冬の歌
三富朽葉
古家を洩れて
蒼い夕をおとづれる
沈黙の煙の翅。
匍ひ廻る霧の奥に
森や山が闇を語つてゐる。
ほそぼそと銀を乱す
蜘蛛の網の
湿り気を吐く糸目にまつはつて
苦しい死を訴へる羽虫のなきがら。
こごえた冬のうろつくところ
欝陶しい魂の旅が始まる……
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社
1970(昭和45)年4月15日初版発行
1979(昭和54)年11月20日新訂版発行
底本の親本:「三富朽葉詩集」第一書房
1926(大正15)年10月15日発行
初出:「自然と印象 第九集」自由詩社
1909(明治43)年2月1日発行
入力:hitsuji
校正:きりんの手紙
2023年7月10日作成
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