わたしは途中で一人の女とすれちがった
女のかおは白粉と紅で白く赤く美しかった
背が高くふっくら円かった
年は二十三四
そして藤色チリメンの長袖
厚いフェルト草履の大股でトットッと歩いて行った
それは大変に自慢そうで
からだ全体が得意で一ぱいのようだった
わたしは洗いざらしの浴衣を着て
わたしは顔をうつむけて通りすぎた
そうしてわたしは振りかえった
振りかえった時
わたしの胸はわくわくとこみ上げた
いくらでも威張りなさい
いくらでもおけつを振りなさい
あなたがそうしてじゃらじゃらしている間に
わたしたちが何をしようとしているか
何処に向かって着々としているか
高慢ちきな娘よ
この陽に焼けたゆがんだ顔で
みすぼらしいわたしたちが何をしでかすか
何をしでかすか
振りかえった時
わたしの胸はわくわくとこみ上げた
わたしの胸は色あせた浴衣の中で焼けた