手紙

慶応元年十月三日 池内蔵太あて

坂本龍馬




去月二十九日上関に薩の(胡)蝶丸にて参りたり。然るに此度の用事は云々、先づ京師のヨフス(様子)は去月十五日将軍上洛、二十一日、(一橋)(会津)(桑名)(にはか)に朝廷にせまり、追討の命をコフ。挙朝是にオソレユルス。諸藩さゝゆる者なし。唯薩独り論を立たり。其よしは将軍廿一日参内、其朝大久保(利通)尹君(いんのみや 中川宮)に論じ、同日二条殿(関白二条斉敬)に論じ、非義の勅下り候時は、薩は不奉と迄論じ上げたり。されども幕のコフ所にゆるせり。薩云々等朝に大典の破し事憤りて、兵を国より召上せ、既に京摂間に事あらんと。龍(や)此度山口に行、帰りに必ず面会、事により上に御同じ可仕候かとも存候。何れ近日、先は早々頓首。
三日
内蔵太 様
龍馬





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本本文の末尾に、(「関係文書第一」)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年7月24日作成
2011年6月17日修正
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