徒弟

今野大力




いち早く冬の来る北方の街頭に
寒いカラッ風が吹きまくる
或る朝
理髪師の徒弟は店先を掃いていた
店先に一本の街路樹があった
落葉は風になぶられてあちこちに吹きたまる

正直な徒弟は幾度もそれを掃いていた
時が過ぎる
徒弟は街路樹に登った

木葉はもう一枚も街路樹に残っていなかった
徒弟は街路樹をゆすぶり
箒ですっかり叩き落していた

五・一八





底本:「今野大力作品集」新日本出版社
   1995(平成7)年6月30日初版
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年3月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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