我は労働者よ

根岸正吉




廻せ! 廻せ!
廻したくば何程いくらでも廻せ。
如何に汝が廻すとも
機械の前に我等立たずば、
一寸の布も編まれぬであろう。
一尺の糸も紡がれぬであろう。
糸の一管ひとくださえ巻かれぬであろう。

我は労働者よ。
何も知らず。――只此事を外にしては、
されど
我が知れる此事はいとも貴し。

我は『力』なる労働者の一人なり。

げにこそ
労働者は力なり。
我等が皆目醒むる時
為さんとし成らざるなき強き力なり。
(『新社会』一九一六年七月号にN正吉名で発表 『どん底で歌う』を底本)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「どん底で歌う」日本評論社
   1920(大正9)年5月
初出:「新社会」
   1916(大正5)年7月号
※初出時の署名は「N正吉」です。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年5月25日作成
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