再び立上る日の為に

――東京市電の兄弟へ――

下川儀太郎




負ける争議ストライキじゃなかったんだ
そいつが負けたんだ
そいつが負けたんだ
兄弟、そいつが負けたんだぞ!
誰れが
あいつらに妥協を頼んだ
誰れが
争議ストライキを打ち切れとぬかしたんだ
ゼネストだ!
全線へおっぴろがった……
横浜へ京都へ大阪へ神戸へ
火がついた!
そいつを真先にもみ消したなあどいつだ!

死ぬまで闘う! と
突き上げた拳の下で
怒りに燃え立ったお前達じゃねえか
そいつが六日間
そいつがたった六日間
たった六日間にど奴がしたんだ※(感嘆符疑問符、1-8-78)

ダラ幹だ!
社会民主々義者だ!
裏切者スキャップだ!
当り前よ
だが、ダラ幹に任かしたなあ誰れだ?
裏切者スキャップをそのままにしたなあ誰れだ?

一度しくじった道を
二度と踏むな!
おいらは
おいらの腕を信じろ
おいらの闘いは
勝利か死だ!

ダラ幹を叩き出せ
社会民主々義者をのしちまえ!
裏切者スキャップを踏みつぶせ!
おいらの勝利は
そっからだ※(感嘆符二つ、1-8-75)

兄弟!
争議ストライキに負けても
腕を離すな!
次の闘いに備えるんだ
密集しろ!
革命的労働者の戦列
おいらの勝利は
そっからだ※(感嘆符二つ、1-8-75)
(東京市電ストライキ惨敗の日に。)
(『戦旗』一九三〇年六月号に発表)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
初出:「戦旗」
   1930(昭和5)年6月号
※×印を付してある文字は、底本編集部による伏字の復元です。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年12月13日作成
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