錢形平次捕物控

十萬兩の行方

野村胡堂





「親分、飯田町の上總屋かづさやが死んださうですね」
 ガラツ八の八五郎は、またニユースを一つ嗅ぎ出して來ました。江戸の町々がすつかり青葉につゞられて、時鳥ほとゝぎす初鰹はつがつをが江戸ツ子の詩情と味覺をそゝる頃のことです。
「上總屋が死んだところで俺の知つたことぢやないよ」
 錢形平次は丹精甲斐もない朝顏のなへを鉢に上げて、八五郎の話には身が入りさうもありません。
「ところが、聞き捨てにならないことがあるんですよ、親分」
「上總屋の死に樣が怪しいとでも言ふのか」
「二年も前からようを患つて居たつていふから、人手にかゝつて死んだとすれば、町内の外科が下手人見たいなもので――」
「落し話を聽いちや居ない、――何が聞き捨てにならないんだ」
 平次は漸く朝顏から注意を外らせました。
「金ですよ、親分。上總屋音次郎が、鬼と言はれ乍ら、一代にどれほどの金を拵へたと思ひます?」
 ガラツ八はなか/\の話術家です。平次が滅多な事件に手を染めないのを知つて、かう乘出さずには居られないやうに持ちかけるのでした。
「五六萬兩かな、――有るやうでないのは何んとかだと言ふから、精々三萬兩ぐらゐのところかな」
「さう思ふでせう。ね、親分」
「イヤにニヤニヤするぢやないか、それとも十萬兩もあつたといふのかい。こちとらから見れば十萬兩は夢のやうな大金だが、上總屋なら」
 平次はガラツ八にらされると知つて、忌々いま/\しくも煙草入を拔いて一服つけました。
「尤もこちとらに十萬兩もあつた日にや、あつしは早速十手捕繩と縁を切つて――」
 ガラツ八の話は、また妙なところへ飛躍して行きます。
「金貸にでもなつて懷手で暮すつもりだらうが、さうは問屋がおろさないよ」
「そんなサモしい根性ぢやありませんよ。先づ山ノ手の百姓地を五六萬坪買つて――」
「大きく出やがつたな、人參にんじん牛蒡ごばうでも作る氣になつたか」
「大違ひ、――親分に植木屋を始めて貰つて、あつしはそれを江戸の縁日えんにちへ持出して賣る」
「馬鹿だなア」
 平次は仕樣ことなしに苦笑をしました。そんな氣でゐる八五郎の心根が哀れでもあつたのです。
「ね、親分。冗談は冗談として、上總屋の話だが、――誰でも一應は萬とまとまつた金があるに違ひないと思ふでせう」
「それがどうした」
「死んで了つた後で、番頭や親類の者が、熊鷹眼くまたかまなこで搜したが、不思議ことにあるものは借金ばかり。何萬とある筈の金が、たつた十兩もないと聽いたら驚くでせう」
「驚くよ、――お前の義理でも驚かなくちや惡からう、それからどうした」
「たつたそれだけだが、ちよいと變ぢやありませんか親分。神田から番町へかけて、並ぶ者のないと言はれた上總屋音次郎が、死んで一文もないなんざ、皮肉ひにく過ぎますよ」
「搜しやうが惡かつたんだらう」
「そんな筈はありません。床下から天井裏まで搜したんださうで」
「それとも主人が死ぬと一緒に、誰か持出した奴があるのかな」
「熊鷹の眼が二三十見張つてゐる中から、巾着きんちやく一つ持ち出せるものぢやありません。まして千兩箱を五十も百も」
「よし、判つた。八五郎に揚足あげあしを取られるやうぢや世話アねエ」
 平次は苦笑ひをしました。
「そこで一つ、親分にお願ひがあるんだが」
「何んだい」
「上總屋の番頭さんに逢つて下さいよ」
「?」
くなつた主人は、何處かに金を隱してあるに違げえねえが、何人かゝつても見付かりさうもない。金が出なかつた日にや、後の恰好がつかないさうです」
「で?」
「番頭さん、構はないから入つて來てくれ。お前さんから、親分に話して見るが宜い」
 ガラツ八は入口の方を振り向いて、大きな聲を出しました。
「それぢや、御免下さい」
 靜かに格子を開けて入つたのは、二十三四のまだ若い男でした。地味な風をして居りますが、一寸良い男で何處か笑顏に人をそらさないところがあります。
「お前さんは?」
 狹い家、初夏の風が吹き拔くやうに開けつ放してあるので、平次は坐つたまゝで、客の物腰がよく見えます。
「上總屋の手代で、仙之助と申します。八五郎親分にお願ひして、主人の隱した金を見付けて頂かうと思ひましたが、八五郎親分は、錢形の親分さんにお願ひした方が宜いと仰しやるので、先刻さつきから門口を拜借して、お待ちして居りました」
 若い番頭はそれだけの事を言ふうちにも、すつかり恐れ入つて、立て續けにお辭儀をして居ります。
寶搜たからさがしは困るよ、番頭さん」
「へエ――」
「上總屋の案内を知つた者が、幾日かゝつても解らないといふのに俺が行つたところで解るわけはない。そいつは岡つ引より易者えきしやへ行く方が早いぜ」
 平次は寶搜しにまでコキ使はれる馬鹿々々しさが我慢がならなかつたのです。
「でも、それぢやお孃さんが可哀想で御座います」
「お孃さんが?」
「上總屋に金があればこそ、親類も知合もあの通り肩を入れてくれますが、何んにもないと判つたら、どうなることで御座いませう。それに折角まとまりかけた縁談も、お氣の毒なことに駄目になります」
「縁談?」
「お孃さんのおそめさんは、たつた一人娘で、この秋には御武家方から御養子が入らつしやる筈でございました」
 仙之助の心配するのはもつともでした。主人が死んだ上、金が一文もないと判つては、武家の次男坊がわざ/\町人へ養子に來る筈もありません。
「そいつは氣の毒だが、どうも俺は寶搜しに乘出すわけには行かねエ。いづれ分別人の上總屋のことだから、何處か容易に見付からないところへ隱してあるんだらう。お互にけの功名をする氣にならずに、多勢で手を分けて探して見るが宜い。五十も百もある千兩箱を、ふところへもたもとへも隱せるわけはないから」
 平次はそれつきり縁側へ出てしまひました。十萬兩の寶搜しよりも、朝顏のなへの方が大事だつたのです。


「親分、だから言はねエこつちやねエ」
 ガラツ八の八五郎が飛込んで來たのはその翌る朝。
「何んだつて腹を立てて居るんだ。俺は文句なんか言はれる覺えはないぜ、八」
 平次は機嫌の好い寢起の顏を狹い庭から持つて來ました。
「親分が御輿みこしをあげないから、到頭人死ひとじにがありましたぜ」
「誰が死んだんだ」
「上總屋の甥の重三郎ですよ。その死にやうが大變なんで、行つて見て下さいよ、親分」
「よしツ、それぢや出かけよう」
「まご/\して居ると、市ヶ谷の富藏親分が、誰彼たれかれの見境もなく縛つてしまひますよ」
「縛りたきや縛らせて置くが宜い」
 さう言ひ乍らも、事件が思ひの外の重大性を持つて居さうなのが平次の岡つ引本能を鼓舞こぶします。
 飯田橋中坂下の大地主、上總屋に驅け付けた時は、家の中はまだゴツタ返して居りました。
「お、錢形の」
 一番早く見付けたのは、山の手で顏を賣つた御用聞、市ヶ谷の富藏です。中年者のしたゝかな顏には、さり氣ないうちに敵意が燃えて、出來ることなら平次を一歩も中へは入れ度くない樣子でした。
「市ヶ谷の親分、何にか大變なことがあつたんだつてね」
「まア、見てくれ、白鼠しろねずみ枡落ますおとしに掛つたやうなものさ、死んだ上總屋の主人も、飛んだ人が惡いよ」
 富藏はそれでも案内顏に先に立つてくれます。
 家の中をザツと見て、平次も胸を惡くしました。よくも斯う滅茶々々に叩きこはしたと思ふほど何も彼も原形を留めません。床も天井も引剥ひきはがしたまゝ、壁は落され、の灰は掻き廻され、戸棚も箪笥たんすも引つくり返して、千兩箱の行方を搜した樣子です。
 ジロジロ四方あたりから見て居る不安な眼差の中を、富藏は裏の物置の蔭に案内しました。其處には稻荷いなりほこらがあつて、その祠の後ろ――がけへ横に掘つたお狐の穴とも思へるのが、入口を組み上げた材木と巨大な石が崩れ落ちて、若い男を一人、蟲のやうに押しつぶして居るではありませんか。
 出入りの者や、番頭手代達の手で、崩れた材木と石を一應取片付け、死體を引出してむしろをかけたばかりのところ。
「これだ」
 富藏はそれを指して、酢つぱい顏をするのです。
「此穴の中に金があると思つたんだね」
 平次は眞つ暗な穴を覗きました。
「狐の穴の中に千兩箱を隱すのは思ひつきさ。盜る氣で入つた者が材木と石に押し潰されたんだからこいつは天罰てんばつとでも思はなきやなるまい」
 と富藏。
「天罰にしちや手嚴てきびしいね」
「天罰でなきや、下手人はお狐か、死んだ先代の主人だ。錢形の親分が夫婦づれで來ても、こいつは縛れつこはねエ」
 市ヶ谷の富藏は少し皮肉な調子で、ニヤリと平次を見るのです。
「成程、金を穴の中に隱して、入口へ危い仕掛をして置くのは、ありさうな事だが、――本當に中に金があるのかな」
 平次は崩れた入口から、中腰になつて穴の中へ入つて行くのです。
「親分、危ないぢやありませんか」
 ガラツ八は後ろからその袂を押へました。
「狐が噛み付くとでも思ふのかい」
「狐は心配ないが、また崩れたら何うするんです」
「一度崩れたんだもの、もう大丈夫さ。仕掛は種切れだよ。そんな心配するより蝋燭らふそくを持つて來てくれ。提灯には及ばねエよ、中は狹い上に淺い樣子だ」
 平次はそんな事を言ひ乍ら、恐ろしく念入りに穴の入口を調べ始めました。
「へエ、親分蝋燭」
 裸蝋燭を二本、灯をつけたまゝ持つて來たのを受取つて、平次はもう一度穴の中へ潜りましたが、やがて尻の方から出て來たのを見ると、失望の色がおほふべくもありません。
「どうした、錢形の」
 富藏もキナ臭い鼻を持出しました。
「千兩箱はおろか、ろくなお賽錢さいせんもないよ」
 平次は泥だらけになつた着物を拂ひ乍ら、苦笑ひをしてをります。
「それぢや、親分」
 ガラツ八もなにかつまゝれたやうな心持でした。
「中は恐ろしく狹い上に、こけで一パイさ、千兩箱なんか隱せる場所ぢやねエ。それに、穴守あなもりのお狐もさう言つて居たよ。生れてまだ千兩箱と鼠の天プラにはお目に掛つたことはないつてね」
「親分?」
「解つたよ八。お前は、金を隱してゐない場所に、危ない仕掛をしたのがをかしいつて言ふつもりだらう。その通りさ、この穴の中に千兩箱が一束いつそくもあつた日にや、物事が素直に運び過ぎるよ」
 平次はそんな無駄を言ひ乍らも、忙しく其邊を搜し廻つて居りました。


「市ヶ谷の兄哥あにい、この仕掛は古いものぢやないぜ」
 平次は落散る材木や、それを釣つた繩切等を丁寧に調べました。
「どうせ新しいものに決つて居るだらうよ。東照權現樣江戸御入府前からあるわけはねエ」
 富藏は一向氣の乘らない樣子です。
「それにしても新らし過ぎるよ。――死んだ主人の音次郎は三月前から寢て居たつて言ふが、この仕掛をこさへたのは、どんなに間違つても、十日より前ぢやねエ」
「?」
「この仕掛をしてから雨が一度も降らなかつた。その證據は繩が眞新らしくつて、石も木も上から流れて來る泥を受けた樣子はねエ」
 平次の言葉の意味の恐ろしさが解ると、皆んな默り込んでしまひました。三日前から[#「三日前から」はママ]寢て居た主人の作つたものでないとすると、この仕掛の意味は非常に深刻なものになります。
「それに、重三郎が穴へ入るつもりで、中腰になつて、狹い入口を半分ほど入つた時、綱か何にか引いて、仕掛の石と材木を落したんだ。こんな器用なことは、狐や亡者まうじやに出來ることぢやねエ」
 錢形平次の論告は、何のはゞかるところもなく、誰の抗辯も許さずに、遠慮なく皆んなの耳に入つて行くのです。
「で、何うしようと言ふのだ、錢形の」
 富藏は少し我を折りました。
「一と通り皆んなに逢つて見よう。千兩箱が出るか、下手人が出るか、それからだ」
 平次は自分へ言ひ聽かせるやうに、う言つたきり、默つて眼でガラツ八に指圖をします。
「此處へ呼んで來ませうか」
「うん、屍體の前が宜からう。一人づつ呼んで來るが宜い」
「へエ――」
 ガラツ八は飛んで行つたと思ふと、第一番に先づ大番頭の和七を、襟髮えりがみを掴まないばかりに引つ立てて來ました。
「親分さん方、御苦勞樣でございます」
 物馴れた五十前後の男、彈力も圭角けいかくも失つてしまつた、忍從そのもののやうな典型的な番頭です。
「番頭さんかい、――お前さんが店の支配をしてゐるなら、主人が金を何處へ隱して置くか見當くらゐは付いて居るだらう」
 平次はいきなり突つ込んで行きました。
「へエー、それが、その、私の口からは申上げにくいことで御座いますが、一風變つた御主人で、その日の勘定から、帳尻は私にさせますが、まとまつた現金は、何處へやりますことやら、ツヒぞ見たことも御座いません」
 そんな事があり得るだらうか、と言つたやうな平次の顏を見乍ら和七は一生懸命辯解につとめるのです。
「それで商賣の方はうまく行つてゐるんだね」
「へエ、それはもう」
「お前さんはこの店に幾年居るんだ」
「足掛け三年になりますが――」
「それで支配人といふわけか、前の大番頭はどうしたんだ」
「不都合なことがあつて、身を退いたさうで御座います。尤もその方は二年くらゐしか居なかつたやうで」
「此家は番頭が長く勤まらないのだね」
 平次は妙なところに氣が付きました。
「そんな事も御座いません。現に仙之助などは、七年も勤めて居るさうで――」
「大番頭だけ居るんだね」
「――」
 和七は氣拙きまづさうに默り込んでしまひます。
「ところで、上總屋の身上はどれほどあるだらう。支配人のお前に見當が付かないことはあるまいが――」
「それが、その、――地所と貸金では差引勘定借りの方が多くなります。世間の評判通り、何萬兩といふ金を隱してあれば別ですが」
 世間の噂では――上總屋の土藏の中は小判が一パイ。それを泥棒に狙はせないために、入口の方へは何千貫とも知れぬ青錢と鐚錢びたせんとを入れて置くとか、土藏三戸前の繩張りの内側は、こと/″\く金藏になつて居て、何萬兩とも知れぬ大判小判が入つて居ると言はれて居りますが、三つの土藏は主人が死ぬと同時に、たつた一人殘された娘お染の前もはゞからず、親類と雇人が集つて、滅茶々々にかき廻され、床も天井も腰張りも、無殘に引き剥がされてしまひましたが、大判小判はおろか、鐚錢びたせん一枚も出ては來なかつたのです。


 次に引張り出されたのは、死んだ主人音次郎の弟で、居候並に扱はれてゐる音松といふ中老人でした。若い時はいくらか樣子がよかつたらしく、放埒はうらつに身を持崩した末五十過ぎてから兄の家に轉げ込み、障子も張れば便所の掃除さうぢもすると言つた、恐ろしく氣の輕い男で、鼻唄交りにその日/\を暮してゐる札付の放浪者ボヘミアンでした。
「兄は何萬といふ金を溜め込んでゐるに違ひありませんよ。公儀御用を承はつて日光山の御修覆しうふくまで引受けたこともある男ですもの」
「それを何處に隱してあるんだ」
 平次は少しれ込みました。このニヒリストは、話し相手を焦らすのを、話術の玄妙と心得て居る質の男です。
「隱した場所が判つて居れば、今頃まで放つて置くものですか。あの支配人の和七が一番先に取込みますよ。もつとも私だつて負けちや居ませんがね、へつ/\」
 う言つた調子の男は、平次の忍耐力でも長くは附き合ひきれません。
 三番目にめひのお今、――姪と言つても恐ろしく遠い姪で、親類書にる顏ではありません。
「お前の知つてるだけの事を話してくれ」
 平次はこの賢こくないらしい娘からは、あまり大したことは期待しませんでした。二十三にもなるでせう。丸ぽちやの可愛らしい娘ですが、笑つても、物を言つても、無智な愛嬌がこぼれさうで、これも附き合ひきれないところがあります。
 金があるかないかは素より知らず、此家に來てから五年になるが「ろくなお小遣こづかひも貰はなかつた」と少しゑんずる色があります。
 番頭の仙之助は二三日前に平次が逢つたばかり、ひどく興奮して居りますが、言ふことはハキハキして、何をいても死んだ主人の隱した何萬兩の大金を、一番先に手に入れることに骨を折つて居る樣子です。
「親分さん、お願ひでございます。金が出て來なかつた日には、この家は立つて行きません」
 半ば絶望し乍らも、平次の叡智えいちすがり付かうとしてゐるのが、痛々しいほどよく解ります。
「お前は、お染さんと何にか約束でもあるのかい」
 平次は思ひも寄らぬことをズバリと言ひました。
「飛んでもない、親分」
 愕然がくぜんとして擧げた仙之助の顏は、まだ去りもやらず、其場の樣子を見て居るお今の顏とハタと逢つたのです。
「大層肩を入れるやうだが」
「お孃樣には、お武家方から養子が來ることに話がまとまつて居りますが、金の隱した場所が解らないと、その話の進めやうがなくなります」
「それはお染も承知か」
「へエ――」
 仙之助の一生懸命さには、何にか仔細しさいがありさうですが、それは平次の慧眼にも容易に解りません。
 最後に呼出されたのは娘のお染でした。
「お前はお染さんかい」
 物置の前、重三郎の死骸の側へ呼出すにしては、これはあまりに痛々しい姿でした。精々十八九にしか見えない若々しさも、生得の麗質が年齡をきざむ由もないほど玲瓏れいろうとして居るためでせう。
「美しい」といつたやうな、通り一ぺんの言葉で、これは形容される娘ではありません。人によつては此病的にさへ見えるなよやかさを、みにくいと見るかもしれませんが、人間の血肉を盛つた存在で、こんな不思議な魅力を持つたのを、平次はまだ見たこともないやうな氣がするのです。
「お孃さん、私の訊くことに、包み隱さずこたへて下さいよ」
「ハイ」
 お染は素直にうなづきました。さう言はなくたつて此娘に嘘も掛引もあらうとは、平次も最初から思つても見なかつたのでした。
「亡くなつた父さんが、何處へ金を隱したか、お前さんなら見當くらゐは付く筈だと思ふが――」
「私は、あの、そんなお金は、出て來ない方が宜いと思ひます」
 お染は少し涙含んで居りました。奉公人や親類方が、隱された金を探し廻つて、氣違ひ染みた打ちこはしを初めるのを、お染はどんなに苦々しい心持で見てゐたことでせう。
「すると、お氣の毒だが上總屋の身上しんしやうは持たないさうですよ」
「それでも構ひません」
「お孃さんは、お武家方から來るといふ、養子が嫌なのですね」
「――」
 お染は默つてしまひました。
「死んだ重三郎は、店の者の受けはどうでした」
「さア、私には」
 お染は内氣らしく尻ごみをします。
「お孃さんは仙之助をどう思ひます」
 默つて顏を染めた娘の顏から平次は何も彼も見拔いた樣子です。


「さア解らねエ――親分、これは一體何處に眼鼻があるんでせう」
 ガラツ八は四方あたり構はず張り上げました。
「何萬兩かの金は何處かに隱されて居るのさ。それを皆んなで、一生懸命搜し廻つて居るんだ。命がけの寶探しだよ」
「へエ――」
「殺された重三郎の身體を見よう」
 平次はガラツ八と富藏をうながして重三郎の死骸からむしろを剥ぎました。
「おや?」
 ガラツ八はギヨツとした樣子で重三郎の傷を眺めて居ります。
「氣が付いたか、八」
「こいつは、上から落ちた材木や石に打たれて死んだんぢやありませんね」
「その通りさ。材木や石に打たれて死んだ樣に見せかけて居るが、重三郎の頭を打つたのは、く小さい石だ。――人間を丸ごと押し潰すやうな材木や石ぢやないよ。第一そんな重いものを穴の上へ持上げるのは、一人や二人の力では出來ない。それに、あの仕掛はツイ五日か三日前にこさへたものだ」
 平次の言葉は至つて印象的ですが、恐ろしい疑問を次から次へと投げかけて行きます。
「?」
「重三郎は寶搜しのつもりで穴へ入つて行つた。――穴は狹くて身體を返すわけには行かないから、出る時は尻から出て來た。――大骨折で首を出した時、誰か穴の外に待ち構へて居て、手頃の石で頭を打ち割つたのさ。上から落ちた石が、あんなに都合よく頭の上へ來るものか」
「すると?」
たくらみは思つたより深い。重三郎の懷中や袖の中をもう少し念入りに搜して見るが宜い」
 平次とガラツ八は氣の進まないらしい富藏に手傳はせて、死骸の身體を念入りに調べて行きました。
「こんなものが袂の中にありましたよ、親分」
「何んだ、大福帳の端つこをはさみで切つたのぢやないか、――いなりのうしろあなのなか――と書いてあるのか、これは誰の字だ」
 平次はまだ其邊にうろ/\してゐる大番頭の和七を呼びました。
「――」
「――」
 和七の表情は急にこはばります。
「この右下がりの筆癖ふでぐせは、お前に解らない筈はあるまい」
「亡くなつた主人の字にも似て居りますが――」
「まだ外にこんな字を書く者があるだらう」
「へエ――」
「誰だ」
 平次の問ひは假借かしやくしませんでした。
「仙之助が主人を眞似て、右の肩下がりの字を書きます」
 和七はさう言ふのが精一杯でした。
「親分」
 ガラツ八と富藏は顏を見合せました。合圖一つで、飛出して仙之助を縛り兼ねまじき氣色です。平次はしかし、それを眼で押へて、それ以上追及しさうもありません。
 その日の調べは、それでをはりました。寶探しの深刻な競爭は、まだ續いて居る樣子ですが、平次はそんなものには眼もくれず、和七にいろ/\の帳面を出させて解らない乍らも一應眼を通し、それから大きな取引先を二三軒訪ねて、上總屋の財政状態を、出來るだけ調べました。
 それから三日目。
「親分、大變ですぜ」
 上總屋を見張らせて居たガラツ八が、少し取りのぼせた形で飛び込んで來ました。
「何をあわててゐるんだ、八」
「音松が昨夜から歸りませんよ」
「音松?」
「死んだ主人の弟で、あの野幇間のだいこ見たいな野郎ですよ」
「何處へ行つたんだ」
「町内の湯へ行くつて出たつきりですつて」
「それは變だね、行つて見ようか」
 平次とガラツ八は時を移さず飛びました。飯田町の上總屋かづさやへ行つて見ると、音松の行方不明などは忘れたやうに、奉公人も親類も、相變らず寶搜しに夢中です。
「音松さんが、昨夜から歸らないさうぢやないか」
「へエー、そんな事は滅多にありませんが、また昔の病ひが出たのかも解りませんよ」
 番頭の和七は心得顏でした。放埒者はうらつもので鳴らした音松の惡名は、和七もこと/″\く承知だつたのです。
「どんな樣子で出かけたんだ」
「まだ宵のうちでした、手拭をブラ下げて」
「下駄を穿いてかい」
草履ざうりを穿いて、何んか變な道具を懷ろへ入れて行きましたよ」
 小僧の直吉が口を挾みました。
くはかまぢやあるまいな」
 と平次。
「そんな大きなものぢやありません」
「道具箱を見てくれ、何にかなくなつたものがないか」
「――」
 和七は默つて物置へ行きましたが、暫らく經つてから、
大鑿おほのみが一梃見えませんよ、親分」
「よし/\、そんな事だらうと思つたよ」
 平次はいきなり帳場へ行くと、此間見たばかりの大福帳仕入帳などをバラバラ繰つて行きました。
「これだ。八」
 指さしたのは、はさみで紙を切取つた跡が二ヶ所。
「そいつは何んです、親分」
 八五郎はその意味が呑込めません。
「この近くに上總屋の寮か、隱居所がないか訊いてくれ」
「へエ」
 八五郎は飛んで行きましたが、奉公人達二三人に逢つて引返すと、
「寮も隱居所もないが、神樂坂裏に久しく明いて居る貸家が一軒あるさうですよ」
 こんな事を聽込んで來ました。
「よし、其處へ行かう。小僧を一人借りて來い」
 小僧の直吉を先に立てて、平次と八五郎は早速神樂坂に向ひました。
「此處ですよ、親分」
 直吉が示したのは町裏の藪の中に置き忘れられたやうな空家が一軒。裏へ廻ると、雨戸は一枚外したまゝ。其處からいきなり飛込んだ八五郎は、
「あツ、大變ツ」
 四方構はず聲を張り上げます。
「音松が殺されて居るんだらう。押入か床下ゆかしたへ首を突つ込んで」
 平次は靜かに外から應じました。
「どうしてそれを?」
「懷ろの中には、古帳面ふるちやうめんから切拔いた紙に、右肩下がりの字で、――神樂坂の貸家――とか何んとか書いたのが入つて居る筈さ」
 平次の言葉は恐ろしいほど的中しました。
 音松は空家の奧の六疊の押入に首を突つ込み、床板をはがしたまゝ背中から匕首あひくちを突つ立てられてこと切れて居たのです。
「親分、あの押入の床下に、千兩箱がありやしませんか」
「馬鹿ツ、誰がこんなところに千兩箱なんか持込むものか。あれば精々ねずみくそくらゐのものだ。それよりは、音松の身體を搜せ」
「帳面の紙片なんかありやしませんよ」
「曲者は今度は持つて行つたんだ。よし/\證據は一つで澤山だ。ところで小僧さん」
「へエ――」
 不意に平次に聲をかけられて案内の小僧は飛上がる程驚きました。
「驚くことはない、――これだけ教へてくれ。昨夜音松が出た後か先に、飯田町の家を出たのは誰と誰だ」
「皆んな出ましたよ」
 直吉の返事は想像を飛離とびはなれます。
「皆んなといふと?」
「番頭さんは夕方から日本橋の御親類へ、仙之助さんは音松さんの出た直ぐ後で、矢張り町内の湯へ行つたやうです」
「お孃さんは?」
「お孃さんは何處へも出ません」
「お今は?」
「お今さんも家に居りました。ひどく頭痛づつうがするつて、御飯も食べずに、自分の部屋へ入つて休んだやうです」
「それから?」
「それつきりですよ」
「親分、縛つてしまひませうか」
 ガラツ八は我慢のならぬ樣子でした。
「誰を?」
「仙之助の野郎をですよ」
「もう少し待ちな――今度は仙之助が殺される番だ」
「へエ――」
 ガラツ八には何が何やら解りません。平次の言葉はあまりにも奇つ怪だつたのです。
「それより、昨夜の和七と仙之助の足取りを調べて來い。時刻を訊きもらしちやならねえよ」
「親分は?」
「俺は上總屋へ行く。音松をした匕首が、何處かに隱してある筈だ。捨てるにしちや下手人は悧口過ぎる。それから、和七と仙之助の外に、昨夜そつと脱出した奴があるかも解らない」
 平次は直吉と一緒に上總屋へ引返して行きます。


 平次が上總屋かづさやへ歸つて來ると、此方にも大變な騷ぎがありました。
「親分さん、大變ですよ。お染さんが」
 お今は持前の愛嬌を何處かへ置き忘れでもしたやうに、アタフタと平次を迎へます。
「何うしたんだ」
「殺されかけたんです」
「えツ」
「朝のおみおつけに何にか入つて居ました。でも、お染さんは食の細い人だから、いくらも喰べなかつたんで助かりました」
 平次はその話を半分聽いて、お染の部屋へ飛込みました。町内の本道が、玉子の白味しろみや油を呑ませて大方はかせたさうで、今は疲勞ひらうのために、うつら/\して居ります。
「お、錢形の親分」
 本道は坊主頭をふり向けました。
「何んだらう、先生」
石見いはみ銀山かな。――お孃さんの味噌汁みそしるにだけ入つて居たところを見ると、たくらんだ仕事だよ、親分」
「誰がその味噌汁をこさへたんだ」
 と平次。
「お勝手で、皆んなのと一緒におかまが拵へますよ。もつともお染さんは氣分が惡いから、欲しくないつて言ふのを、仙之助さんはそりや親切だから、自分でお膳まで運んで食べさせましたが――」
 お今の説明には、何かしらふくんだものがあります。
「仙之助は何處に居るんだ」
「市ヶ谷の親分が縛つて行きました」
 大番頭の和七はおろ/\した顏を出しました。
「たつたそれだけの事でか」
「仙之助の行李かうりの中に、石見銀山の使ひ殘りと、少し血の附いた匕首あひくちがありました。へエ、今聽くと音松さんが、神樂坂の空家で殺されたさうで、本當に怖ろしいことで御座います」
 和七は心なしか、ブルブルふるへて居る樣子です。
「市ヶ谷の親分が仙之助を縛つて行くのも無理はないが、そいつは少し早まつたかもしれないよ。使ひ殘りの毒や、血染の匕首などは行李の中へ入れてしまつて置くものぢやねエ」
「左樣で御座います、親分」
 この無能な大番頭からは、平次は何の反應も求められません。
 この騷ぎの中へ、八五郎が歸つて來ました。
「親分、二軒共違ひなく行つて居ますよ」
「で?」
「時刻も合つて居るやうです。――尤も、神樂坂へ廻つて、待つてなんか居ずに音松を刺して、直ぐ歸つて來るやうな手順に行けば別だが――」
 和七と仙之助は一應不在證明アリバイを持つて居るやうですが、それが完全とは言ひきれません。
「よし/\俺には段々解つて來るよ。そこで番頭さん、今晩奉公人も親類の方も、皆んな集まつて貰つて下さい。あつしから話し度いことがあるから」
「へエー」
「八は番所へ行つて、仙之助を貰つて來てくれ。たつた一と晩のことだから、何とか話がつくだらう。平次が見張つて居て、明日は間違ひなくお返し致しますつて言や宜い」
「へエー」
 八五郎を出してやると、平次はもう一度念入りに上總屋の外廻りを調べました。


 その晩、上總屋の奧に集まつたのは、家族、奉公人、近い親類などざつと十七八人。平次はその緊張きんちやうした顏を見廻して、靜かに語り出しました。
 八疊と六疊を打ち拔いて、燭臺しよくだいが四つ、平次の前にはお染とお今。その横には和七と仙之助。親類方はその後ろへ、奉公人はその横に並びました。
「さて、皆の衆。こんな事を言ふと驚くかも知れないが、言はなきや何時までも皆んなの迷ひが晴れまい。實は――」
 平次は口を切つて、一座を見渡しました。
「――」
 緊張しきつた顏と顏、――多分平次の口から、二人まで人を殺した恐ろしい下手人げしゆにんの名を聞けるのかも知れないと思つて居る樣子です。
「驚いてはいけない。飯田町の上總屋、――神田から番町へかけても、並ぶ者がないと言はれた大分限だいぶげんの上總屋には、氣の毒なことに一文の金もなかつたのだ」
「――」
 水をブツ掛けたやうな恐怖と驚愕、一座は顏を見合せました。
「少くて三萬兩、五萬兩、どうかしたら十萬兩もあるだらうと思はせたのは、上總屋の主人の腕だ。まことはすぐる年の日光の御修覆ごしうふく下受請したうけおひの手違ひから、工事のやり直しをしたために、十萬兩からの出費で、上總屋は一文なしになつてしまつた」
「――」
「商人は信用を落しては一日も立ち行かない。上總屋はその祕密が知れさうになると番頭を代へ、大金を何處かに隱してあると見せかけ、世間にもさう思はせて、苦しい店を今日迄張つて來たのだ。死んだ後でいくら探したところで、十兩とまとまつた金が出て來るわけはない。皆んなも、もう床を剥いだり、壁を崩したりするやうなあさましい事は止した方が宜い。――この平次が、三日がかりで帳面を調べた上、取引先を一軒々々訊いて廻つたんだから、これは間違ひはない。お氣の毒だが、上總屋に殘るのは、少なからぬ借金だけだ」
 恐ろしい失望が、十七八人の顏を暗くしましたが、その間にたつた二人、厄介な因縁いんねんから解放されて、ホツとした顏を見合せた者があります。
「お孃樣」
 仙之助は和七をへだてて、お染に聲を掛けました。
「私は、私は――」
 お染はさすがに『私は嬉しい』とは言ひ兼ねましたが、仙之助をかへりみたその明るい表情には、幸福感があふれて居ります。
「御安心なさいまし、お孃樣。お店は私が宜いやうにいたします。一生懸命になつたなら、昔ほどではなくとも、お孃樣をお困らせするやうなことはないでせう」
 上總屋が一文なしと決れば、武家方の養子は破談になるのに決つて居ります。今までお染のために寶探しに熱をあげて居た仙之助は寶がないと決れば、さすがにこみ上げて來る嬉しさをどうすることも出來なかつたのでせう。
「仙之助はお染と一緒になつて、上總屋の身上を盛り返して行くが宜い。――誰もそれに不服はあるまい」
 平次のさう言ふ聲も嬉しさうでした。が、事件がまだ片付いたわけではありません。二人まで大の男を殺した下手人は解つて居なかつたのです。


 その晩、通り魔のやうな影が一つ、お染の部屋へスルリと滑り込みました。
 有明の行燈を吹消して、逆手さかてに持つた匕首あひくちが、お染の寢首へ――
「御用だツ」
 曲者の匕首を持つた手は無手むずつかまれました。ぎやくひねつて膝の下に敷くと、
「八、灯りだ」
 平次の聲です。
「おい」
 手燭を持つて、六法を踏むやうに飛んで來たガラツ八。平次の膝の下の曲者の顏を見て、さすがに仰天しました。
「こいつが曲者ですかい、親分」
「見るが宜い。――持前の愛嬌などは何處にもない、夜叉やしやのやうな女ぢやないか――あツ舌を噛み切りやがつた」
 平次の膝の下で、殺人鬼のお今は、舌を噛み切つたのです。怨みといきどほりに燃える顏はゆがんで、キリキリと結んだ唇からは、絲を引いて血が流れます。
        ×      ×      ×
 事件が濟んで了つてから、ガラツ八の燃える好奇心に對して、平次はう言ひます。
「重三郎は主人のをひで、音松は主人の弟だ。この二人とお染を殺せば、萬といふ金が遠縁乍らめひの自分へ入つて來るとお今は考へたのさ。重三郎を殺したのが、力の要る仕事のやうに思はせて、その實非力な仕業と解つて、俺は下手人は女ぢやあるまいかと思つたよ」
「へエ――」
「帳面の紙を切つて、重三郎と音松をおびき出したのは、一應仙之助の仕業のやうに見えたが、右肩下がりの字なんか誰でも眞似られるよ。――それから、音松を殺した晩は、頭痛がすると言つて、早くから自分の部屋に籠り、そつと窓から脱け出してゐる」
「なアる――」
石見いはみ銀山と血染の匕首あひくちを、仙之助の行李かうりに隱したのは、賢いやうでも女の猿智慧さ。あんな事をしたので、いよ/\俺は仙之助が潔白けつぱくだと思つたよ。お今は自分の思ふ通りにならない仙之助が憎らしくてならなかつたんだ」
「――」
「上總屋には十兩の金もないとわかると、今度は仙之助と一緒になりさうなお染が憎くなつた。お今は最初此家を乘取つて仙之助と一緒になるつもりだつたかも知れない――兎も角、昨夜はつきりお染と仙之助の氣持が解つて、急にお染を殺す氣になつたのさ。あの愛嬌者のお今の顏が急にこはくなつてお染を睨んで居るのが容易でなかつたので、俺はお染の代りにあの部屋で待つて居る氣になつたのさ」
「へエー、驚いたことだね、親分」
もつとも、お今のやうなのばかりぢやない。女の中には、何萬兩の金がないと知れて、かへつて喜ぶお染のやうなのもあるよ。仙之助も仕合せ者さ」
「へツ」
くな/\。そのうちにお前にも、良いのを見付けてやるよ」
 平次はさう言つて面白さうに笑ふのです。





底本:「錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入」同光社磯部書房
   1953(昭和28)年11月15日発行
初出:「オール讀物」文藝春秋社
   1940(昭和15)年6月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:門田裕志
2016年7月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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