手紙

慶応三年五月中下旬頃 高柳楠之助あて

坂本龍馬




一翰致敬呈候。然ハ先夜御別後、広く世界之数例を推し候処、御船を以再度衝突被成候ニ依而致沈没候事故、何分貴方より其条理御立被下候事、必然之道理ト相聞へ申候。去ル四月鞆津御談判之節、世界之公法ニより処置可致御定約仕候通、於当地※(二の字点、1-2-22)御決着可遣候筈之処、先夜之御議論ニ世界之公法トハ幕府之御処置相願い候上の事ト被仰聞候。其儀なら、当時大樹公ニも御出京ニ相成居候事故、鞆津直様御上坂可成筈ニ候。将御出発後ハ唯貴方の御用のミ御達し被成、私共困難の事件者時日を御延し被成候。是不解の第一ニ候。
且於当方所ニハ未御談判ニても明白ニ御座候。此条私共江冤罪を御被セ被成候御手段ニ相当り候。
是不解之第二候。於私も御存之通、船并公物多沈没、不計も箱主用候得者、徒ニ移時日候てハ寡君申し訳難相立候。因テ早※(二の字点、1-2-22)貴方より(弊)藩官長江御引合可成遣候。若其儀も遅延被成候時ハ、最早乗組一同貴藩之御手ニ倒レ申より外無之候。御病中乍御気毒此条申上置候。
宜御如意も可成下候。謹言
月日
才谷梅太郎
高柳楠之助様





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙の写真のキャプションに、(下関 河村家)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年8月26日作成
2011年6月17日修正
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