手紙

慶応三年十月十八日 望月清平あて

坂本龍馬




拝啓
然ニ小弟宿の事、色※(二の字点、1-2-22)たずね候得ども何分無之候所、昨夜藩邸(薩摩)吉井幸輔より、こと(づたへ)之候ニ、(いまだ)屋鋪(土佐屋敷)ニ入事あたハざるよし。四條ポント町(四条河原町二筋束近江屋)位ニ居てハ、用心あしく候。其故ハ此三十日計(ばかり)(あ)ト、幕吏ら龍馬の京ニ入りしと謬伝(びゆうでん)して、邸江(土佐藩邸へ)もたずね来りし。されバ二本松薩邸(薩摩藩邸)ニ早※(二の字点、1-2-22)入候よふとの事なり。小弟思ふニ、御国表の不都合(土佐国脱藩罪)の上、又、小弟さへ屋鋪(土佐屋敷)ニハ入ルあたハず。又、二本松(薩摩藩)邸ニ身をひそめ候ハ、実ニいやミで候得バ、萬一の時も存之候時ハ、主従共ニ此所ニ一戦の上、屋鋪(土佐藩邸)ニ引取申べしと決心仕居申候。又、思ふニ、大兄ハ昨日も小弟宿の事、御聞合(くだされ)候彼御屋鋪の辺の寺、松山(松山藩)(陣)を、樋口真吉ニニ(ママ)周旋致させ候よふ御(世)話被下候得バ、実ニ大幸の事ニ候。上件ハ唯、大兄(ばかり)ニ内※(二の字点、1-2-22)申上候事なれバ、余の論を以て、樋口真吉及其他の吏※(二の字点、1-2-22)ニも(ママ)御申聞(なされ)候時ハ、(なほ)幸の事ニ候。不一
 宜敷 頓首/\/\
 十八日
龍馬
望月清平様
机下





底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙写真のキャプションに、(高知県文教協会)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年10月9日作成
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