寧日

山口芳光




母、吾が為に
鼠の子虫籠に入れて与へぬ
病間の徒然なる
吾指もて小づき戯れ
心明るう時を経にけり。
あはれ鼠の子まこと子なれば
耳孕[#「耳孕」はママ]桃色に 血管ちすぢの脈打つも生物いきものらしく
今は前肢を捧げ餌食みゐるも※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)たけし。
やがて夕べの風出でぬ――時を経ぬ間に
何時か牛乳ちちの時間となりぬれば
吾鼠の事も忘れ
青葉繁れる窓に
牛乳ちちを飲みゐたり。





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年3月26日作成
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