つて来たぞ。
隣の
たのんでた
小豆の
赤飯
鼬は あかんべ
仕てたツけ
隣の
よい父さん
鼬に 留守番
たのんでた
小豆の飯は
赤飯
鼬が 留守番
仕てたツけ。
蜂 蜂 飛んで来ナ
ちつくり針 置いて来ナ
いつさツさアと遊ぼ
蜂 蜂 飛んで来ナ
ちつくり針 置いて来ナ。
雁が 帰る
雁が 帰る
雁が
帰る
山が
海が 暴れた
風で 暴れた
帯になつて
紐になつて
雁が帰る
一機 織つた
カンカラ コン
カンカラ コン
田舎は 涼し
カンカラ コン
カンカラ コン
機織虫と
一緒に 遊ぼ。
昔、或所の田甫 に古狐がゐました。若い女に化けて旅人をだまさうとした噺 があります。
田甫の狐は
赤い櫛さして
赤い帯しめて
三味線ひいてた
又、子供をだまさうとした噺もあります。
田甫の狐は
赤い 風船
飛ばした
青い 風船
飛ばした
畑の中で小酒盛をしてゐました噺もあります。
田甫の狐は
畑の中に
河童の
小酒盛してた。
姉さんと
青い空 青いから
見てゐませう
出来たから
母さんゐなくも
ゐられるわネ
青い空 見ておゐで
青い空に
夜になると お星さま
出て来るのよう
母さん 帰りが
遅いときは
待つてゐませう。
空ア火事だ 梯子出せ
頭さ
嘘なら 狸に
聞いて見ろ
狸に聞いたら
嘘なら
聞いて見ろ
こんやは 蚯蚓の行列だ
狸も
嘘なら 地蔵さんに
聞いて見ろ
地蔵さん 太鼓を買つて来た
ドドンコ ドンドン叩いてる
狸も一緒に 叩いてる
嘘なら 黙つて口出すな。
お寺の竹籔
お小僧が 掘つても
孟宗の竹籔
お弟子が 掘つても
孟宗の竹籔
掘つても 掘つても
孟宗の竹籔
お弟子が あきれて
鍬 投げた
お小僧も あきれて
鍬 投げた。
じんぐ じんぐ 掘つても
孟宗の竹籔
どこまで掘つても
孟宗の竹籔
よくよく これはと
鍬 投げた。
そろそろ 踏んでも
孟宗の竹籔
ヤンヤと 踏んでも
孟宗の竹籔
踏んでも
孟宗の竹籔
和尚さん 駄目だと
鍬 投げた。
お手
毬ついて
二人で仲よく
遊びませう
あなたも
はいといで
わたしも 草履を
はいて来よう
あなたの
お煙草盆
わたしの 髪も
お煙草盆
お手毬ついて
毬ついて
二人で仲よく
遊びませう
遊びませう
仲よく 仲よく
遊びませう。
今夜は 河童の
お祭だ
乗つて来らア
泣く子は 河童に
お祭ア 太鼓で
押して来た
泣く子に
なめらせろ。
寒い日が
続いた
ぽかり ぽかり
日が照れ
山から海から
日が照れ。
隣の
小豆 一升
煮てた
てつこ盛つて
食べた
三毛猫ア馬鹿だぞ
髯に
火がはねた
田甫の
早く
早く
起きろ
子供の
ぱつた
ぱつた
遠い遠い国へ
飛び
飛び
往つた。
烏 なぜ啼くの
烏は山に
可愛七つの
子があるからよ
可愛 可愛と
烏は啼くの
可愛 可愛と
啼くんだよ
山の古巣に
行つて見て御覧
丸い眼をした
いい子だよ。
こんこん 狐に
まはされた
娘は
帰らない
今夜も 河原で
啼け 千鳥
ゆつさゆつさ
小笹に ゆられて
ゆつさゆつさ。
田甫で 啼いた
田甫の土を
踏み踏み 啼いた
ホーホー鳥も
お山で 啼いた
お山の森に
隠れて 啼いた
もう日が暮れる
お
泣く子は
帰れ
雀と帰れ
一軒家の
背戸に
雪五合降つて来た
山の 山の
奥の
雪降り小女郎
一里も 二里も
雪
飛んで来た。
太郎作どんには
姉さまは
太郎作どん家の 柿の木さ
朝晩 かかつて
ゐたんだぞ
次郎作家の鼬の子 『
次郎作どんには
内証だぞ
太郎作どん家の
次郎作どん家の 鶏雛と
木小屋さ あがつて
ゐたんだぞ。
鼻黒鼬
『
留守番すべから 往つてごぜえ
だまされ太郎作
『たしかに 留守番
たのんだぞ
太郎作
『鼬奴 来たらば
なじよにしべえ
鶏の親父
『
遊んでろ
鼻黒鼬
『うまいぞ
太郎作ア来たても話すなヨ
鼻黒鼬の子供
『
追つかけらア
柿の木の上の雀
『己らは なんにも
知んねえぞ
厩の馬
『己らも なんにも
知んねえぞ
背戸籔のみそさざい
『雛鶏ア追はれて逃げたつけ
尻餅つきつき逃げたつけ
井戸端の釣瓶
『太郎作どんてば戻らつせえ
この事 見たらば腰ア抜けべ。
郷土の人と土とに親みの多い二三の方言が、本書童謡中にとりいれてあります。たとへば、「背戸」(第一頁其他)とは家の裏のことです。「てつこ盛つた」(一四五頁)とは、山盛りに盛つたと云ふ意味です。又「雪降り小女郎」(一五五頁)とは、東京で云ふおほわたこわた(背に白き粉のある小虫の名)のことです。晩秋の曇つた日などに多く、群つて飛びます。私達の地方(茨城県の北隅)ではこの虫が飛ぶと、軈て初雪の降るしらせだと云つてをります。