土の上で

――私が私自身に言う言葉――

今野大力




おまえはまだ立っているか
力強く立っていようとするか
風は吹いても地はゆらいでも
おまえはまだ立っていようと願(ママ)るか
    *
久し振りで地に親しむ事の出来た
土へのおまえの愛は
まことに美しいものだ
けれども今はおまえの執着は
おそろしいものだ
    *
あくまで地に立っている事は
あくまで反逆の意味がふくまれている、真実に地を愛し慕うならば
おまえは立つ事を
やめねばならない
おとなしく大地のふところに
横たわらなければならない
    *
立つ事は不自然だ
捨て様として捨て得ない
みれんなみにくい執着だ
おおおまえは安らかに
このすべての母なる
土の上で静かに
休む事を願わないか

一九二三・三





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
初出:「旭川新聞」
   1923(大正12)年6月16日
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年9月1日作成
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