感謝
萩原朔太郎
野のはて夕暮雲かへりて
しだいに落ちくる夕雲雀の
有心
(
うしん
)
の調さへしづみゆけば
かすかに
頬
(
ほほ
)
うつ香ひありて
夜の闇頒ちて
幕
(
とばり
)
くだる。
自然は地にみつ光なりや
今日はめぐりて山に入れど
見よかの大空姿
優
(
いう
)
に
夜の守月姫宮をいでて
唱ふをきかずや人の子等は。
ああ君
倦
(
う
)
んずる額をあげて
不滅の
生命
(
いのち
)
をさとり得なば
胸うちたたいて大神には
讚美と感謝をささげてずや。
底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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