わびしさのつもれば獨り訪ね來て悲しき海の冬を聞くなり
水面擦り飛ぶおほ鳥の眞白なる翼に疲れ見えて哀しも
うら枯れし濱晝顏のながながと此處別莊の裏につゞけり
半島の岩に碎くる波見えて浪子不動に日は暮れなずむ
不動堂の折鶴の色あせゆきて冬に入るなりこゝ逗子の濱
手向けたる菊も懷かし不動堂やさしき主の住まひ給へば
折鶴の吊られたるまゝ色あせし不動の冬の夕べは哀し
マリやマリ
不如歸蘆花と刻みし石碑なほ倒れたるまゝ冬に入りたり
あまた窓皆カーテンを降したり海濱ホテルに人氣は見えず
濱の夕を馬走らする乙女あり赤き乘馬着のたのもしきかな
なぎさ打つ波のかけらのほの見えて葉山のはまに日は暮れるらし
馳けりゆく馬車馬の背にあかあかと落日にじめり葉山街道