手紙

慶応三年十月十三日 後藤象二郎あて

坂本龍馬




御相談被遣候建白之儀、万一行ハれざれば(もと)より必死の御覚悟故、御下城無之時は、海援隊一手を以て大樹参内の道路ニ待受、社稷(しやしよく)の為、不(倶)戴天の讐を報じ、事の成否ニ論なく、先生(後藤象二郎)ニ地下ニ御面会仕候。○草案中ニ一切政刑を挙て朝廷ニ帰還し云※(二の字点、1-2-22)、此一句他日幕府よりの謝表中ニ万一遺漏(いろう)(か)、或ハ此一句之前後を交錯し、政刑を帰還するの実行を阻障せしむるか、従来上件ハ鎌倉已来武門ニ帰せる大権を解かしむる之重事なれバ、幕府に於てハいかにも(だんじがたき)の儀なり。是故に営中の(議)論の目的唯此一(疑)のみあり。万一先生一身失策の為に天下の大機会を失せバ、其罪天地ニ容るべからず。果して然らバ小弟亦薩長二藩の督責を免れず。豈徒ニ天地の間に立べけんや。
誠恐誠懼
十月十三日
龍馬
 後藤先生
左右





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙写真のキャプションに、(中島家文書)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年10月9日作成
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