棕梠のそよぎ

漢那浪笛




黄ばんだ一本の棕梠、
痛ましく裂けた葉のそよぎ。
冷たい秋の空気にふれて、
かなしい秋、調べをきざむ。

淋しい心の華が開き、
灰色の眼をあげて
なつかしい譜の鳴る方へ、
絶えず懐ひが、
躍り出す。





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「沖縄毎日新聞」
   1911(明治44)年1月9日
※初出時の署名は「浪笛生」です。
※初出の新聞で作品名として扱われている「棕梠のそよぎ」を表題としました。
※表題は、底本では「南の友へ【二】」の見出しのもと、5字下げて2行取りの横罫の下に記載されています。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年8月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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