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図書カード:No.2293

作品名:銘々のテーブル
作品名読み:めいめいのテーブル
原題:The Separate Tables
著者名: ラティガン テレンス 

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作品データ

分類:NDC 932
作品について:一幕物二つ、即ち「窓際のテーブル」と「七番目のテーブル」から成り立っている。「窓際のテーブル」は、左翼系新聞のコラムを書いて生活しているジョン・マルコムとその昔の美人妻、アン・シャンクランドの話。ジョンは妻に暴力をふるった為、警察沙汰になり、将来首相にもと期待されていた地位を棒に振ってしまい、半分老人ホームのようなしがないホテルで暮らしている。ホテルの支配人ミス・クーパーに同情され、二人は親しくなっているが、結婚には踏み切れない。そこに偶々、昔の妻アンがやって来て、よりが戻りそうになるが……という話。「七番目のテーブル」は、それから一年半後の夏、同じホテルでの話。気位の高いレイルトン・ベル夫人の娘シビルは精神的に弱いため結婚も出来ずオールド・ミスになっている。しかし何故か、退役軍人ポロック少佐とはうまがあう。少佐も気の弱いところがあるからである。母親は二人が口をききあうのも苦々しく思っている。少佐はある時、映画館で痴漢まがいの行為をし、警察沙汰になり新聞にも載ってしまう。ホテルの長期滞在客が集まり、このいかさま少佐を追い出すべきかどうか議論し、ついに……という話。第一と第二の主人公、女主人公は同じ役者が演じる。つまり、荒々しく、すぐ大声で怒鳴るジョンと、常に嘘を語り、おどおどしながら暮らしているポロックを、同一男優が、美人で勝気で、これ見よがしに自分の美貌を誇るファッション・モデルのアンと、人前に出るのも怖がる内気なシビルを、同一女優が演じる。ラティガンは最初、原稿を興行主ミッチェルとローレンス・オリヴィエに送った。二人とも非常に気にいる。オリヴィエは妻のヴィヴィアンと主役をやりたいので、18箇月待ってくれ、と書く。リチャード三世の映画化の仕事が入っていたからである。ラティガンは、それならロンドン公演が終わった、ニューヨーク公演で頼む、と返事する。1954年7月半ば、検閲を受ける為、ロード・チェンバレンに提出。二つとも台詞のよさを絶賛される(impecable taste in dialogue)。特に二番目のものは「名作(a little masterpiece)」であると。演出は一時不仲であったピーター・グレンビルが受け持った。この時期にはよりが戻っていたのである。二人はエリック・ポートマンを主役を当てることににすぐ意見が一致し、ポートマンもすぐ承諾した。女主人公は、デイヴィッド・リーンの新しい妻ケイ・ウォルシュに決まった。しかし二週間のリハーサルで、ラティガンもグレンヴィルも、ウォルシュでは駄目だと気づく。すぐ代りを捜さねばならない。ラティガンに迷いはなかった。ローレンス・ハーヴェイの妻マーガレット・レイトンである。ラティガンはもう以前から、レイトンを役者として尊敬していた。レイトンは31歳、アン、シビル、どちらにもぴったりである。レイトンは二週間以上考慮した結果、地方巡業に出ることを承諾した。彼女がラティガンの芝居に出るのはこれが初めてである。1954年9月22日セント・ジェイムズ劇場で初日が行われた。批評家は二番目の話に重点を置いた。その最後の場面、ポロックがホテルの住人から許され、名誉を回復する点にである。サンデー・タイムズのハロルド・ホブソンは書いた。「第二の芝居はラティガンの傑作である。ここで彼は、彼独特のペーソス、ユーモア、そして完璧な英語で……最近他人を簡単に誹謗し、それがまた容易に絶望へと導かれる風潮に抗して……取り返しのつかない不幸、致命傷は、存在しないのだ、と強く主張してくれている」と。すべての批評家が褒めた訳ではない。ジョン・バーバーは、「中流の人々の孤独を顕微鏡的視野で眺めた」ことは認めるが、二つの芝居とも、傷のある(flawed)作品である」と。オブザーバーのケネス・タイナンは、ラティガンを終始貶しまくった男であるが、「少佐の痴漢行為は、単なるいちゃいちゃ(flirtation)ですまないものがあると思う」と当てこすっている。タイナンの批評が出た翌日、ラティガンはニューヨークのフリードマンに電報を打った。「日曜の新聞はタイナンを除いていづれも良好。客の入りはよく、金銭的には非常に潤う様子」と。なお、映画は日本での題名「旅路」。ジョンをバート・ランカスター、アンをリタ・ヘイワース、ポロックをデイヴィッド・ニヴェン、シビルをデボラ・カーが演じている。この映画でニヴェンはオスカー主演男優賞を、またホテルの女支配人クーパーを演じたウェンディー・ヒラーがオスカー助演女優賞を得た。以下、映画化されたものに対する能美の感想。映画は二つの話を一つに纏め、同時進行にしているため、原作を知っているものには面白くない。特に原作では、アンが「ホテルに来たのは偶然である」と強く言い張り、それが露見した時、ジョンが怒る。映画では、故意にやって来たことは最初からアンは認めており、その目的が、ジョンとクーパーとの間を裂かんが為であると、ジョンが邪推し怒る。映画のこの筋立ては面白くない。(この「銘々のテーブル」は726回のロングランであった。ニューヨークでの公演もポートマンとレイトン。オリヴィエ夫妻の登場はなかった。)(St. Martin s Press社, Geoffrey Wansell著 Terence Rattiganによる。能美武功、平成11年6月2日記)
文字遣い種別:新字新仮名
備考:

作家データ

分類:著者
作家名:ラティガン テレンス
作家名読み:ラティガン テレンス
ローマ字表記:Rattigan, Terence
生年:1911-06-10
没年:1977-11-30
人物について:Terence Mervyn Rattigan (1911-1977)イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学んで外交官を志したが、劇作に興味をもって学業を中断。喜劇「涙なしのフランス語」(1936)が処女作。ここに父親との関係、学業を中断した経緯、などが盛り込まれている。「シルヴィアって誰」(1950)にも彼の青年期の親子関係が書かれていて、面白い。
劇団「昴-三百人劇場」では時々ラティガンのものが演じられている。現在(平成10年)までに次のものあり。
●昭和54年 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 新村礼子 山口哲也 久保田民絵 鳳八千代 西本裕之 加藤和夫 北村総一郎 吉井公一
●昭和58年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 森脇操 山本勝彦
●昭和60年9月 ウィンズローボーイ(Winslow Boy)福田逸訳・演出 簗正昭 久米明 北島マヤ 山口嘉三
●平成1年2月 海は青く深く(Deep Blue Sea)臼井善隆訳 樋口昌弘演出 中山有子 知念寛子 松下丈司
●平成1年7月 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 樋口昌弘演出 原聖子 中山有子 松下丈司
●平成5年 銘々のテーブル(Separate Tables)小田島雄志訳 中西由美演出 信正小百合 石田博英 松谷彼哉
商業演劇で「王子と踊り子(Sleeping Prince)」(権謀術数に明け暮れるカルパチアの王が、アメリカの踊り子と知りあい、愛に生きる生活に目覚めるまで)が、ミュージカルとして演じられた。(太地真央 益田喜頓 他)
尚、映画化されたものは下記。

1.銘々のテーブル(日本での題名「旅路」)バート・ランカスター、リタ・ヘイワース、デイヴィッド・ニヴェン、デボラ・カー主演
2.眠りの森の王子(日本での題名「王子と踊り子」)ローレンス・オリヴィエ、マリリン・モンロー主演
3.シルヴィアって誰(原題 The Man who loved redheads) モイラ・シェイラ主演
(平成11年5月17日 能美武功 記)
wikipediaアイコンテレンス・ラティガン

分類:翻訳者
作家名:能美 武功
作家名読み:のうみ たけのり
ローマ字表記:Nomi, Takenori

底本データ

工作員データ

入力:能美武功

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