場外

根岸正吉




十二時間の勤めを終えて
わざわざ郊外からやって来たのだ。
山を下り川を越え
はるばる足尾からやって来たのだ。
それを此儘追返すとは
ものの解らぬにも程がある。

「諸君!
けずんばこんな門
たたき壊して這入はいろうじゃないか」
言葉半ばに魔の手は延びて
猛り狂いつ捕われて
暗き方へと引かれ行く。

「……森も林も武装せよ、
 石よ何故飛ばざるか……」
革命の歌うすれ行く。
(発表誌不詳 『どん底で歌う』を底本)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「どん底で歌う」日本評論社
   1920(大正9)年5月
※×印を付してある文字は、底本編集部による伏字の復元です。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年6月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード