所有

今野大力




あらゆる所有の王国に呪いあれ
    *
万民平等なる母体の胎児たりし時
卿等に所有の観念の兆せしや否や
我古代より現代に至る
社会の変遷による人々の苦悩は
個人があやまれる自由の曲訳により
所有の観念のあやまれる故なりと断ずるなり
    *
自由とは何ぞや
    *
あらゆる個人の所有を許さざる万民平等の時
神人しんじん等が私慾の一点も加えられざる処
これあるのみ
    *
我ここに按ずるに
所有の生みなせる処の
社会の空中に燦然たる
電波線前面に
大玻璃板だいはりはんしつらえ
これを中断せずんばあるべからず云々

我拙なき咏嘆を東京の詩人凉木優輝兄におくる――





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1924(大正13)年6月16日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年9月1日作成
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