一
沢なすこの世の楽しみの
楽しき極みは何なるぞ
北斗を支ふる富を得て
黄金を数へん其時か
オー 否 否 否
楽しき極みはなほあらん。
二
剣はきらめき弾はとび
かばねは山なし血は流る
戦のちまたのいさほしを
我身にあつめし其時か
オー 否 否 否
楽しき極みはなほあらん。
三
黄金をちりばめ玉をしく
高どのうてなはまばゆきに
のぼりて貴き位やま
世にうらやまれん其時か
オー 否 否 否
楽しき極みはなほあらん。
四
楽しき極みはくれはどり
あやめもたへなる衣手か
やしほ味よきうま酒か
柱ふとしき家くらか
オー 否 否 否
楽しき極みはなほあらん。
五
正義と善とに身をさゝげ
欲をば捨てて一すぢに
行くべき路を勇ましく
真心のまゝに進みなば
アー 是れ 是れ 是れ
是れこそ楽しき極みなれ。
六
日毎の業にいそしみて
心にさそふる雲もなく
昔の聖 今の
友とぞなしていそしまば
アー 是れ 是れ 是れ
是れこそ楽しき極みなれ。
七
楽しからずや天の原
そら照る星のさやけさに
月の光の貴さに
心をさらすその時の
アー 是れ 是れ 是れ
是れこそ楽しき極みなれ。
八
そしらばそしれつゞれせし
衣をきるともゆがみせし
家にすむとも心根の
天にも地にも恥ぢざれば
アー 是れ 是れ 是れ
是れこそ楽しき極みなれ。
九
衣もやがて破るべし
ゑひぬる程もつかの間よ
朽ちせでやまじ家倉も
唯我心かはらめや
アー 是れ 是れ 是れ
是れこそ楽しき極みなれ。