雨月物語

凡例

鵜月洋




一 本書は、安永五年(一七七六)刊、野梅堂版(京都梅村判兵衛・大坂野村長兵衛の合板)の初版本を底本とした。
二 本文の覆刻に際しては、できるだけもとのかたちをくずさないように留意したが、文庫という性質上、つぎの方針をとった。
1 漢字はおおむね原本通りの漢字を用いた。
2 振り仮名は原文にあるものは大半これを付したが、とくにわかりきったよみで、あまり煩瑣はんさにわたる場合は、これを省略した。
3 送り仮名は原文ではかなり不統一であるが、これは特殊な場合をのぞいて、文語文法の送り仮名に改めた。
4 仮名づかいは旧仮名づかいの正規なものに統一した。
5 句読点は、原文ではすべて「。」であるが、読解に便利なように句点「。」と読点「、」に区別し、あらたに補ったものもある。
6 原文には改行・段落がないが、これも読解に便利なように適宜設けた。
7 文法上誤りと思われる箇所や、脱字・衍字えんじと思われる箇所もないではないが、作者特有の語法もあり、用語・用字への配慮もあると思われるので、なるべく原文通りにして、ときに脚注をもって説明した。
8 原文で「人/\」「おろ/\」などとあるところは「人々」「おろおろ」とした。
三 原文の挿絵は全部これを入れ、説明をくわえた。
四 脚注は、スペースのゆるすかぎり入れて、解読に便なるようにつとめたが、限られた範囲内のことであるから、くわしい出典・語義・語釈・用例などは記すことができずにおおむね省略した。しかし本文を解読するだけならばこれで十分足りると思う。なお脚注だけで解読しがたい場合には、現代語訳によられたい。
五 現代語訳は、なるべく原文の持ち味や文体の特色をそこなわないように留意しながら、しかもなるべく逐語訳にしたがって文意を正確に訳出し、現代文としても味読にたえるようなものとすることに努力した。ことに説話体の文体と、長いセンテンスがえんえんと接続する秋成独自の文体のニュアンスを生かしながら、これを現代文とするということに苦心をはらった。
六 解説は、「雨月物語」を鑑賞し、研究するうえの基礎をしめしておいた。

昭和三十四年十月
鵜月 洋





底本:「改訂 雨月物語 現代語訳付き」角川文庫、KADOKAWA
   2006(平成18)年7月25日初版発行
   2020(令和2)年5月15日26版発行
底本の親本:「雨月物語」角川文庫、角川書店
   1959(昭和34)年11月30日初版発行
初出:「雨月物語」角川文庫、角川書店
   1959(昭和34)年11月30日初版発行
入力:砂場清隆
校正:みきた
2023年10月9日作成
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