現代の演劇が純粋に健全に伸び育つためには、まづ、文学芸術の広い領域とのもつと緊密な接触を計り、それぞれの分野の活溌な協力を求めることが必要があるといふ見地に立つて、われわれは、一応、近い周囲に呼びかけ、「雲の会」といふ団体を結成した。会員はそれぞれ、小説家、劇作家、詩人、批評家、美術家、音楽家、舞台及び映画の演出家、俳優などであるが、また同時に、めいめいは新しい演劇の将来に最も深い関心をもつ観衆を代表してゐる。
われわれが、現代の演劇に何を寄与し得るかといふことと、われわれがそれに何を求めるかといふこととは、常に微妙に相つながる問題である。「雲の会」の仕事は、その問題を徐々に解決していくことである。
雑誌「演劇」の刊行は、会の事業の一つであるが、たまたま白水社が自発的にその負担に於てこれが発行の業務を引受けてくれることになつた。
われわれは、この雑誌を通じてより多くの同志の協力を求め、かつ、なるべく広汎な演劇愛好者、演劇研究者と手を携へることができたら幸である。
一九五一年四月
「雲の会」実行委員の一人として 岸田國士