霜夜

末吉安持




夜はくだつ十一時、
霜さむく、しくるやみの気のいてに、
つかれては黄塵わうじん
しくしくと泣き湿しめり、
侘寝わびねすらし。

いろめし達摩像だるまぞう
はた古りし徳利とくりのやうに、つくねんと、
屑本くずほんのちりばふなか
くびほそうきやく
をとこをみな

すゝけたる帆木綿ほもめん
一品いつぴん文字もじさびしく、くもり、
皿道具さらだうぐなかへ、つと、
しのびよる黒き物――
巡査じゆんさなりき。

ばん拍子木へうしぎ
後方しりへより『鍋焼なべやきうどん』、またるは、
よきこゑの『こひ辻占つじうら
しやけさげて小走こばしりの
まち若衆わかしゆ

炭俵すみだわら、はたまきか、
河岸かしとほく、をりからものつるおと
犬のこゑ、さはれ五分時ごふんじ
濁水だくすいおともなく
西へ流る。





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年1月27日作成
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