労働の精神

百田宗治




工場の隅でぐったりしている人よ、
君は疲れているか、
君の腕は最早力を失ったか、
君の息は苦しそうだ。

だが君の腕はいまに甦るだろう、
君の息はいまに百倍の力に充ちるだろう、
そして君は再び立ってゆくだろう。

おおみんながムダに時間を費している時に、
君は働いているのだ、
君は力を消費し、また恢復し、
一杯になり、またそれを失い、
一刻の暇もぼんやりしていない。

おお君の世界は何と充実していることだ、
何とはり切っていることだ、
おお君の所有している、君の権利の、君の生かす世界の真実を知れ、
君自身を知れ、
労働の精神を知れ、
無上の幸福と生き効いに声挙げよ。
(一九一八年一月六日作 『民衆』一九一八年三月号に発表)





底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
   1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「民衆」
   1918(大正7)年3月号
初出:「民衆」
   1918(大正7)年3月号
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年7月31日作成
2015年8月29日修正
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