ある時、きりぎりすさんが、
「どんな形の靴でもおのぞみしだいにつくります。」といふ看板を見てやつてきたのが、あひるさんです。
きりぎりすさんはあひるさんの足をはかつて、夜もねないで靴を一足こしらへて、あひるさんのところに持つてゆきました。
あひるさんは大変おしやれでしたから、自分の足の
「まあ、こんな変な恰好の靴は牛さんにでも買つてもらふがいゝ。」きりぎりすさんは大変こまりましたけれども仕方がありません。しほ/\とその靴を持つてかへりました。そして、それをお店へならべておきましたが、あんまり不恰好なものですから、だれも買つてくれません。おしまひには、そのうへへ
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それから、三年ばかりたつたある晩に、あひるさんが自動車にのつて、きりぎりすさんの店のまへをとほりかゝりました。あひるさんは自
「この靴がお入用ですか。」あひるさんは、仕方なくまうしました。
「さうです。これを下さい。」
「ほんとに、丁度よくあなたの足にあひさうです。」ときりぎりすがいひました。あひるさんは顔を赤くしました。きりぎりすさんは、三年間ごろ/\してゐた靴がうれたので、どんなにうれしかつたでせう。けれども、その靴を、初めに注文したのが、このあひるさんだつたといふことに気がついたのはそれから一週間あとのことでした。