五月一日

波立一




ええ、癪だな、畜生!
間抜けた汽笛なんか気にすることあねい。

じゃあ――行くぜ、阿母!
サーベルの四五本もへし折ってくるんだよ。

一八八六年より一九二八年まで
血ぬられた五月一日の顔を見ろ。

行け! 五月祭の真唯中――
空は青く、地上は赤き群衆の奔流だ。

清めろ!
十字路を驀進する俺らの行手を。

恐いのか! 兄弟
官服をんづけ、突破しろ!

轟け! 幾万の歌声――
響け! 強力な跫音――

ええ涙ぐんでる奴は誰だ!
兄弟! 小憎らしい程嬉しい日だよ。
(『戦旗』一九二八年五月創刊号に発表 同年七月全日本無産者芸術連盟刊『労農詩集』を底本)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「労農詩集」全日本無産者芸術連盟
   1928(昭和3)年7月
初出:「戦旗」
   1928(昭和3)年5月創刊号
※×印を付してある文字は、底本編集部による伏字の復元です。
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年6月12日作成
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