新鮮な魅力

――「仏蘭西文学賞叢書」推薦の辞――

岸田國士




 フランスには文学賞の数が非常に多く、その意味では受賞作品必ずしも生命の永い傑作とは云ひがたいけれども、その選択の標準にはつきりした意図が示され、且つそれぞれの作家の其後の業績をも考慮に入れるなら、最近十年間のフランス文壇の最も溌溂たる動きを見るのにこれ以上便利で有益な資料はなく、一方、多数のわが国の読者にとつて、若い文学の新鮮な魅力を、異国的にして同時に世界的な舞台を透して味ふ絶好の機会を得ることになるであらう。
 編輯並に翻訳の二つを含めて、私は異議なく、この企画に賛同するものである。なぜなら、私に伝へられた範囲に於て、編輯責任者の専門家的明識と、翻訳者の顔ぶれに見る堂々たる筆力とは、敢て私の保証を必要としないからである。





底本:「岸田國士全集24」岩波書店
   1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「仏蘭西文学賞叢書 内容見本」実業之日本社
初出:「仏蘭西文学賞叢書 内容見本」実業之日本社
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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