雀の歌

新美南吉




小さい卵のなかにゐる
かあいゝ坊やよでゝおいで、
みんなはおまえを待つてゐる。

お空は青くはれてゐる、
坊やのお歌を待つてゐる。

梢の空気は澄んでゐる。
小麦は軒端にこぼれてる。

お花畑は呼んでゐる、
遊びにおいでと呼んでゐる。

光はいつぱいみちてゐる。
神様までが待つてゐる。

坊やよ坊やでゝおいで、
黄色いくちからでゝおいで、
母さん「ばあつ」とでゝおいで。





底本:「日本児童文学大系 第二八巻」ほるぷ出版
   1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「チチノキ」
   1935(昭和10)年2月
初出:「チチノキ」
   1935(昭和10)年2月
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年1月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード