沈め

仲村渠




那覇港よ その海民よ
剽悍な気魄いまやなし

ああ美しい贈りものを!
尾類ヂユリが紅いどくを文身ほりこむだらうよ
人魚の肌へ
鮫を、比目魚を、いらぶう、海豚を
市をめぐつて海のやからが酔うて痴れて酔ひ痴れて
おまへを誘ひにくるだらう
泡盛の匂ひを古酒クースを撒いて!
沈め沈め沈め海へ底へ
おまへの市の石垣が魚城の砦に役立つ日が来た
そこで午睡をするがよい!
おまへの午睡に役立つ日が来た
海の中で黄いろ? 赤いろ?
百年を一ど咲く龍舌蘭が花開くだらうよ
沈め 用意はよいか!
おまへはその掌に尾類ヂユリの髪を握るだらう
おまへの腰に椰子ヤーシの壺を忘れぬだらう





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2017年11月24日作成
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