青い服の列

西村陽吉




青い服の長い列、
みんな揃って青い服、
ひょろひょろとした、
せいのひくい、
営養不良の、
顔まで青い長い列。

みんな同じようなゲートルをまいて、
手に手に日の丸の小旗をもって、
生徒のような帽子をかぶって、
どれもこれも、
鉱毒と過労にひきつったような顔。

時間にして一時間以上、
長さにして一里以上、
数にして一万以上、
砲兵工廠から二重橋まで
うねうねと蟻の列のように。

それがみんな人間だ、
しかも髯をはやした立派な人間だ。
青い服を着た職工――
人間の器械だ。

花の日の酔うような街中を、
小旗をふりながら謳ってゆく、
なんと言って謳ってゆく、
見たことも、嘗めたこともない、
黒酒くろき白酒しろきをとりもちて――」……。
(花の日所見)
(『生活と芸術』一九一五年十二月号に発表)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
初出:「生活と芸術」
   1915(大正4)年12月号
※底本の編者による語注は省略しました。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年12月13日作成
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