銭形平次捕物控

路地の小判

野村胡堂





「親分、笑っちゃいけませんよ」
「何だ、八」
「親分もあっしも同じ人間でしょう」
 ガラッ八の八五郎はまた変なことを言い出しました。
「その通りだ、眼が二つ、口が一つ、なるほど、こいつは不思議だ。今まで気が付かなかったが、手前てめえの言う通りお互にあんまり変っちゃいないね、八」
 銭形平次もこの調子です。
「まぜっ返しちゃいけません。――ね、親分、その同じ人間のあっしが、どう修業しても、親分のような良い御用聞になれないのは、どういうわけでしょう」
 ガラッ八はつくづくそう言うのでした。歳は幾つも違わないはずですか、人間の貫禄はあまりに違いすぎます。
「そう言うなよ、八、手前の方がよっぽど人間が出来ているのかも解らないじゃないか、神様や仏様から見れば」
「神様や仏様は勿体もってえねえ、せめて八丁堀の旦那衆が見て、良い御用聞だとなるには、何か秘伝のようなものがありゃしませんか」
口伝くでんも極意もないのがこの道さ」
「それとも、摩利支天まりしてん様へ願をかけるとか何とか」
角力すもう取じゃあるまいし」
「でも、何かありゃしませんか、親分、あっしはどうせ大した人間じゃねえがお上の御用を聞いてる以上は、一生にたった一度でいいから、八五郎は天晴あっぱれだ――と言われてみてえ、それには何か、心掛けのようなものがありゃしませんか」
 ガラッ八の八五郎は、日頃になく思い込んだ様子で言うのでした。擬物結城まがいゆうきの狭い単衣ひとえなんがい顔を引締めて、思い込んだ様子が、日頃が日頃だけに、一脈の物の哀れを感じさせるのでした。
「八、大層改まったが、御用聞には型も極意もねえ。“馴れ”だけに頼って行くのは下根げこん、理詰めに物を考えて犯人を挙げるのは中品ちゅうぼん、“勘”で行って、百に一つも間違いはないのが上々だ。だから手前だって、下手に“馴れ”や“屁理窟”にはまり込まなきゃ、思いの外の手柄をするかも知れねえ。今度何かあったら、存分にその鼻を働かして、嗅ぎ出してみるがよい」
 こうしんみり言う平次、それほどの名人になって、快刀乱麻を断つような明智の持主でも、最後はやはり人間の「直覚」に頼らなければならないことを知っているのでした。
「勘なら、姐御あねごなんざ大したものだぜ、あっしの腹の中から、財布の中まで見透しだ」
「あれ、八五郎さん」
 お静はたまり兼ねて、障子越しに声を掛けました。
「そこに居なすったんか、――こいつはいけねえ」
「朝の御飯の催促なんでしょう」
「へッへッ、図星で、ここに泊ると、お茶と香の物がたまらねえ」
「お世辞を言っちゃいや、八五郎さん」
 まだ娘気分の抜け切らぬお静は、こう言って、朝の支度に取掛りました。
 ちょうどその時でした。
「大変! 親分さん、すぐお願い申します」
 飛込んで来たのは、横山町の鳶頭かしらです。
「どうなすった、鳶頭」
大黒屋だいこくやの番頭正次郎しょうじろうさんが殺されて、今日細川様へ納める五千両の大金が、けむのように消えてしまいましたぜ」
「なるほど、そいつは大変だ」
 平次は箸をほうり出して立上がりました。横山町の大黒屋市兵衛というのは、油の小売から仕上げて、今では廻船問屋から、大名方の御金御用達まで、承っている大町人だったのです。


 それから半刻はんとき(一時間)の後、銭形平次と八五郎は、横山町の現場に駆け付けておりました。
「寄っちゃならねえ、手なんか付けると掛り合いだぞ」
 番太の老爺おやじと町役人が声をからして群がる野次馬を追っ払っているのも無理はありません。大黒屋の裏口で殺されたという、番頭正次郎の死体は取り入れましたが、不思議なことに死体があったという裏口から、大川へ通う路地には、しおり代りにいたように、真新しい小判が、幾十枚となく落散っているのです。
 野次馬の眼が、その小判に光ったのも、番太が声をからしたのもそのため、死体はともかく、路地の小判までは、検屍の役人が来るまで、手を着けてはならなかったのでした。
「銭形の親分さん、とんだ御苦労様で」
 主人の市兵衛は、さすがに落着いてはおりますが、今日に迫る五千両を、どう工面して細川様へ納めたものか、その心配に打ちひしがれておりました。
 後ろから顔を出したのは、老番頭の嘉助かすけと手代の福三郎、これは遠縁に当る男で、いずれは、大黒屋のめいで、奉公人とも娘分ともなく養われている、お徳と嫁合めあわせて、暖簾のれんを分けるだろうと言われている男でした。
「とんだことでしたね、――これほどの騒ぎを朝まで誰も知らなかったのですね」
「誰も気が付きません」
 と主人市兵衛、六十近いが少しふとった、精力的な感じの男です。
「五千両の金が用意してあることは、誰と誰が知っていました」
「店中で知らないものはありません。御領地の熊本から船で送られた、肥後米ひごまいの代金でございますから」
 そう言ううちにも、市兵衛の心痛は目に見えて深まる様子です。
「失礼ですが、それを今日中に納めなさる当てがありますか」
 平次の間は露骨で無遠慮でした。
「何とかしなければ、私はくびでもくくらなければなりません」
 五千両の現金は大黒屋にとっても大金でしょう。主人の後ろに中腰になっている大番頭の嘉助が、居ても立ってもいられないほど気を揉んでいる様子を見ると、この工面は市兵衛が軽く言うほどの些細ささいなことではないでしょう。
 平次は雇人達を一とわたり見廻すと、若い手代の福三郎に案内されて、六畳の仏間に通りました。
 顔へ掛けたきれを取ると、荒縄で喉笛のどぶえを絞め上げられた、番頭正次郎の顔は、二た眼とは見られないすさまじいものです。
「お前さんは?」
「あの、徳と申します」
 丸ぽちゃの快活そうな娘は、大しておくれた色もなく、死体の番をしているのでした。
「男達が寄り付かないのに、親切なことだね、――変死人は気味のいものではないが」
 平次はこの親切で明るい娘を勇気付けるように、こんな事を言っております。
「でも、正次郎さんには、お世話になりましたし、男の方はほかに用事もあることですから」
 ともすれば愛嬌あいきょう八重歯が漏れて、頬へえくぼの寄るのを、場所柄必死と噛み殺しているといった肌合の娘です。年は少し取って、やく――どうかしたら、二十歳はたちを越しているのかもわかりません。
「八、見るがいい」
 平次は死体の頸から切り離して、そのまま肩のあたりに掛けてある荒縄を指しました。
「船具の縄だね、親分」
 下手人の当りもこんなところから付くでしょう。ガラッ八は尖鋭せんえいなカンを働かせるつもりで、しきりに鼻をヒョコつかせております。
「喉の絞めたあとを見るがいい」
「…………」
 八五郎はうなりました。平次が指摘した死体の喉には、荒縄とは似も付かぬ、細くて深い溝が一と筋、歴々ありありと走っているではありませんか。
「あれはカンじゃない、物の理窟だ。番頭さんを絞め殺したのは、真田紐さなだひものような、丈夫で細いものだ。下手人はその紐を捨てて行くと、足が付くと思ったが、何で殺したか判らないと、後が面倒で、細い真田紐を死骸の頸から解いて、その後へ、その辺に落ちていた荒縄を巻き付けた」
「…………」
 ガラッ八は一句もありません。こうなると、下根げこんのカンの頼りなさが、はっきり呑込めます。
「この下手人は容易ならぬ人間だよ、落着いて、横着で、考え深くて――」
 平次は明日の大取組を前に、相手の力量を考える力士のように、思わず深々と腕を組みました。
「親分」
 心配そうにその顔を覗く八五郎。
「少し外へ出てみよう」
 平次は八五郎を促して、外へ出て行きました。


 路地の死体のあったあたりに落ちていた小判は、丁寧に勘定すると七十八枚、それから横山町の大通りから両国の方へも、バラバラと二十二三枚こぼれておりましたが、朝のうちに往来の人に拾われたのも何枚かあるでしょうから、正しい数は判りません。
 小判のしおり辿たどって行くと大川端で、ここには幾そうとなく船がもやっております。
「八、昨夕ゆうべから暁方あけがたへかけて、出て行った船がなかったか、訊いてくれ」
 八五郎は飛んで行きました。トボケた顔と、暢気のんきな調子でカモフラージュして、この大事な問を八方へ持掛けましたが、結局、
「誰も気がつかなかったそうですよ、船頭は舫っている時でも気が張っているから、や、かじの音を聞き逃すはずはないと言いますよ」
「フーム」
 水際みぎわに立って、折から引汐ひきしおの川底ばかりにらんでいた平次も、あきらめて立ち上がります。いつぞや水の中に千両箱を三つ隠した曲者くせもののことを思い出したのでしょう、しかし、大川では人目が多い上、この汐具合では、千両箱は愚か、香箱も隠せそうはありません。
 二人はがっかりして引揚げました。主人の市兵衛は五千両の工面でしょう、心痛と懊悩おうのうの看板のような顔をして出かけ、老番頭の嘉助は眼鏡を掛けて、算盤そろばんと首っ引きのまま、その側に手代の福三郎を始め、丁稚でっち小僧は、立ったり坐ったり、ただそわそわとしております。
 平次は廊下続きに土蔵の方へ行くと、後ろから案内顔の手代が二三人いて来ましたが、それを皆んな追い返して、まだ仏様の世話をしているお徳を呼出しました。
「誰が土蔵破りか解らないから、うっかり案内を頼めないよ、おめえさんなら大丈夫だろう」
「…………」
 お徳は生真面目にうなずいて、廊下伝いに土蔵へ案内しました。
 二た戸前の土蔵ですが、五千両持出された方は、廊下続きの内蔵うちぐらで、廊下の雨戸は外から破られ、主人の部屋から持出した鍵で、二重の締りを易々やすやすと開け、中から明日の用意に積んであった千両箱を五つ、物の見事に持出してしまったのです。
「ところでお徳さん、――この店中で、主人から一番信用されているのは誰だろう」
 平次は妙な事を訊ねました。
「殺された正次郎さんでしたよ、――嘉助さんも、あの通り年を取ったし」
 お徳は躊躇ちゅうちょする様子もなくこう言い切ります。
「福三郎は?」
「可愛がられてはいましたけれど、――お金の事は任せてくれなかったようです」
 お徳は少し淋しそうでした。許嫁いいなずけの福三郎が、どんなに良く勤めても、正次郎ほどの信用のなかった口惜くやしさを、処女らしく隠そうともしません。
「親分さん、私が御案内いたしましょう、――お徳さんはお茶の支度でもするがいい」
 大番頭の嘉助は、店中の者の不安を代表してやって来ました。
「それはいい塩梅あんばいだ。いまお前さんに来て貰おうと思っていたところだ」
 平次は愛想よく迎えます。
「親分さん、正次郎も可哀相ですが、私は旦那がお気の毒でなりません。かがめたことのない腰を屈めて、当てもなく出て行きましたが――」
 嘉助はフッと口をつぐみました。こんな事まで言ってはと思い当ったのでしょう。
「五千両られると、後には少しの用意もなかったかい、番頭さん」
 平次の胸には、妙な疑いが芽ぐみます。
「そんな事はございません。五千両盗られても、まだ二千両はあの通り用意がございます。ほかに掻き集めると千両はあるでしょう、差当りの不足は二千両ほどで」
「それくらいのことなら、細川様へ申上げて、日限を延して貰うわけには行かないものかな」
「とんでもない、大名方ときた日には、待てしばしがございません。それだけにまた私どもの利潤もうけも多いわけで、――今日納める五千両がまとまらないと、出入差止めになり、仲間への顔向けもならなくなります」
「なるほど、それは困るな」
 平次は大番頭の指した千両箱を動かしてみました。重さから感じが、間違いもない千両箱です。
「親分、主人の行く先を突き止めて来ましょうか」
 ガラッ八は鼻をうごめかします。いつぞや浜町の浪花屋なにわやの主人が、払いに困って、三千両を盗まれたと届出た例のあるのを思い出したのでしょう。
「馬鹿、――つまらないカンなんか働かせて、人様の物笑いになるよ。それよりこの町内を始め、浜町から両国へかけて、何か変ったことがないか見て来るがいい。船で逃げたんでなきゃ、下手人かその相棒はまだこの辺にウロウロしているに違いねえ、あれだけ小判をバラ撒いて、眺めていることだろう」
「なるほどね」
 ガラッ八は飛出しました。
 平次はその上帳面まで見せて貰いましたが、大黒屋も、五千両盗まれた上、また半日のうちに、五千両纏めるのには困った様子ですが、商売の方は行詰った様子もなく、一つの土蔵の中には、穀物が一パイ、一つの土蔵の中には、金に飽かして買い込んだ、骨董什器こっとうじゅうきが一パイ入っております。


「親分、ちょいと」
 ガラッ八は四半刻しはんとき(三十分)ばかりすると帰って来ました。
「何だ、八」
「変な野郎が居ますよ。よっぽど引っくくって来ようかと思いましたが、親分に訊いてからと思って、そっと帰って来ましたが」
「何だ、それは?」
「今日は両国稲荷りょうごくいなりの縁日でしょう」
「それがどうした」
「大道見世物や、露店が二三百出ますぜ」
「…………」
「夜の明けないうちから小屋掛けをしているに不思議はないが、一つ恐ろしくかけ離れて、横山町三丁目に、河童かっぱの塩漬を見せる小屋があるから驚くでしょう」
 ガラッ八は勢い込んで続けます。
「ちっとも驚かないよ、地割りに漏れたもぐり香具師やしだろう」
「大きな親爺おやじが、女房と二人で、今から木戸に坐っていますが、プカプカいぶしている煙草たばこは、国府こくぶの上等、――お大名の御用に上がるような葉だったらどうします、親分」
「少しおかしいな」
「少しどころじゃありません、あれが昨夜ゆうべの泥棒に違いないと思うがどうです。これは“馴れ”や“理窟”じゃない、あっしのカンで」
「フーム」
「五千両持出したところを、番頭の正次郎に見付かり、追っかけて来たのを路地で絞め殺した、――が、町木戸がうるさいから、夜中じゃ遠く逃げようはない、ことにこの辺は浅草御門や、両国の橋番所、伝馬町でんまちょうの大牢まで近いから、千両箱を五つ持って、どこへも行けるわけはねえ、幸い用意した河童の塩漬、あの中へ隠して、小判の塩漬などは良い智恵じゃありませんか」
 いやもうガラッ八の得意さ――
「五千両盗んだ大泥棒が、人まで殺して逃げ場に困っているくせに、国府などをっているだろうか」
「…………」
「八、あまり騒ぐんじゃないよ、そっと行って、裏から呼出して、十手のガン首でも見せて、河童の塩瓶しおがめを引っくり返してみな、中から、今朝拾った小判が二枚か三枚出て来るから」
「ヘエ――」
「その上うんと脅かして、昨夜から今朝へかけて、横山町をうろうろしていた人間がなかったかどうか、訊いてみるがいい」
「ヘエ――」
 ガラッ八は一句もありませんでした。平次のカンの素晴らしさに圧倒されて、そのまま飛出しましたが、間もなく、旋風つむじのように飛んで帰りました。
「どうした、八」
「塩漬の中には小判なんかありませんよ。河童の見世物は、死んだ犬の子を乾し固めたんで」
「国府は?」
「それを訊くと元は町人で、煙草だけはぜいを尽したから、落ぶれても馬糞煙草まぐそたばこめねえ、――と言やがるんで、その口の下から女房も、うちの人は酒を飲まないから、せめて煙草の贅をさせているんですよと――あごを突き出しましたぜ。もっともそう言う女房は少しくらっていたようで、亭主の国府に張合って、朝から濁酒どぶろくでもあおったんでしょう」
「八、そいつは本当か」
「本当にも嘘にも、作の入れようがねえ」
「財布の中にも塩瓶にも金がなきゃ、そいつは思いの外大物かもしれない、一両拾ったなら判るが、香具師がただの道楽で国府は変りすぎる、来い八」
 平次は飛出しました。その頃の国府をくゆらすのは、今(昭和十一年当時)の金口きんぐちや葉巻にも匹敵する贅で、もぐりの香具師の好みにしては、少し変でないことはありません。


「御用ッ」
 八五郎はいきなり河童の見世物へ飛込みました。何かよくない尻があったものと見えて、昼にも間があるのに幕張りの粗末な小屋を畳みかけていたのです。
「何をしやがる。安岡っ引に御用呼ばわりなどをされる覚えはねえ、側へ寄ると河童をけしかけるぞ」
「神妙にせい」
くそでも喰らえッ」
 二匹の犬のように、猛然と噛み合う二人、後ろからは女房がガラッ八の髷節まげぶしへ、必死とブラ下がってしまいました。
「あッ、痛えッ、放せッ」
「何をッ」
 滅茶滅茶な騒ぎです。一と足遅れて駆け付けた平次は、ようやくこの噛み合いを分けて、男女二人をキリキリと縛り上げました。
「歩けッ」
 場所は両国、盛りこぼれるような野次馬の中を、縄付きを引いて行く照臭さ、あまり人を縛ったことのない平次は、ガラッ八の英雄的な得意さに任せて、一と足先に番所へ辿たどり着きます。
「お、銭形の、今日はお手並拝見に出て来たよ」
「お、三輪みのわ兄哥あにき
 銭形平次の顔は少し曇りました。またこの競争相手――三輪の万七――が出て来ては、事件がかえってこんがらかりそうでならなかったのです。
「大層遠慮するじゃないか、銭形の。何だって大黒屋の主人を縛らないんだ。いつぞや浜町の浪花屋がやっただ、今日に迫った五千両の工面に困って、番頭を人身御供に上げて一時逃れをするつもりだろう」
「それは違う、三輪の。あの術はもうこの界隈かいわいで二度とくり返す馬鹿はあるまい」
「そう思うところが付け目さ」
「それに大黒屋の身上は、三千両五千両で困るほどに傾いちゃいない。差当り現金を集めるのに困ったところで、昼頃までには、市兵衛はきっと五千両こしらえるから」
「大層信用したんだね」
「見ているがいい、今相棒を一人縛って来たから、あの男が口を割りさえすれば、五千両盗んだ奴も、番頭の正次郎殺しもすぐ判る」
 平次は河童の塩漬の中にも、香具師やしの懐中にも小判のかけらも見えないとすれば、早くもどこかへ隠したか、でなければ、横合から五千両をさらわれて、自棄やけのやん八で国府こくぶ濁酒どぶろくに贅を尽していたのだと睨んだのです。
「名前は何と言う、どこの者だ」
 ガラッ八の引いて来た香具師夫婦を、平次は静かに迎えて、こう訊ねました。
「名前は銅六どうろく、――銅屋あかがねや六兵衛と言うんだ、女房はお浜、二人とも江戸の生れだ」
 銅六は昂然としておりますが、言う事は思いの外素直です。
「銅六――そうか、いい悪党だ。何だって五千両のえさなんぞに引っ掛ったんだ」
「へッへッ、銭形の親分さん、――へッへッ存じていますよ、一度は鼻を明かせようと思った相手だ。忘れてなるものか、――」
「そんな事はどうでもいい、俺は大方筋書を読んだつもりだが、――お前の口から聴きたい、店で手引をしたのは誰だ」
「へッ、へッ」
「福三郎か、嘉助か――」
「へッ、へッ、お察しの通りで、銭形の親分はさすがに眼がたけえ」
 書き損ねの達磨だるまのような髯面ひげづらゆがめて、銅六はニヤリニヤリと笑うのです。
「馬鹿野郎」
 銭形平次は立ち上がると、いきなり平手で銅六の頬桁ほおげたを一つ喰らわせたのです。「平次が縄付きをつ――」こんな事があり得るでしょうか、ガラッ八は眼の前で行われた奇蹟に仰天するばかりです。
「あッ」
 銅六もあまりの不意に、さすがに度胆を抜かれた様子です。
「たった今この平次の鼻を明かしてやりたいと言ったのは誰だ、そんな間抜けな心掛けだから、五千両チョロリと横取りされて、犬の子の死骸の番人なんかしているじゃないか、そのうえ正次郎殺しの罪でも背負しょい込んで、三尺高え木の上へ顎を載っけりゃ世話アねえ」
「…………」
「八、追っつけ旦那方が見えるだろう。ここに悪党がかったのが一人居るから、構うことはねえ、番頭殺しの下手人にして引渡してしまえ、――知れたこと、五千両は大川へ沈めたのさ。伝馬町へ送られりゃ、容易のことでは明りが立たねえ」
 平次の舌はその手よりも辛辣しんらつです。
「わッ、冗談じゃねえ、俺が下手人なんかでたまるものか。五千両持出す相談には乗ったが、人なんか殺した覚えはねえ」
 銅六もさすがに仰天しました。
「黙らねえか、悪党らしくもない、相棒の正次郎は殺されたんだ、お前の身の明りを立てる者は、この平次より外には一人も居ねえ」
「恐れ入った、銭形の親分。みんな言う、勘弁しておくんなさい」
 他愛もなく崩折れる銅六。
「親分さん、この通り意気地のない亭主でござります。人相は悪党並みですが、とても人なんか殺せるような男じゃありません。五千両持出す話へ乗ったのも、この人にしちゃ荷が勝ちすぎたんですよ、河童の番人をするぐらいが分相応で――」
 女房のお浜は弁じ立てます、こっちが二三枚悪党が上でしょう。


 銅六夫婦の言うのは、至って簡単でした。大黒屋の番頭正次郎とは、元よく暮していた頃からの知合で、二三日前道で逢って合力を持ちかけると、それじゃ大黒屋の土蔵から、五千両持出すから、それを大川まで運び、船で永代えいたいの知合の家へ隠してくれ、日は両国稲荷の御縁日の前の晩、時刻は丑刻うしのこく(午前二時)前後、場所は横山町三丁目、と話が決って、銅六はいかさまの河童の見世物まで用意し、夜っぴてそこにいても、人に疑われないだけの工夫をしたのです。
「ところが、番頭さんはとうとう来ません、たぶんほかに相棒を拵えたのだろうと、腹を立てて夜の明けるのを待っていると、大黒屋の裏口で、本人が殺されているという騒ぎじゃありませんか、しゃくにさわるが、相手が死んじゃどうにもならない。中ッ腹で女房と喧嘩した上、女房が濁酒をあおったから、あっしは国府を買って思う存分喫ったんで――」
 銅六の話は馬鹿馬鹿しいがよく筋は通ります。
「それじゃ訊くが、正次郎を殺したのは誰だ?」
 と平次。
「五千両横取りした奴でしょう」
「それは判っているが、正次郎が一番怖がっていたのは誰だ」
「主人の市兵衛ですよ」
「それから」
「番頭の嘉助、――こいつはヨボヨボのくせに、算盤そろばんがはっきりしているから、誤魔化ごまかしが付かねえとね」
「福三郎は?」
「主人の遠縁で、大きな面をしたい野郎だが、人間はあめえという話で」
「あとはどんな事を言った」
「あの家の中で、人間らしいのはお徳の阿魔あまだ。あんな女は滅多にねえ――って言ってましたよ」
「よし、判った」
 が平次はハタと行詰りました。金を持出したのは正次郎と判っても、その正次郎が殺されてしまっては、この先どこへ疑いを持って行きようもありません。
「銭形の兄哥あにき、――やはり主人が臭くはないのかえ」
 三輪の万七はいい心持そうでした。が、幾度も幾度も懲りているので、今度はさすがに縛ろうとは言いません。
 大黒屋へ帰ると、中は火の消えたような淋しさ、雇人達はあっち、こっちに幾かたまりにもなったまま、仏間には朋輩の死骸のあることも忘れて、押え切れない不安を語り合っております。
「銭形の親分さん、悪者が捕まったそうじゃございませんか」
 お徳は飛んで出ました。
「捕まったよ、お徳さん」
「五千両は?」
「それがどこへ行ったか解らない、――もっとも蔵から持出したのは、正次郎と判ったが」
「えッ、あの、正次郎どんが――本当ですか、親分さん」
 お徳の驚きは一と通りではありません。
「せっかく、死骸の番までして、誰も構わないのに、線香を絶やさないようにしている、お前には気の毒だが、正次郎は良くない男だ。子飼いの奉公人が、主人の身代に関わるような金を持出して、罰が当らずには済むはずはない」
「でも親分さん、死んだ者へ、線香一本上げる者もないような人達ばかり居る家なんです。正次郎どんばかり悪いとは言えませんよ」
「…………」
 お徳は妙に考えさせることを言います。
「この家はそんな家なんです、皆んな銘々のことしか考えてはいません」
「…………」
 平次の驚きの前に、お徳は淋しいが、妙に情熱的な笑いを見せて、元の仏間に入って行きました。間もなくかねがします。
 申刻ななつ(午後四時)近くなって、主人の市兵衛は二千両の現金を持たせて帰ってきました。それに蔵の中の二千両、あとは店やら奥から持出して五千両に纏め、番頭の嘉助に丁稚でっちを二人、鳶頭かしらまでつけて、細川様御中屋敷に送ってやりました。
「まず、これでよし」
 ホッとした市兵衛の顔を見ると、平次は今まで、何にもしていなかった事を責められるような心持です。


 五つの千両箱は、蔵から持出したに間違いはありません。廊下の軒下、ちょうど雨の後の軟かい土の上に、乱雑に置いた跡まではっきり読めるのですが、家の中は言うまでもなく、隣の穀蔵の米俵まで調べましたが、どこにも見付からなかったのです。
 母屋おもやは、幾度も幾度も、床下も、天井裏も、下水の中も、ゴミ箱も見ました。が、五千両は愚か、鐚銭びたせん一枚その辺りには見付かりません。
「引揚げよう、いつまでいても無駄だ」
 暗くなると平次はもう見切りを付けました。
「下手人は逃げ出しますよ、親分」
 八五郎は心配でなりません。
「五千両は重いよ、背負しょって逃げるにしても、今日や明日じゃない」
「ヘエ――」
「せっかく取込んだ金を捨てるものか、帰ろう」
 平次は未練気もなく立去りかけます。
「銭形の、俺が夜っぴて調べ上げて、下手人を縛っても構わねえだろうな」
 三輪の万七は眼を光らせました。
「遠慮に及ばねえよ、三輪の兄哥あにき
 平次は何のこだわりもありません。
「銭形の親分さん」
「何だ、お徳さんか」
 小走りに追って来たお徳は、そっと平次の耳に唇を寄せました。
「なんか変ったことがあったら、親分さんのところへ使いを出しますよ、――使いがなきゃ、私が一と走り――」
 お徳は平次のファンの一人だったのでしょう。一つは夜っぴて踏み止まって、皆んなにいやな思いをさせる、三輪の万七の執拗さに反感を持ったのかも知れません。
「有難うお徳さん、頼むぜ」
 香ばしい息を頬に感じながら、平次はさり気なく言うのでした。
 柳原土手の闇を急ぐともなく二人。
「親分、下手人は誰でしょう」
 八五郎はたまり兼ねて声を掛けました。
「判らねえよ」
「五千両はどこへ持出したでしょう」
「それが判りゃ下手人は一刻いっとき(二時間)経たないうちに挙げられる」
 平次も本当に手掛りをつかめなかった様子です。
「福三郎じゃありませんか――大黒屋の遠縁の者だが、番頭にもしてくれず、当分は暖簾のれんをわけて貰う当てもなく、思い合っているお徳と祝言をする見込みも立たず、主人の市兵衛を少しはうらんでいる様子ですが――」
 これがガラッ八のカンでしょう。
「それは俺にも解るが、福三郎は腹から善人で、おまけに気が弱い。カッとなったら人を殺せないこともあるまいが、たくらんで人をあやめる柄じゃないし、それに五千両を隠すなんて器用なことの出来る男じゃねえ」
「…………」
 場末の芝居の二枚目のような福三郎は、なるほど人を殺せそうもありません。
 その晩は何事もなく明けて、あくる日の朝、辰刻いつつ(八時)少し廻った頃――。
「親分さん、大変なことが起りました」
 大黒屋のお徳が、お静に案内させて入って来ました。
「何だ、お徳さん、五千両見付かったのか」
「いえ、柳橋下から、小判が八百何十枚か入った千両箱が揚がって大騒ぎですよ」
「あとの四千両は?」
「それは判りません」
「それじゃつまらない、いずれ行ってみるが――三輪の兄哥は」
 平次は驚く色もありません。
「一生懸命です」
 お徳は少し面白そうです。
 四方山よもやまの話をして、間もなくお徳は帰りました。それに続いて、平次とガラッ八が出かけようとすると、
「ちょいと、お前さん」
 お静は背後うしろから切火を打ちながら考え深そうに言うのです。
「何だ、お静」
「こんな事を言っていいでしょうか、私にも少しばかり思い当ることがあるんですが」
「女房の意見で、御用聞が人を縛るわけにも行くまいが、何かの足しになることなら、言った方がいい」
 平次は草履ぞうりの爪先を直しながら、大して気にも留めない様子でこう言います。
「男の意気地は男同士でなきゃ解らないと言うように、女の心持は、女でなければ解らないところがあるでしょう」
「それはあるだろう。第一子供を生む心持なんてのは、男に金輪際解りっこはない」
 平次は少し茶化しております。お静に心安く言わせるためでしょう。
「そんな話じゃありません。先刻さっき来たお徳さん、あの方を男の人が見たら、どう思うでしょう」
「元気で、明けっ放しで、親切で、なかなか良い娘じゃないか、それがどうしたんだ」
 平次は改めてお静の顔を見ました。
「女から見ると、あんな人は本当に底が知れないと思います」
「それだけか」
「え」
 お静は極り悪そうに俯向うつむきました。言わでものことを言ったと思ったのでしょう。
「そいつはお前のカンだ、大きに役に立つだろうよ。八、行こうか」


 大黒屋へ行くと、また一つの騒ぎが始まっておりました。お徳が出かけて間もなく、手代の福三郎は七顛八倒しちてんばっとうの苦しみを始め、
「俺が悪かった、――俺が悪かった」
 と言い続けて死んでしまったのです。
 町内の本道(内科医)を呼んで見せると、岩見銀山の鼠捕ねずみとりで死んだと判りましたが、食い物は店中同じですから、何か理由わけがあって毒を飲んで自害したと見るの他はありません。
 その騒ぎの中に、何心なく帰ったお徳の歎きは、本当に見る眼も哀れでした。
「あ、福三郎さん、何だって死んでしまったの、私にそう言ってくれれば、一緒に死んだのに」
 猛毒に痙攣けいれんして、醜く歪んだ福三郎の死骸にすがり付いたまま、お徳は日頃の気丈さも振り捨てて、真に身も浮くばかり泣き濡れましたが、やがて、刃物を持出して、やにわに自分の喉笛へ突っ立てようとするのです。
 多勢おおぜい寄って刃物をもぎ取ると、死にたい死にたいと暴れ狂うお徳を押え付け、とうとう紐や帯でグルグル巻きにしてしまいました。そうでもしなければ、飛出して大川へ飛込んだかもわかりません。
 平次とガラッ八はその騒ぎの中へ着いたのでした。
 一らちを聴いて、川から引揚げた千両箱を見せて貰って、その角の壊れを丁寧に調べると、今度はまだ大黒屋に居る本道に逢い、福三郎はしんの病(心臓病)があって、持薬じやくを飲んでいた事、――二三日前二日分の粉薬をやったから、まだ一二服、残っているだろうという事――等を聞きました。
 福三郎の荷物や手廻りの品を調べましたが、薬などは一と包もありません。
「お徳さん、気の毒なことになったな、――福三郎は正次郎を殺して、自分の心にとがめて死んだんだろう。諦めるがよい、お前が泣いてやっても、その心掛けじゃあまり功徳になるまい」
 平次はそう言いながら、お徳を抱き起しましたが、
「あッ」
 身を揉む懐中ふところへ、手を入れて、何やら紙に包んだものを引出しました。
「やはり持っていたのか、――心の病の薬とすり替えた岩見銀山が二た包、一つはお前の留守中に、福三郎が飲んだはずだ」
「違う違う、――それは私のしゃくの薬」
 お徳は必死とあらがいます。
「いや、今医者に見て貰うから、癪の薬か岩見銀山か、すぐ判るよ、――可哀相に福三郎は、恋仲のお前に殺されると知らず、お前をかばいながら死んで行った」
「違う、――そんな、そんな馬鹿なッ」
 お徳は必死と身を揉みますが、先刻さっきの芝居が過ぎて、あまりに厳重に縛られたので、どうすることも出来なかったのです。
 少し蒼ざめた美しい顔にはタラタラと油汗を流し、唇を噛んだ血が豊かな顎に紅い糸を引いて、その凄まじさはありません。
「皆んなの衆、ここへ来て聴いてくれ、隣の仏間には仇同士の仏様が二つも居る。俺の言う事が違ったら、その時は違ったと言って貰おう、証人は二人の仏様だ」
 平次は美しい虫のように藻掻もがくお徳を見下ろしながら続けました。
「千両箱を五つ持出したのは正次郎だ。福三郎はそれを見付けて、路地で争ううち、お徳も起きて来て、福三郎に手伝い、とうとう、絞め殺してしまった、――福三郎はびっくりして人を呼ぼうとしたが、お徳は女ながら福三郎より三倍も五倍も太いから、正次郎の頸から自分の真田紐を解いて、荒縄で頸を締め直し、千両箱一つ叩き破って、中の小判をバラ撒き、残りは柳橋の下へ沈めた。これは外から悪者が入ったと見せかけ、あとの四千両を横領するつもりの細工だ」
「…………」
 平次の明快な推理に、誰も口を挟む者はありません。
「そう言っちゃ悪いが、主人は正次郎にも福三郎にもお徳にも辛く当った。とりわけ姪のお徳には、言うに言われぬ怨みもあったろうが、人一人殺しておいて、その死骸の側にケロリとして付いているお徳の大胆さに、気の弱い福三郎は怖ろしくなった。たった一と晩だが、お徳には、自分から離れて行く福三郎の心持がよく解るし、その上、気の弱い福三郎は犯した罪におびえて、いつ白状するかもわからない。お徳にも恋より四千両の金が大事だった。かねて何となく用意した岩見銀山を三包、福三郎の持薬と摺替すりかえ、あっしの家へ来て、その間に福三郎に飲ませるように仕向けた――」
「…………」
「帰って来るとあつらえ通り福三郎は死んでいた。早速残った二た包の毒薬を隠そうと思ったが、そのすきがない。帯の間に忍ばせて、ともかく、大芝居に取りかかった――」
「違う、みんな嘘だ」
 お徳は必死の声をあげました。
「まだそんな事を言うつもりか、お徳」
「四千両どこにある。それを見付けなきゃ、お前の言う事はみんなこしらえ事じゃないか。私の帯の間から出た薬の外には一つも証拠はない」
 お徳の言うのはもっともでした。
「四千両」
「千両箱が四つ」
 主人市兵衛始め、居並ぶ人々の口から同じ絶望的な言葉が吐き出されます。
「あんな重いものを、女や手代の手で、どこへ持って行けるものか」
 お徳の唇にはもう嘲笑が蘇生よみがえります。
「あんな重いもの?」
 平次は鸚鵡おうむ返しに言いました。千両箱というと、一両小判で千枚、一枚四もんめとしても四貫目、風袋ふうたいを加えると一つ五貫目は下りません。華奢きゃしゃな福三郎が、たった一つ柳橋まで持運ぶのでさえ大変な骨折だったでしょう。
「解った」
 平次は立上がりました。傍目わきめも振らずに元の蔵の中へ。――
「親分、蔵から出た事は確かですぜ」
 とガラッ八。
「また蔵へ戻したのだよ。それに気が付かないとは、俺も大間抜けさ」
 平次は千両箱を七つも積んであったところへ来ると、その床の上に敷いたかしの一枚板を取りのけ、窓から射す陽の光をたよりに、床板を動かしてみました。
 厳重そうに見えた釘が何の苦もなく抜けて、板が二三枚がされると、その下は重い物を置くために井桁に組み上げた特別の土台で、その土台の中ほど、外からはどうしても見えようのないわずかばかりの隙間に、四つの千両箱を縦に並べて落し込み、その上を埃と土とで丁寧におおってあったのです。
「あった」
 主人市兵衛の狂喜する顔、平次とガラッ八はそれを見捨てて元の部屋に帰ると、二人の仏の前に、縛られたままのお徳は舌を噛み切り、のた打廻って苦しんでいたのです。

     *

「八、俺はもういやだ、御用聞をしていると、こんな事も見聞きしなきゃならない」
 惆然ちゅうぜんとして牛の歩みを運ぶ平次の人間らしさを、八五郎は黙って見やるのでした。柳原やなぎわらの道には夏の陽が一パイに射しておりました。





底本:「銭形平次捕物控(五)金の鯉」嶋中文庫、嶋中書店
   2004(平成16)年9月20日第1刷発行
底本の親本:「銭形平次捕物百話 第四巻」中央公論社
   1939(昭和14)年
初出:「オール讀物」文藝春秋社
   1936(昭和11)年9月号
入力:山口瑠美
校正:noriko saito
2017年8月25日作成
2019年11月23日修正
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