手紙
竹内浩三
午前三時の時計をきいた。
午前四時の時計をきいた。
まっくらな天井へ向けた二つの眼をしばしばさせていた。
やがて、東があかるんできた。シイツが白々しくなってきた。
にこりともせず、ふとんを出た。タバコに火をつけて、机に向かった。手紙を書いてみたかった。出す相手もなかった。でも書いた。それは、裏切った恋人へであった。出さないのにきまっているのに、ながながと書いた。書きあげれば、破いて棄てるのだけれど、息はずませて書きつづけた。
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