郷愁

仲村渠




友よ 肩をならべて街へゆかう
質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ
友よ 腕をくめ
街は霧だ
燈火の美しくなる十二月
何だらう 僕らを呼んでゐるものは?
友よ 新しい気流が渡つてるにすぎぬのだよ 街のうへを
何だらう 僕らの顔に匂つてくるものは?
気弱い友よ
ナフタリンの玉がころがつてるにすぎぬのだよ かくしの底に
霧は僕らの肩におりるやうす
友よ 友よ 話してゆかう
声だかに燈火のあひだ霧のしたを。





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年8月25日作成
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