調帯

野村吉哉




ぶんぶんすばらしくうなりながら
私の目の前にいつでもいつでもあらわれてくる調帯

うとうととまどろみかけた頭のなかに
すぐぶんぶんとひびきながら
私の身体のところどころをへし折りはねとばし
すばらしい勢いで回転している調帯の幻影

いつでもいつでも
夜でも昼でも私は調帯にせめられている

まっくらがりのなかで
ぶんぶんうなりながら回転している調帯!
手を折られ足を折られた私のめのまえへ
疲れきったあたまのなかから
ひょっくりひょっくりあらわれてくる
(発表誌不詳 一九二九年一月平凡社刊『新興文学全集』10を底本)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「新興文学全集 第十巻」平凡社
   1929(昭和4)年1月
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年9月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード