満つと見しこの
いづちやるも
海の
今日片時の浜下り
磯の霞に酔ひしれて
哀れ吾が世の夢に泣く
浪路逢かた見渡たして
満潮時を恨み泣く
千鳥の声に胸冷えて
哀れ吾が世の夢に泣く
花葉かざれる海の底
そや湧きかへる黒潮は
憂しや吾が身の宿世にて
哀れ吾が世の夢に泣く
足跡しげき砂の上
深かき想ひに眼を閉ちて
世の運命を思へば
哀れ吾が世の夢に泣く
悲哀の盃を受けし身は
日に日に琴柱折りふして
只だ空鳴りに物狂ひ
哀れ吾が世の夢に泣く
さらばと
花園の影に身をよせて
詩の車を手に繰るも
哀れ吾が世の夢に泣く