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図書カード:No.2287

作品名:眠りの森の王子
作品名読み:ねむりのもりのおうじ
原題:The Sleeping Prince
著者名: ラティガン テレンス 

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作品データ

分類:NDC 932
作品について:眠りの森の美女(The Sleeping Beauty)からもじった題名。魔力によって眠らされて、真の恋人である王子の出現と、その接吻によって初めて目覚める美しい王女の話、を、男女を逆にしたもの。「王子」は、カルパチアなるバルカンの大国の摂政。普通ならば、この主人公は、「ローマの休日」のように、毎日の儀式、客の接待、法律の承認など、雑務でうんざり、何とかしてここから抜け出たいと願っている国主、であるのだが、これは逆。国を切り盛りするのが大好き。色恋ざたは限られた1時間ですませて、さっさとまた仕事に戻りたいという、野暮でいやな男。イギリス王の戴冠式に出席したついでに、芝居を見、ある女優に目をつけ、情事に及ぼうとするが、この女優が全く逆の指向。情事に至るまでには、ジプシーの音楽、香水の香り、一つ一つ消えてゆくあかり、素晴らしい誘惑の台詞、を必要とする。仕方なく、男はその儀式を済ませるが、男の全く驚いたことに、今度は女の方がすっかり本気になる。その熱心さにほだされて、「野暮ないやな男」から次第に「いい男」、いや、「かなりましな男」にまで変形されて行く。ラティガンが非常に喜んだことには、ローレンス・オリヴィエが演出と摂政役を引き受け、その妻ヴィヴィアン・リーが女優を演じることに決まった。初めは喜んだ彼であったが、「野暮な男」摂政をオリヴィエが出来るか、後にひどく心配になった。オリヴィエは跛でせむしのリチャード三世でさえ、非常な性的魅力をもって演じ、顰蹙を買った(ever to disgrace a stage)ほどだったのである。それに最近この夫妻は、「アントニーとクレオパトラ」に出て好評を博したばかりであり、彼の「軽い気持ちで作った芝居(trifle)」が二人の大物に相応しくないことは明らかだと感じたのだ。しかし、オリヴィエが「いやな男」になれるかという心配はラティガンがドレス・リハーサルの楽屋に立ち寄った時、いっぺんに消え去った。楽屋のカーテンの前には、少し貧血ぎみの、唇を横一文字に結んだ、面白みの全くない……右の目にかけた片眼鏡の奥で淋しそうな目が光っていおる男、が立っていたのだ。初日は1953年11月5日フェニックス劇場で行われた。珍しくサマセット・モームが来ており、その他、デイヴィッド・ニヴェン、ノエル・カワード、ジョン・ミルズが観劇。翌日の新聞評はさんざんであった。デイリー・エクスプレスのジョン・バーバーは、「オリヴィエには勿体ない、つまらない芝居(beneath Olivier s talents)」である。イヴニング・スタンダードのミルトン・シュールマンは「かけるに値しない芝居(alomost aggressively unimportant)」タイムズは「鉛の底で出来た長靴(leaden soled boot)」と書いた。その後、イートン・スクエアでラティガン主催のパーティーがあった。オリヴィエは立ち上がり、約百人の聴衆を前にして言った。「役者として妻及び私は、そして演出家として私個人は、テリー、あなたの芝居を滅茶滅茶にしてしまった(mucking up your play)ことにお詫びを申し上げる」と。ラティガンは飛び上がるようにして立ち上がり言った。「とんでもない。お二人に謝るのは私の方だ。こんなつまらない馬鹿な芝居(such a trivial little play)を書いて、申し訳なかった」と。カワードが立ち上がって言った。「君たち全てに代って私は言う。いいですか。私は作者、演出家、役者として、滅茶滅茶に書き、滅茶滅茶に演出をし、滅茶滅茶に演じ、そしてまだ、生き残っているのです」と。これ以後も日曜の新聞評は相変わらず悪いものばかりだった。しかし、客の入りはそれに全く影響されることなく、「ブラウニング版」のダブルビルが収めた大成功を上回る勢いであった。それはオリヴィエ夫妻の契約が切れるまで続いた。(この「眠りの森の王子」は274回のロングランであった。この274回でオリヴィエ夫妻の契約が切れた。)(St. Martin s Press社, Geoffrey Wansell著 Terence Rattiganによる。能美武功、平成11年5月31日記)
文字遣い種別:新字新仮名
備考:

作家データ

分類:著者
作家名:ラティガン テレンス
作家名読み:ラティガン テレンス
ローマ字表記:Rattigan, Terence
生年:1911-06-10
没年:1977-11-30
人物について:Terence Mervyn Rattigan (1911-1977)イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学んで外交官を志したが、劇作に興味をもって学業を中断。喜劇「涙なしのフランス語」(1936)が処女作。ここに父親との関係、学業を中断した経緯、などが盛り込まれている。「シルヴィアって誰」(1950)にも彼の青年期の親子関係が書かれていて、面白い。
劇団「昴-三百人劇場」では時々ラティガンのものが演じられている。現在(平成10年)までに次のものあり。
●昭和54年 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 新村礼子 山口哲也 久保田民絵 鳳八千代 西本裕之 加藤和夫 北村総一郎 吉井公一
●昭和58年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 森脇操 山本勝彦
●昭和60年9月 ウィンズローボーイ(Winslow Boy)福田逸訳・演出 簗正昭 久米明 北島マヤ 山口嘉三
●平成1年2月 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 中山有子 知念寛子 松下丈司
●平成1年7月 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 樋口昌弘演出 原聖子 中山有子 松下丈司
●平成5年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 信正小百合 石田博英 松谷彼哉
商業演劇で「王子と踊り子(Sleeping Prince)」(権謀術数に明け暮れるカルパチアの王が、アメリカの踊り子と知りあい、愛に生きる生活に目覚めるまで)が、ミュージカルとして演じられた。(太地真央 益田喜頓 他)
尚、映画化されたものは下記。

1.銘々のテーブル(日本での題名「旅路」)バート・ランカスター、リタ・ヘイワース、デイヴィッド・ニヴェン、デボラ・カー主演
2.眠りの森の王子(日本での題名「王子と踊り子」)ローレンス・オリヴィエ、マリリン・モンロー主演
3.シルヴィアって誰(原題 The Man who loved redheads) モイラ・シェイラ主演
(平成11年5月17日 能美武功 記)
wikipediaアイコンテレンス・ラティガン

分類:翻訳者
作家名:能美 武功
作家名読み:のうみ たけのり
ローマ字表記:Nomi, Takenori

底本データ

工作員データ

入力:能美武功

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