無言
常によく見る
心の欲を云ひいでむ、
また、語るべき
胸もどかしく、過ぎゆくか。
実にも
砕けちりしく花
夕日の国の寂寥に、
せめては夢にその
ふかき思ひに抱きしめ、
無言の恋をくちづけむかな。
移香
ながき
あやしく匂ふまなざしの、
たゆたひつゝもしなやかに、
見つむる色の、不思議さよ。
花毛氈の草のへに、
姿すゞしく、
やをら心にしみいりて、
愛の泉にゆあみする、
新らしき、吾が酔ひごゝち。
真昼
子守唄、静かにうかび、
平安の木かげの夢を
ゆりさます、真昼のまひる。
吾れは今、椰子の実こぼる
草にふし、豆の葉とりて、
恋愛の、一つにもゆる
唇に、
若かき日の、心うたひぬ。
屠牛
嘯き吼ゆる黄牛よ、
目路にかゞなふ、
知るやしらずや、あな哀れ、
ものおぞましき足どりに、
牧場の草を、いでたちぬ。