新らしい女は今迄の女の歩み古した足跡を何時までもさがして歩いては行かない。新らしい女には新らしい女の道がある。新らしい女は多くの人々の行止まつた処より更に進んで新らしい道を先導者として行く。
新らしい道は古き道を辿る人々
新らしい道は何処から何処に到る道なのか分らない。従つて未知に伴ふ危険と恐怖がある。
未だ知られざる道の先導者は自己の歩むべき道としてはびこる刺ある茨を切り払つて進まねばならぬ。大いなる巖を切り崩して歩み深山に迷ひ入つて
知られざる未開の道はなを永遠に黙して永く永く無限に続く。然も先導者は到底永遠に生き得べきものでない。彼は苦痛と戦ひ苦痛と倒れて、此処より先へ進む事は出来ない。かくて追従者は先導者の力を認めて新らしき足跡を辿つて来る。そして初めて先導者を讃美する。
然し先導者に新らしかりし道、或は先導者の残せし足跡は開拓しつゝ歩み来し先導者にのみ新らしい道である。追従者には既に何等の意義もない古き道である。
かくて倒れたる先導者に代る先導者は更にまた悲痛に生きつゝ自己の新らしき道を開拓しつゝ歩いて行く。
新らしきてふ意義は独り少数の先導者にのみ専有せらるべき言葉である。悲痛に生き悲痛に死する真に己を知り己を信じ自己の道を開拓して進む人にのみ専有さるべき言葉である。何等の意義なき
先導者は
先導者は先づ何よりも自身の内部の充実を要する。斯くて後
先導者は開拓しつゝ進む間には世俗的の
先導者としての新らしき女の道は
[『青鞜』第三巻第一号附録、一九一三年一月号]