そらもよう
 


2008年12月31日 10年プラス1年
10周年を迎えた昨年が「非日常」の年であったとするならば、今年は、いわば「日常」の1年だったと言えるかもしれない。
これまでの10年の続きとして、目立った話題はなかったけれど、これまでに積み上げてきた土台を、引き続き固めていくための年、とも言えそうだ。

昨年の10周年を期して作成した『青空文庫 全』に、今年も引き続き多くの問い合わせをいただき、小さな冊子とDVD-ROMは、さまざまな場所へと旅立っていった。国境を越えて旅立ったものもある。それぞれの場所で、手を伸ばしてくれる人たちに、「読む喜び」を、手渡していることだろう。小さな種があちこちで芽吹いている様を思い浮かべると、心強い気持ちがわきあがってくる。

2月末に第二期の締切を迎えた著作権保護期間延長反対の署名運動では、最終的に4,723の署名を、国会に届けることができた。
書かれたものは、読む人があってこそ、生命を得ることができる。名の知られた作家の代表作でさえ、新刊書店では探し当てることが難しい時代。「この作家に、こんな作品があったんだ」と、青空文庫で初めて知ることも多くなったのではないだろうか。
ひとりでも多くの人に、ひとつでも多くの作品を届けよう。そして、作品が生命を得るための、ほんの小さな手助けでもしていこう。その機会を狭める法案には、断固反対の意思表示をしよう。そんな思いを込めて、青空文庫は「保護期間延長反対」の呼びかけを続けてきた。これからも、変わることなく、その歩みを続けていくだろう。書物にとっての、本当の「自由」を手にするために。

秋より後、新聞を開けば、暗いニュースばかりが目に入る昨今となってしまった。そんな中で、1冊の書物が人の心に希望をもたらすならば、それは書物にとって、何よりの果報であるに違いない。この年末年始、インターネットに開かれた青空文庫という本棚に手を伸ばし、心の赴くまま、ひもといてみて欲しい。そこにあたたかい何か、力強い何かが生まれるとすれば、青空文庫にとっても、大きな喜びとなる。

ことし出版100周年を迎えた「赤毛のアン」の言葉を借りれば、来るべき年は「真珠が一つずつ、そっと糸からすべり落ちるように」小さな喜びに満ちた、穏やかな年であることを祈ろう。
そして、「手を伸ばせば、そこにある本棚」が、年ごとに新たな作品を迎え、多くの人々に届けることが出来るように願おう。

今年1年、ありがとうございました。新たな年も、引き続き、青空文庫をよろしくお願いいたします。(LC)

2008年12月31日 変わりゆく街、東京
 2008年の大晦日に公開する作品として、長谷川時雨の「東京に生まれて」を選んでみた。ちょうど、来年、再来年に著作権が失効する作家が、数多く「東京」を懐古する文章を残していることを紹介したいからだ。
 変わりゆく街、東京――。
 江戸時代から明治時代になり、江戸から東京へと生まれ変わった街は、変化を続けている。明治時代の「東京」の姿は、青空文庫に収録されている長谷川時雨淡島寒月の著作を読むことで、知る事が出来る。その後も、東京は、関東大震災、東京大空襲などで、大きな変化を続ける。来年、再来年に公開することが出来る作家には、この「東京」を懐古する文章を数多く残している。具体的には、正岡容「東京恋慕帖」、木村荘八「東京の風俗」、永井荷風「日和下駄 一名 東京散策記」などである。高浜虚子も「大東京繁盛記」に文章を寄せている。もちろん、多くの小説にその舞台として東京は登場している。正岡、木村は、それぞれ自著の序で、関東大震災を経て大きく変わってしまった東京を憶い、東京大空襲でさらに変わってしまったことに危機感を覚え、本を刊行したことを述べている。
 これらの「懐古する」文章は、郷愁にのみ訴えるものなのだろうか。東京は、太平洋戦争後も、東京オリンピックに伴う整備という名の破壊、バブル期の再開発の名のもとの破壊により、変化を続けている。私も、東京に生まれ、育った。すでに、生まれ故郷は再開発により、跡形もない。ロンドンを訪れた際に、テートモダンという現代芸術専門の美術館で、私が知る頃の東京の写真があった。モノクロのその写真は、私には懐かしい風景だった。それは、都市の姿が郷愁を越えた芸術であり得る事を教えてくれる。書籍が教えてくれる在りし日の東京も、芸術たりうるのである。
 明日になれば、正岡容、木村荘八の著作は、全ての人に開かれる。では、永井荷風、高浜虚子の作品はどうなのだろうか。現在も著作権延長問題には、最終的な結論が出ていない。いったんはとまったかに見える延長の動きが再度動きだし、著作財産権の保護期間が現在の50年から70年に、急遽延長されてしまえば、永井荷風、高浜虚子の作品が開かれるのは20年先になる。この20年に失われる可能性がある作品はどのくらいあるのか、誰も予想することは出来ない。
 街は変わりゆくものである。しかし、その街の歴史ではない、そこに生まれ生きている人たちの姿は、未来へと語り継がれるべきだ。その為に、青空文庫のような電子テキスト――本という形を抜け出したテキスト――が役に立つことを祈りたい。(門)

2008年12月14日 ポー エドガー・アラン「マリー・ロジェエの怪事件」の入力をご担当いただいている方にお願い
ポー エドガー・アラン(佐々木 直次郎 訳)「マリー・ロジェエの怪事件」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2008年12月09日 【テキスト中に現れる記号について】を一部変更
青空文庫のテキスト版のほとんどには、冒頭に【テキスト中に現れる記号について】という説明を入れてある。
そこに載せることのある、「アクセント分解」を説明したページのURLを、これまでは「http://aozora.gr.jp/accent_separation.html」と記載してきたが、「
http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html
」にあらためる。

報告しなかったが、青空文庫のメインサイトを動かした。
接続条件など、変えないですませたかったが、「www.」を略した「http://aozora.gr.jp/」ではアクセスできず、必ず「http://www.aozora.gr.jp/」としなければならなくなった。

入力、校正に力をふるってくださる皆さんには、【テキスト中に現れる記号について】のひな形の差し替えを、ブックマークの変更が必要な方には、ご対処をお願いしたい。(倫)

2008年11月30日 第9期(2007年9月1日〜2008年8月31日)会計報告
2008年8月末に終了した青空文庫第9期の会計報告をいたします。

第9期は『青空文庫 全』の寄贈と「第二次 著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名」とに取り組みました。

青空文庫の活動にかかった費用をどのように位置づけ財務諸表に反映させたかを簡単に述べます。
『青空文庫 全』を公共図書館に収蔵していただき、貸し出していただくことで、インターネットにつながる環境がなくても電子テキストに触れることが容易になりました。これはまさに青空文庫の目的とするところに合致するので『青空文庫 全』の製作費用は収益事業損益計算書のなかで電子図書館公開費という区分にいれました。
『青空文庫 全』の送付費用は荷造り運賃にはいります。
外注費は『青空文庫 全』のデザイナーへの支払いです。
支払い報酬には、公認会計士(第8期分)へのものが計上してあります。
また、第9期から青空文庫は青色申告によって法人税の申告書を提出しております。(青空文庫会計部)

2008年11月02日 私が送った「中間整理」へのメッセージ
先日から、著作権保護期間延長問題に関して、文化審議会著作権分科会「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理」に関する意見募集が行われています。

それに対して、私はアーカイヴと創造の現場に携わる経験から意見を送付し、さらにパブリックなものとして、自分のサイト上でも公開しました。

今後、議論が深まっていく上で、何らかの役に立つのであれば、嬉しく思います。そしてもしよろしければ、みなさまもご自分の声を、ご自分の筆で届けていただければ幸いです。(U)

2008年10月13日 延長問題審議委員会のまとめにあなたの声を
「著作権保護期間の延長には反対である。」
青空文庫が、はじめてそう声を上げたのは、2005年1月1日のことだ。

2007年の元旦には、延長を行わないよう求める、請願署名活動の開始を宣言し、この年の秋、全国の図書館に寄贈した『青空文庫 全』でも、延長のもたらすマイナスを訴えた。

本年の明けには、「延長問題の帰趨はおそらく、今年、2008(平成20)年に決することになる。」と書いた。
その見通しは、どうやら、はずれていなかった。

延長問題を審議していた、文化庁の委員会は、去る9月18日、これまでの論議を踏まえた、「中間整理」をまとめた。
「中間」と銘打たれ、延長の見送りとも、論議の継続とも読めるこの「整理」に対して、広く意見を求める、パブリックコメントが行われることになった。

寄せられた意見は、「今後の審議の参考」にされるという。
私たちがどんな声を、どれだけぶつけるかが、保護期間延長問題の今後を左右する可能性が出てきた。

延長反対の請願署名ページに、「中間整理」パブリックコメントに関する案内を記載した。
署名に続いて、思いを示すチャンスだ。

「延長は望まない!」の声を、秋空に、もう一度響かせようじゃないか。(倫)

2008年09月26日 『一海知義著作集』出版記念会
「中国文学者、一海知義さんの著作集刊行を記念したシンポジウムが開かれる。」
内藤湖南」や「桑原隲蔵」のものなど、中国関係の作品をたくさん入れてくださっているはまなかひとしさんに、ご案内いただいた。
このイベントでは、世話役をつとめておられるという。
詳細は、はまなかさんのページで。(倫)

2008年09月05日 小出楢重「大切な雰囲気」より「序」を削除
小出楢重「大切な雰囲気」の作品ファイルから、著作権保護期間にある、谷崎潤一郎(1886〜1965)と石井柏亭(1882〜1958)の「序」を削除した。
あわせて、同作品の登録形式を変更した。

このファイルを再配布しておられる方には、同様に措置してほしい。

これまで不適当な形でファイルを公開してきたことを、谷崎潤一郎、石井柏亭の著作権継承者様に、心よりお詫びいたします。(倫)

2008年09月01日 国木田独歩「忘れえぬ人々」の入力をご担当いただいている方にお願い
国木田独歩「忘れえぬ人々」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。 (倫)

2008年08月14日 「電気風呂の怪死事件」図書カードのコメントを変更
海野十三「電気風呂の怪死事件」図書カードの備考欄のコメントを、小西電気株式会社の求めに応じて、以下の通り変更した。(倫)
現実の"電気風呂"は安全な製品です。()

2008年07月30日 泉鏡花「海の使者」「当世女装一斑」、中島敦「盈虚」、宮本百合子「犬のはじまり」「結婚に関し、レークジョージ、雑」の校正をご担当いただいている方に御願い
泉鏡花「海の使者」「当世女装一斑」、中島敦「盈虚」、宮本百合子「犬のはじまり」「結婚に関し、レークジョージ、雑」の校正をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2008年07月20日 夢野久作「老巡査」の校正をご担当いただいている方にお願い
夢野久作「老巡査」の校正をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2008年07月16日 「電気風呂の怪死事件」図書カードに注記
海野十三「電気風呂の怪死事件」図書カードの備考欄に、以下のコメントを記載した。
小西電機株式会社は"電気風呂"を製造いたしておりますが、弊社製"電気風呂"は国の製造許可を受けた優秀品ですので、この作品の"電気風呂"とは全く関係ございません。(小西電機株式会社)
GoogleやYahoo!で「電気風呂」を検索すると、青空文庫で公開しているこの作品と、実在する電気風呂の製造、販売会社、小西電機株式会社が並ぶ。
青空文庫から入って、作品を開いた人には、これがフィクションであることは自明だ。
だが、検索エンジンの表示をいきなり目にした人、とりわけ海野十三に親しみのない人は、広く親しまれている電気風呂と「怪死」を結びつけ、製品に対するマイナスのイメージを抱きかねない。

それを避けるために、青空文庫は何ができるか。小西電機株式会社と協議して、対応策をまとめた。
同社にとっては、満足のいく落としどころからは遠かったと思う。ご寛容に、お礼を申し上げます。(倫)

2008年07月11日 図書館から青空文庫
市川市立図書館のインターネット蔵書検索システムからは、同館の蔵書に加えて、青空文庫の収録作品を検索できる。
試行的な運用を経て、本年6月付けで、案内が出た。
なにかと話題の「蟹工船」で検索し、星野哲郎作詞の同名の歌があり、島倉千代子、村田英雄が歌っていると知った。小林多喜二作品との結びつきはないけれど。

和歌山県立図書館文化情報センターのウェッブページからも、青空文庫の収録作品を検索できるようにしたと、ご連絡をいただいた。
トップページ右端の、「青空文庫図書を読む」をクリック。
「花」「鳥」「 風」「月」といったキーワードからも検索できる工夫があり、和歌山県立図書館の蔵書検索システムと連動させてあって、みつけた作品が、所蔵のどの書籍で読めるかわかる。

書籍でも、電子テキストでも。
作品へのさまざまな道筋を、青空文庫を組み込みながら、しっかりした基盤の上に付けていただいていることに感謝したい。(倫)

2008年07月06日 太宰治「古典竜頭蛇尾」の入力をご担当いただいている方にお願い
太宰治「古典竜頭蛇尾」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2008年06月23日 久保あきらさん、新メールアドレスをお知らせ下さい
工作員の久保あきらさん、先日「つづれ烏羽玉」他一篇の校正をお申し込み下さいました。「つづれ烏羽玉」の点検を終え、ファイルを登録されている「cinna」で始まるアドレス宛でお送りしましたが不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に新メールアドレスをお知らせ下さい。よろしくお願いします。(小林)

2008年06月13日 宮沢賢治「雪渡り(新字旧仮名)」の入力をご担当いただいている方にお願い
宮沢賢治「雪渡り(新字旧仮名)」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。 (倫)

2008年06月10日 「入力ファイルを「テキスト版」に仕上げるために」を改訂
「よし、作業完了!」と思った時点で、工作員の皆さんに是非、目を通してほしい資料がある。
入力ファイルを「テキスト版」に仕上げるために」だ。
これをあらためたので、確認をお願いしたい。
「初耳」と思われた方は、この際ブックマークして、じっくり読んでみてほしい。

「…仕上げるために」の主な変更点は、以下の通り。
・「青空文庫におけるローマ字のつづり方」の備考に、助詞の「〜は」「〜へ」「〜を」は、発音に従って、「wa」「e」「o」と書いてほしい旨を追記。
・外字注記のよりどころとするべき資料として「外字注記辞書」を位置づけ、使い方を説明。
・「校閲君」の改訂版と、「文字チェッカー」の改訂版である「チェッカー君」を紹介し、旧版からのブックマークの切り替えを要請。
・姓と名、名前と肩書に関して、ルビの「まとめ/分割」の指針を提示。
同時に、この文書からリンクしている「【テキスト中に現れる記号について】」も、以下のように手直しした。
・欠けていた、「返り点」「訓点送り仮名」の書式を追加。
・説明の前後を一部入れ替え、文言を手直し。
・ルビの例を「塵埃《ほこり》」、外字の例を「※[#「やまいだれ+隱」、第4水準2-81-77]」に差し替え、例示するポイントの前後の文字列を省いて、当該箇所に限定する形に変更。
・「基本パターンにない記号が使われている場合」の用例を、これまでの「×:伏せ字」に変えて、実際に使われる可能性の高い「*:注釈記号」に変更。
あらためた「…仕上げるために」の冒頭にも書いているとおり、「一般的に、ファイルの整備はできるだけ早いステップで行った方が、全行程を通じた作業総量の削減に繋がると期待できる」。
早め、早めの対応で、青空文庫ファイルの質を高めていけるよう、ご協力をお願いしたい。(倫)

2008年06月02日 宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」、宮沢賢治「氷河鼠の毛皮」の入力をご担当いただいている方にお願い
宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」、宮沢賢治「氷河鼠の毛皮」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2008年04月05日 第二期著作権保護期間延長反対署名を国会に
3月28日、議員会館に川内博史衆議院議員をおたずねし、第二期署名の衆議院議長への紹介をお願いした
先に、第二期の総数は1,147と報告したが、その後届いたものを加えて、署名簿は1,168名分でまとめた。

第一期3,555と合わせて、計4,723名分の著作権保護期間延長反対のメッセージを、私たちは、国会に届けることができた。
皆さん、ありがとう。(倫)

2008年04月04日 ゴーゴリ「死せる魂 02 第一部」の入力をご担当いただいている方にお願い
ゴーゴリ「死せる魂 02 第一部」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業が長期に及んでいるものの進捗状況を確認するために、メールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、ゴーゴリ「死せる魂 02 第一部」を「入力取り消し」とします。(倫)

2008年03月31日 第8期(2006年9月1日〜2007年8月31日)会計報告
第8期分を加えて、会計報告を、更新しました。

2007年の青空文庫には、お金のかかる出来事が、いくつかありました。
サーバー機の交換と設置場所の変更、それにともなうデータベース・システムの手直し。10周年記念イベント。そして、『青空文庫 全』寄贈計画です。

正味財産計算書の項目には、これらにかかった費用が計上されています。
外注費には、サーバー機の設置場所変更と、システムの手直しに要した費用、加えて、10周年記念グッズのデザイン、音楽制作費用。
通信費、荷造り運賃の一部には、『青空文庫 全』の送付費用。
接待交際費、会議費には、10周年記念パーティーの会費補助。
宣伝広告費には、10周年記念グッズの製作費。
支払い報酬には、公認会計士(第7期分)へのものが計上してあります。
なお、『青空文庫 全』の製作費は、今回報告した第8期分ではなく、第9期分にまわります。

正味財産計算書の催事収入は、10周年パーティー参加者から集めた会費です。(青空文庫会計部)

2008年03月29日 桜の季節とともに、「校閲君」リニューアル
桜の木に少し花がつけはじめています。この時期になると、なぜか、萩原朔太郎「純情小曲集」にある、「桜」を思い出します。特に今年は、個人的な事情も重なり、この季節、一層もの悲しい思いで読んでしまいます。


櫻のしたに人あまたつどひ居ぬ
なにをして遊ぶならむ。
われも櫻の木の下に立ちてみたれども
わがこころはつめたくして
花びらの散りておつるにも涙こぼるるのみ。
いとほしや
いま春の日のまひるどき
あながちに悲しきものをみつめたる我にしもあらぬを。

殊更(ことさら)に古えを好むわけではありませんが、この詩では旧字が似つかわしく、「櫻」なればこその詩情があると思いませんか?

青空文庫では、そんな旧字での作品入力中に、紛れ込んだ新字をチェックする「校閲君」というツールがあります。今回、ひょんな事から、その「校閲君」と、いささかお付き合いをするはめになりました。これまでは、ご好意により、結城浩さんのサイトに置かれていましたが、一部漢字に変換の不具合があり、今回のサイト移動を機会にして、それを直せというミッションがあった次第です。スクリプトの元になっている、Perl という言語は、アメリカ産であり、最新版でも(バージョンで言えば、5.8 あたり)日本語処理は必ずしも得意ではありません。今回の不具合は、どうも、その不得意な分野に引っかかっているようです。最初の目論見では、Windows で広く使われ、青空文庫でも、テキストの基になっている SHIFT JIS コードを、EUC という、サーバでの日本語コードに変えれば簡単とたかをくくっていましたが、あっちが立てば、こっちが立たずで、久しぶりに、Perl のコードと格闘しました。同じような事を考えている方がおられるもので、日本語の扱いは、以下のサイトから、コードを拝借し、見事に解決しました。どうも、ありがとうございました。

Perl メモ

何とか、形になったので、他に若干の機能を付けて、以下のリンクで公開していますので、せいぜいご利用ください。

旧字体置換可能チェッカー「校閲君」 (現在は、バージョン1.2.1)

ついでに、青空文庫サイト内にある「校閲君を使ってみよう」は、説明がやや古くなっているので、リニューアルで気づいた点を中心に、その試案を載せています。「校閲君」にご要望、ご意見がありましたら、コメントでどうぞ!(ゼ)

2008年03月24日 「現代表記にあらためる際の作業指針」を改訂
変体仮名と仮名の合字については、これまで、通常の仮名に書き換えて入力した例と、書き換えを行わなかった例の双方があった。
書き換えた例:大槻文彦「ことばのうみのおくがき
書き換えなかった例:田中正造「亡國に至るを知らざれば之れ即ち亡國の儀に付質問

ただし、前者を認める規定は、存在しなかった。

青空文庫には、旧字旧仮名の現代表記への書き換えを認めるルールがある。
その制定の精神を汲めば、原則はあくまで「底本通り」としても、変体仮名と仮名の合字についても書き換えを認めてはと考え、「現代表記にあらためる際の作業指針」の「補遺」に、その旨を明記することにした。

書き換えを希望する際は、事前にreception@aozora.gr.jpに打診した上で、進めてほしい。

一方、「底本通り」でのぞもうとすれば、特に仮名の合字に関しては、外字注記をどう書くかが問題になる。
外字注記辞書」の「準仮名・漢字」の拡充を目指したい。(倫)

2008年03月20日 著作権保護期間延長反対署名第二期の集計結果
昨年7月7日の10周年記念日から、青空文庫は、著作権保護期間延長反対の第二期署名活動を開始した。
設定した締め切りの2月末から少しおいて、まとめの集計を行った。

最終回分は、616筆。7月からの第二期署名総数は、計1,147となった。
第一期の、3,555名分と合わせると、4,702名分の署名をいただくことができた。

昨年秋から、青空文庫の一式をおさめたDVD-ROMを小冊子に組み込んだ、『青空文庫 全』を、全国の図書館に寄贈しはじめた。(残部あり。「寄贈計画のお知らせ」で詳細を確認の上、申し込みはinfo@aozora.gr.jpまで。)
当初は公共図書館と大学、短大、高専、高等学校図書館、計8,000に配布の予定だったが、ある寄贈要請をきっかけとして、全ての盲学校と、高等部以上をもつ聾学校にも、贈ることにした。
きっかけを作ってくれた盲学校図書館から、署名が送られてきた。
これも、『青空文庫 全』が取り持つ縁だろうか。
東京の、中高一貫私立校の図書館から、たくさんの署名を送っていただいた。

送られてきた郵便物のお名前、添えられていたメッセージを、感謝しながら一つ一つ読んだ。
皆さん、ありがとうございました。

第二期分の署名は、今回も衆議院への提出を目指す。
第一期分は、署名ページでご報告しているとおり、川内博史、高井美穂、牧義夫、 高山智司、松本大輔、笠浩史、各議員の紹介を得て、衆議院議長に提出され、議長から文部科学委員会に付託された。
第166回常会、文部科学委員会、新件番号2156の「著作権保護期間の延長反対に関する請願」は、残念ながら、同委員会において審査未了となり、本会議で審議されるには至らなかった。
だが、皆さんの意思は寄り集まって一つになり、他のさまざま動きと呼応して、保護期間延長の圧力に抗する、盾になったと思う。

保護期間延長に向けた、権利者側からの働きかけが顕在化したのが、2006年秋。
これと向き合うように、幅広い、慎重な議論を求める、著作権保護期間の延長を考えるフォーラムが結成されて間もない時期、この問題を担当する官僚と、一対一で話す機会があった。
権利者側からの要求に加えて、なによりもアメリカからこれだけ強く、繰り返し求められている以上、「本来は受け入れるのが当たり前」と、役人としての常識を示され、あらためて状況の厳しさを痛感した。
と同時に、負けるにしても、この時期に何が問われ、誰がどんな回答を示そうとしたか、歴史に刻んで散りたいとの意欲をかき立てられた。
そこから、フォーラムのリーダーたちが発揮した、一騎当千の論客の力を、各々の角を矯めることなく一つの陣営へと組み上げていく妙技、知的財産法学の泰斗として知られる人物による明確な反対意見の表明等があって、当初は、必至との見方が強かった延長をめぐる空気は、明らかに変化してきたと思う。
気を緩められる状況からはほど遠いが、それでもわずかながら押し返すにあたっては、皆さんの意思もまた、力になったと確信している。

長期戦になってきた。
今年もまた、知的財産推進計画の年度ごと見直しに際して、意見募集が行われる。
締め切りは、4月3日午後5時。提出先等の詳細は、意見募集のページで。
著作権保護期間の延長に反対の意思を示す、これもまたチャンスだ。

同計画の概要は、リンク先コメント欄の【「知的財産推進計画」とはなにか】で説明している。

今回の見直し対象となる「知的財産推進計画2007」では、保護期間の延長について、「第4章/I./(2)」の「6利用とのバランスに留意しつつ適正な保護を行う国内制度を整備する」の中で、以下のように触れられている。

「iii)著作物の保護期間の延長や戦時加算の取扱いなど保護期間の在り方について、保護と利用のバランスに留意した検討を行い、2007年度中に一定の結論を得る。」

作者の死後50年まで保護される現在の規定をあらため、自由に作品を利用できるようになる時期をさらに先送りすることに納得できなければ、計画を担う知的財産戦略本部に、「保護期間の延長は行わない」と腹を括るよう、求めてほしい。
同計画は、「知財の創造、保護、活用の好循環」を、できるだけ早く実現することを目指すという。
作者が死んでなお、50年引き続く利用の独占期間をさらに延ばしたとしても、それが果たして、作り手をよりしっかり守ることにつながるだろうか。
公有となった作品を、誰もが利用しやすいアーカイブに集め、広く活用してこそ、計画が目指すという「知的創造サイクル」確立にもまた、近づけるに違いない。

リンク先コメント欄には、かつての意見募集に際して提出した、「《著作権保護期間延長に対する慎重姿勢の明示》」を求める意見が、貼りだしてある。
お目通しいただけると、コメント書き始めのきっかけくらいにはなるかも知れない。(倫)

2008年03月10日 坂口安吾「カストリ社事件」「敬語論」「新カナヅカヒの問題」「私の小説」「私は誰?」「女剣士」「死と影」「選挙殺人事件」「戦争論」「退歩主義者」「宝島」「不連続殺人事件」「恋愛論」の校正をご担当いただいている方にお願い
表題に掲げた作品の校正をご担当いただいている方に、申し上げます。

作業が長期に及んでいるものの進捗状況を確認するために、連絡を取り合おうと試みましたが、果たせませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、「校了」、「校正中」の作品を「校正待ち」とします。(倫)

2008年02月10日 金田千鶴「霜」「夏蚕時」、辻潤「書斎」、逸見猶吉「火を喰った鴉」の校正、薄田泣菫「朝顔の花の動悸」「恋妻であり敵であった」「白花の朝顔」「中宮寺の春」「春の賦」、泉鏡花「一景話題」「瓜の涙」「おばけずきのいわれ少々と処女作」「誓之巻」「遠野の奇聞」「夫人利生記」「山吹」の入力をご担当いただいている方にお願い
金田千鶴「霜」「夏蚕時」、辻潤「書斎」、逸見猶吉「火を喰った鴉」の校正、薄田泣菫「朝顔の花の動悸」「恋妻であり敵であった」「白花の朝顔」「中宮寺の春」「春の賦」、泉鏡花「一景話題」「瓜の涙」「おばけずきのいわれ少々と処女作」「誓之巻」「遠野の奇聞」「夫人利生記」「山吹」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業が長期に及んでいるものの進捗状況を確認するために、連絡を取り合おうと試みましたが、果たせませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、「校正中」の作品を「校正待ち」に、「入力中」の作品を「入力取り消し」とします。(倫)

2008年02月04日 「青空文庫・外字注記辞書【第七版】」を公開
本日、青空文庫・外字注記辞書【第七版】を公開しました。

2007年07月07日に「青空文庫・外字注記辞書【第五版】」を公開し、2007年11月07日にPDF版【第六版】を公開しました。あれから二ヶ月たちました。入力・校正・公開と日々滞ることなく着実に蔵書は増加しております。それにともなって、「青空文庫・外字注記辞書」にない漢字も増えてきました。と、共に誤記もいくつかみつかり、このたび改訂することになりました。

改訂箇所の主立った部分は下記のとおりです。
・ 音声記号付きアルファベット(半角ラテン文字)のチルダ付きの入力文字の「~」が消えていたので修正
・ 音声記号付きアルファベット(半角ラテン文字)のサーカムフレックスアクセント付きの入力文字の「^」の前の全角空白の削除
・ 1-9-61、セディーユ付きC小文字----->1-9-61、セディラ付きC小文字
・ 「大文字」「小文字」の前の半角空白の削除
・ ※[#「獵のつくり」、ページ数-行数]u908B 補助のみ----->※[#「二点しんにょう+鑞のつくり」、ページ数-行数]u908B 補助のみ
・ ※[#「こざとへん+瑣のつくり」]→[包摂適用 隙] 137----->※[#「隙」の「小」に代えて「少」]→[包摂適用 隙] 137
・ JISにない漢字表現を新しく29個追加

ご使用になられまして、文字の説明部分や、表示部分などに不具合がありましたら、reception@aozora.gr.jp宛にメールでご連絡ください。また、JIS以外の漢字は少ししか含まれておりませんので、そのような場合もreception@aozora.gr.jp宛にメールでご連絡くださればご相談に乗れるとおもいます。

入力・校正作業に、「青空文庫・外字注記辞書【第七版】」を大いにご利用下さい。(川)

2008年01月16日 think C 活動報告兼一周年パーティー
「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」の、活動報告兼一周年パーティーが、1月31日に開かれる。
文化審議会に設けられた、延長問題を取り扱う小委員会のメンバー5人から、同委員会における議論の動向に関する報告が聞ける。EUにおける保護期間の動向、日弁連での論議の状況、加えて、「インターネット先進ユーザーの会」の設立と活動状況をめぐるスピーチなども予定されている。
青空文庫からも、図書館への寄贈計画について報告させてもらおうと考えている。
延長問題の「今」を確認するには、良い機会になるだろう。では、続きは会場で。(倫)

2008年01月15日 「青空文庫早わかり」を改訂
青空文庫早わかり」を改訂した。
作業の進行管理や公開サイトの更新を担っているデータベースは、「作家別作品一覧」というリストも、毎日更新している。
「総合インデックス」の奥まったところにあって見つけにくいのだが、これを使えば、青空文庫で公開されている作品の書誌データをまとめて取得したり、作業中の作品の進行状況を確認できたりする。

『青空文庫 全』のDVD-ROMに入っている作品の書誌データを、どこかにまとめておいてくれればと、図書館関係者から何度か求められた。
「作家別作品一覧」は、DVD-ROMにも入っている。その存在を、はっきり伝えなければと思った。
「一覧」を使えば、できることがある。だが、書誌データの情報源とすることを意識して設計しなかったために、要求にこたえられないところもある。
「一覧」はどこにあるか。何ができて何ができないか。要求に十分こたえられるものにするには、今後どうするべきか。「一覧」に関するあれこれを、「早わかり」に書き加えてみた。
同時に、『青空文庫 全』についても簡単に触れたのが、今回の変更内容だ。

今回も、PDF版を、鈴木厚司さんにつくっていただくことができた。(倫)

2008年01月10日 「ウラ・アオゾラブンコ」にリンク
ウラ・アオゾラブンコ」というサイトがある。
青空文庫に欠けている要素を補うとして、2年半前に、「牧野真一電子文庫」の別館として開かれた。
トップページに掲げられた補強のポイントは、いずれも的を射ており、こうした弱点を放置してきた側としては、かなり恥ずかしい。
著者の作品のうち、どれだけ青空文庫で公開され、なにが作業中で、どれが未着手か一目で把握できる点は、作業の交差点にいる者には、特に参考になる。

現時点で、収録されている作家は、62名。
開設以来、追加が繰り返され、青空文庫の作業の進捗状況を追った更新が重ねられてきた。
この「ウラ・アオゾラブンコ」に、本日からリンクする。
例えば、芥川竜之介の作家別作品リスト個別作品の図書カードを開き、ここから、リンクをたどってみてほしい。

こうした手間のかかるページは、開くのも大変だが、定期的な更新がさらに大仕事になる。
息の長い作業で、青空文庫の弱点を補い続けてくださっていることに、あらためて心からお礼を申し上げたい。(倫)

2008年01月01日 選択の年の元旦に、公有作品のアーカイブよ育てと祈る
2008(平成20)年、元旦。
著作権の保護期間を過ぎて、今日から「みんなのもの」扱いして良くなった作家の作品を、今年も公開する。
ラインナップは、以下の通り。
 犬田卯「」。
 兼常清佐「ニッポン音楽 ――音楽学校の邦楽――
 小林一三「宝塚生い立ちの記」「東京宝塚劇場の再開に憶う
 神西清「雪の宿り」(新字新仮名)、(新字旧仮名
 羽志主水「監獄部屋
 久生十蘭「顎十郎捕物帳 01 捨公方
 前田河広一郎「ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より
 牧野富太郎「寒桜の話
 吉田甲子太郎「秋空晴れて
いずれも、1957(昭和32)年に他界した人たち。ごく短いエッセーだが、阪急グループの創始者、小林一三「東京宝塚劇場の再開に憶う」には、連合国軍による占領が終わり、日本が再出発した時期の企業家の感慨が記されている。
翌1958(昭和33)年は、徳永直。1959(昭和34年)が永井荷風、高浜虚子。1960(昭和35)年の物故者リストには、火野葦平、賀川豊彦、和辻哲郎、そして60年安保闘争でいのちを落とした樺美智子が、早くも並ぶ。
1952(昭和27)年に生まれた私にとって、記憶に刻まれた「自分の時代」の幕が、ここでも開く。

冒頭に、「今年も」と書いた。
倦んではならぬことだ。何度でも、何度でも書こう。

青空文庫は、天の恵みではない。著作権の保護期間を過ぎた、公有作品のアーカイブの成長は、自然現象などではありえない。
私たちが利用できる今のアーカイブの形は、保護期間を作者の死後50年までに限った制度の選択が先ずあって、その上に、文化共有の仕組みを育てようとする人の努力が積み重なって、実現したものだ。
ところが、インターネットという一層を社会に組み込んだことで、「文化共有の青空」が手応えのある現実となりはじめた矢先、あるいはそうなったがゆえにととらえるべきか、その実りを、小さく、貧しいものに変えずにはおかない、根本の仕組みの変更が提案されはじめた。
死後50年までの保護期間の、70年への延長である。
曰く、1990年代に保護期間を延ばした欧米に追随することには、「国際標準に合わせる」という積極的な意味がある。
加えて、保護期間を延ばすことで、作者への「励まし」を強め、創作の意欲を高めることができる。
こうした延長派の主張に理がないこと、延長は、創作の支援には繋がらず、作品を使って儲ける仕組みを握る者たちに、事業維持、事業拡大の手がかりを与えるだけだと考える理由は、「著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名」のページからリンクした、「著作権保護期間の70年延長に反対する」、「全書籍電子化計画と著作権保護期間の行方」に示してきた。『インターネット図書館 青空文庫』(野口英司編著、はる書房)や、全国の図書館に寄贈した『青空文庫 全』でも触れた。

延長問題に関する方針とりまとめの締め切りとして当初想定されていたのは、2007(平成19)年度末である。
だが、今後の日本の文化環境に大きな影響を与えるこの問題に答えを出すに当たっては、国民的な議論を尽くそうと主張する「著作権保護期間の延長を考えるフォーラム」が結成されたこともあずかって、年次改革要望書に盛り込まれてきたアメリカの要求通り、一部の権利者団体の思惑通りには、物事は進まなかった。
同フォーラム主催のシンポジウムが繰り返し開かれ、青空文庫は、延長に反対する署名活動に取り組んだ。保護期間延長問題を専門に検討するために文化庁が設けた「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」のメンバーには、フォーラムの影響力もあり、延長に反対の立場をとる人たちも加わった。
賛否両論が拮抗する中で、小委員会は未だ、議論集約の方向性を見いだせずにいる。
延長問題の帰趨はおそらく、今年、2008(平成20)年に決することになる。

延長が実現した際の影響についても、もう一度、確認しておこう。
死後70年が、今後著作権切れとなる作家に限って適用された場合でも、青空文庫は、以降20年に渡って、新たに「みなのもの」扱いして良くなる作品を欠いた、「空白の元旦」を迎え続けることになる。
万が一、いったん著作権切れとなった作家にさかのぼって死後70年が適用されることにでもなれば、青空文庫は収録作品の約半数を失う。
「文化共有の青空」の縮小を余儀なくされるのは、もちろん、青空文庫だけではない。収録作品を、20年分古いものに限定されるのは、公有作品のアーカイブの全てだ。
「青空」に黒雲をかけられるのは、私たちの社会の総体に他ならない。

骨身にこたえるほど暑かった昨年の夏、故郷、広島の縮景園を、およそ40年に近い時を経て歩き、記憶の像を裏切る緑の濃さに驚かされた。
広島藩主の庭園として開かれ、当時、泉邸と呼ばれていたこの庭の原爆直後の惨状は、原民喜の「夏の花」に描かれている。復元され、縮景園として公開されたのが、1951(昭和26)年。かつて私がみていたのは、広島の復興を願う人たちの働きを得て、かろうじて再び立ち上がって間もない時期の、若い、痩せた、そして成長の可能性を秘めた姿だったのだ。

公有作品のアーカイブもまた、必ず、涼やかな木陰を私たちの社会にもたらすに違いにない。
だが、その緑がどれほど深くなるかは、著作権制度の骨格をどう組み立てるかにかかる。
作者の死後、なお50年維持される保護期間をさらに20年間延ばせば、緑は確実に薄くなる。
その決断の時に、まだまだ若く、痩せたものではあっても、公有作品アーカイブの庭に憩い、緑陰の恵みを多少なりとも味わえる我が国の状況を、喜びたい。
私たちは、「青空」を体験した上で、この節目に立つことができた。

青空文庫を育てようとする人には、それぞれの思いがあるだろう。
私にも、個人的な事情と思いとがある。
だが、この節目の時期を未来にあって振り返る人の目には、公開に向けて一文字一文字を入力し、校正した人、アーカイブの育成と活用のためにコードを書いた人、利用のすそ野を広げようとフォーマットの変更を行った人、そしてテキスト・アーカイブで自分なりの何かを一つでも見つけた人、それら試みに関わった全ての人々の営為のいくぶんかは、「文化共有の青空」を拓こうとする努力として、うつりもするのではなかと思う。

今年もまた、青空文庫を育て、活用していこう。
第二期の、延長反対署名にも、最後の一鞭をくれようじゃないか。
『青空文庫 全』には、残部がある。「届いていない」「もっとほしい」と思われる施設の方には、info@aozora.gr.jpへのリクエストをお願いしたい。テキスト・アーカイブの種は、最後の一粒まで、まきつくしたい。
選択の年に、「樹々よ、育て!」と祈る。(倫)


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