あるところに一人のおぢいさんがありました。おぢいさんはきのふの晩から歯が痛くて仕方がないので、ほつぺたを
途中で、おぢいさんは、ピイ/\鳴くひよつ子の声を聞きました。びつくりして見ると、ポケツトの中から黄色い小さいひよつ子が首を出してゐました。おぢいさんは、いつの間に、ひよつ子がポケツトの中へはいつたのだらう、もしや、食ひしんぼのひよつ子に、十銭銀貨をたべられると大変だと思つて、ポケツトをはたいて見ましたら、案の定、十銭銀貨の影も形もありません。
「ひよつ子や、お前たち、十銭銀貨を一つづゝ食べたらう?」とおぢいさんは聞きました。
「いゝえ、おぢいさん、私たちは生れたばかりですから、そんなかたいものはたべられやしません。」とひよつ子は答へました。
「食べないと言つたつて、入れたものがない以上食べない
その声を聞いて、一人のおぢ
「おぢいさん、どうかそのひよつ子を二十銭で売つて下さい、丁度こゝに十銭銀貨が二枚ありますから。」そして、おぢやうさんはおぢいさんにお金をわたして、ひよつ子を持つて行つてしまひました。
おぢいさんはおぢやうさんにもらつたお金を持つてお医者様に行きました。そして、さつきの事を話して、「なぜ、ひよつ子のたべた二枚の十銭銀貨が、いつの間にかあのおぢやうさんのお財布のなかにはいつてゐたのでせう。」と申しました。歯のお医者様は笑つて言ひました。「おぢいさん、あなたは